第21話僕は、楓のお姉さんと友達になった。

「さすがに年上を呼び捨ては、ちょっと。」

声を震わせて言った。


やはり楓以外の子には、まだ話し慣れてないから、凄く緊張する。



「いいの。そう呼んで欲しいから。私も下の名前で呼んで良い?」

彼女が甘えるように言う。


ふわぁー近っ…楓から距離感バグってるって聞いたけど、本当だった。


「じゃ陽葵って呼ぶけど。」僕は呟いて言った。


「ちょっとお姉ちゃん、距離が近いよ。一ノ瀬君困ってるよ。」

彼女が姉を叱ってくれた。


「良いじゃんね? 困ってないよね?」

陽葵が笑って言う。



「別に、困ってはないですが、その… 照れると言うか…気まずいのですが。」


「じゃちょっと離れる。ねぇ、一ノ瀬君、学校で好きな人とかいる?」


それはあなたの妹です。楓だけど、この場合なんて言えばいいんだ? いますって言ったら、誰って聞かれそうだし。


いないって言えば、嘘だし、目の前に好きな人いるし。


参ったな。


僕が答えに窮していると、陽葵が、別の質問をしてきた。


「あー、その前に一ノ瀬君は、付き合ってる子っているの?」

僕を見て彼女は聞いた。


「付き合ってる子はいないです。」僕は即答した。


楓とは、まだ付き合ってない。そもそも付き合ってくれるのだろうか?


「そうなんだ。じゃあ、私と友達になって。」

陽葵が言った。


友達…なんだって! また友達か。いや楓のお姉さんと友達なら、喜んで。


「はい、友達になります。よろしくお願いします。」


「もーお姉ちゃん、手が早いんだから。私も人のこと言えないけど。」

楓が、手を上下にに振って言う。


「手が早いって、まだ何も手出してないよー。」

陽葵が手を横に振って言う。


「あのー、親は、今日は、まだ来ない?」


僕は両親に挨拶するのが不安で聞いた。

いるなら覚悟しないと。


「うん、お母さん買い物言ってる。お父さんは今日は、夜遅くになるから。」

楓が説明した。


「そっか、じゃあ、お母さんに挨拶しないとかな。」



「ちゃんと話はしてあるから、心配しないで。お姉ちゃん聞いて、今日不良みたいな男子に絡まれて、一ノ瀬君が、逃げてーって、私を庇って言ってくれたの。」

楓が嬉しそうに言った。



「はぁーさすが一ノ瀬君。惚れるわ〜。かっこよす。私も庇ってくれたんだもん。ねー?」



惚れるって…まさかお姉さん…僕のことを?


「まっ…まぁ。そうですね。」

僕は、彼女の言葉にびっくりして言う。


「お姉ちゃん惚れる? お姉ちゃんは、惚れなくて良いんだよ?」

楓がちょっと怒った様に言う。


うん? 楓、日本語でよろしく! それにしても、一ノ瀬君と学校が違うから、接点がないのが、残念。いつでも家に遊びに来ても良いからね。」



おおー、それは嬉しいな。けど、緊張もするしな。でもこの申し出には、素直にお礼を言おうと思った。


「ありがとうございます。僕、たまに来ます。」

僕はそう返答した。

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