閑話45 とある食堂に集う人々
――ここは、死後の世界。死んだ後、人が何処に行くのかは誰にも分からないものであるが、とにかくここは死後の世界である。
死を迎えた人間は、生前の自身の行いで死後の世界でどのように過ごすかを選択する事となる。
悪行の限りを尽くした人間は地獄に落とされ、罪を償うまで救いを与えられない。善行を積み重ねてきた人間は、死後の世界で穏やかに暮らす事を選ぶか、新たな人生を得る為に長い年月を掛けて生まれ変わる道を選ぶ。
死後の世界で穏やかに暮らす道を選んだ者が居る。その者の一族は、とある国に兵士として仕えてきた。
現在、13代目となる一族の内、初代から10代目までがこの死後の世界で暮らしている。
死後の世界にも、それなりに娯楽が存在しており、そのひとつがこの一族が集まっている食堂である。何故に死後の世界に食堂があるのか……というツッコミが入りそうだが気にしない方向で。
食堂のカウンター席に座る10人の一族。初代から10代目までが、食堂の店主に注文を取る。
「カツ丼ひとつであります('ω')ノ!」
「みそカツ丼ひとつ('ω')ノ!」
「ハムカツ定食お願いします('ω')ノ!」
「ソースカツ丼ひとつ('ω')ノ!」
「カツカレーであります('ω')ノ!」
「エビカツ定食ひとつ('ω')ノ!」
「カツサンドお願いです('ω')ノ!」
「チキンチーズカツ定食('ω')ノ!」
「豚カツ茶漬けであります('ω')ノ!」
「焼きカツ丼ひとつであります('ω')ノ!」
「……吾輩くん達、アンタら一族揃いも揃ってカツが好きだねぇ( ;´Д`)」
食堂の店主は呆れ顔で調理に取り掛かる。彼等は一人称に吾輩を用いる為、吾輩くん一族と呼ばれている。
彼はカツ料理が大好物で、一族全員が大のカツ好きである。但し、それぞれ好きなカツ料理は異なっている模様。
注文された料理を出されると――全員が姿勢を正して手を合わせる。
『――いただきます!』
10人の吾輩くん達は、嬉しそうな顔でそれぞれの好物を食べ始めた。
少し離れた席に座る銀髪の男性と白金の髪の女性がその光景を見つめていた。かつて聖王国の国王だった聖王グランと妻である王妃アストリアである。
生前、善政を敷き、名君と讃えられた王と王妃も死後の世界で穏やかに暮らす道を選んだようである。
「やれやれ、彼等一族は見ていて飽きないな」
「そうですね。それはそうと、あなた――はい、あーん♪」
「い、いや……アストリア。ひとりで食べる事くらい出来――」
「あーん♪」
「……あ、あーん(;´・ω・)」
最愛の妻にはかつての名君も敵わない様子。その光景を見ていた吾輩くん達。
『聖王陛下と王妃様は、今日もラブラブですな~( *´艸`)♪』
人前で妻とのやり取りを見られ、少し赤面するグランであったw
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