第5話 自分達が居る場所

第5話


「その様子だと、元気そうだな。まぁ、大事をとって、コレを飲め。」

「コレは?」

「特製回復薬だ。まぁ、見た目はスープっぽいがな。熱いから、気を付けて飲めよ?」

「わぁ、ありがとうございます!アチッ!?」


ほら、言わんこっちゃない………


「ふ〜ふ〜」


────懐かしいな、こういう光景も。


あの子もこんな感じで冷ましながら、飲んでたっけ?


俺には縁のない物だったからな、コレ………


「お………」

「お?」

「美味しい!美味しいですよ、コレ!!本当に回復薬なんですか!?売ってあったり、自作できるポーションは激苦なのに………」

「はは、だろうな。良薬は大体苦い物だ。」


俺、あのクソアマエルフが特別製を作れるだけだしな。


「色々と工夫してるからな。まぁ、素材を集めるのが面倒だから、当分は無理なんじゃねぇかな………」


下層から深層へ行く道に来る奴等は何人か居たが、ダンジョン舐めてんのかってレベルの弱さだったしな………


この子だって、本来はそれ位の強さみたいだし………


「それは残念です………」

「まぁ、地道に頑張るんだな。」

「はい………」


特製回復薬をちびちび飲みながら、美味しそうに顔をほころばせる彼女。


うんうん、作った甲斐があった物だ。


☆☆☆☆☆


「ぷはぁ〜美味しかったです!重ね重ね、ありがとうございます!!」

「どういたしまして。」


礼儀正しいし、本当に良い子だなぁ、もう♪


凄い構いたくなる子だよ、本当………


「………よし、じゃあ、そろそろ送り返してあげようか。」

「えっ、わざわざそんな事までしなくても大丈夫ですよ!こんなに助けて貰ったのに、これ以上迷惑かけるなんて………」

「はは、気にするな。それにお嬢ちゃん1人じゃ帰るのは無理だぜ?」

「えっ?」

「見せた方が早いか………ちょっと付いてきてくれるか?ほら、其処に置いてあるドローンと一緒に。」

「は、はい!」


そう告げると、俺は彼女をこの家の出口へと案内する。


うわぁ、ちょこちょこと雛鳥みたいに着いて来てくれるな、この子。


俺が不審者だったり、ユニコーンクソ処女厨だったら攫ってたかもしれん………


「この家はとある場所に建てた物だ。」

「とある場所?」

「まぁ、ぶっちゃけると、ダンジョン内に建ててる。」

「えっ、そんな事が出来るんですか!?」

「頑張れば、他の奴等も出来るんじゃねぇかな?」


まっ、知らんけど………


でも、この場所に建てるのは絶対に無理だろうな。


何故なら、此処は………


「さぁ、お嬢ちゃん。君が居る場所の光景を見てみるが良い!」

「こ、コレは………」


玄関のドアを開けた先には広い草原が広がっていた。


綺麗な緑に彩られ、全てが美しく輝いて見える光景は何時見ても良い物だ。


まぁ………


「な、何ですか………アレ?何で、あんなに強いモンスターが沢山────」

「此処はこのダンジョンの深層、第1層の草原エリア。この深層で一番優しいモンスター達が集まる場所さ。」


基本的に下層のボスラッシュでしかないからね、此処。


「あ、貴方は………」

「ん?何だい、お嬢ちゃん?」

「貴方は………一体、何者なんですか?」


う〜ん、また難しい疑問だね。


どう答えようかな………


「────浦島。」

「浦島?」

「────時の流れに置いていかれた、哀れな唯の浦島太郎だよ、お嬢ちゃん。」


多分、俺にはコレが一番しっくりくる答えだな。

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