第10話僕は友達を頼った。

僕の父親は、暴力振るって、不倫して逃げた最低の親だ。


あの父親のせいで僕は、人間に興味がなくなった。


チッ、嫌なこと思い出した。それもこの人のせいだ。


おい、今舌打ちしたろ?


いや、君にしたわけじゃないよ。自分の不甲斐なさに舌打ちしたんだ。



は? 何言ってたんだお前?



とにかく、楓には言わないよ。僕は彼に伝えた。



楓には、心配させたくないからね。そう心で呟いた。


そうか、分りゃいい。あと楓には近寄るなよ。



それは断る。君に指図される覚えはないよ。と僕は彼に言ったが、胸が熱くなり、心臓の鼓動が速くなった。



空耳かなぁ? あー今なんて言った?


僕は彼を無視して学校の前に進んだ。


おい、佐藤が追いかけてきた。


まだ何かようが?


お前、良い度胸だな。

ははん、さては、ヒーローとか言われて調子に乗ってやがるな?


ヒーロー? ああ、そのことか。僕が楓庇ったから。


俺がいたら、そんな女ども蹴散らしてやったぜ。と佐藤が言った。


僕は少し怒りのボルテージが上がってきた。


さすがに女性に暴力は、駄目だよ。

佐藤に言った。



例えだよ、本気でやるわけないだろ?


例えでも、そう言うこと言ったら良くないよ。と彼に告げた。


はー…さすがヒーロー様だな。綺麗事言いやがって。


ヒーローとか関係ないよ。と僕は言い返した。


佐藤の表情が変わり、僕を睨んできた。


さっきから聞いていやがったら、ああだこうだ、舐めてんのか?


ほんとにこの人、進学校の人かな?

不正して入ったのかな。そう思って笑った。


なに笑ってたんだ!

佐藤の怒号が響いた。


周りが一斉に彼を見た。


チッ、帰り道気をつけるんだな。

と彼が捨て台詞を吐いて立ち去った。


うーん、どうするか、帰り道…何かする気か。



参ったな、何か対策ないかな。


ふふ、僕には友達がいるじゃないか。


彼と一緒に今日は帰ろう。

誰だったか、麻美の彼氏としか覚えてないや。



スマホを見て分かった。勇人だ。今日、ガタイの良い勇人に事情を説明して、出来ればこの困難に、協力してもらえれば。



まぁそしたら彼に借りが出来る。けど、そうなればほんとの、友達だ。


でも肝心の佐藤の下の名前が分からない。佐藤っていっぱいいるからなぁ。


こんにちは、勇人実は相談があるんだ。


僕は廊下にいた彼に声をかけた。


おっ、一ノ瀬なんだようって?


ああじつは…僕は事情を説明した。


なるほど、変なやつに楓の事で絡まれたと。帰り道に気をつけろか。


誰だそいつ、俺が文句言ってやるよ。


佐藤って人。


佐藤って、いっぱいいるだろ。特徴は?


うん、あ!

あの人だよ。ちょうど佐藤を見かけたので彼を指した。



お前!

俺を指さしやがって…東條さん…こんにちは。



佐藤、一ノ瀬から事情は聞いた。


お前一ノ瀬に手を出したら許さんぞ。

彼が佐藤に言った。


はい…分かりました。東條さんご迷惑をお掛けしました。

彼があっさりと引き下がった。



僕はとんでもない凄い人を、友達にもったらしい。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る