第82話 第二回戦組み合わせ
ソラス殿との試合を終えた僕は、リリア嬢の居る観客席に戻った。近くの席にはライリー嬢や彼女の御両親、友人達も一緒だった。
リリア嬢は、僕を見るなり立ち上がって傍にやって来た。
「あ、あの、リリア嬢……大した傷では」
「駄目です、ディゼルさん。じっとしてて下さい」
ソラス殿との試合で、多少ではあるものの傷を負った僕に彼女は治癒魔法を施してくれた。治癒魔法の暖かな光で傷が治り、痛みが引いていく。
……と、何やらエリス殿から威圧感のようなものを感じた。
「ディゼル殿……あまりお嬢様の御手を煩わせないよう願います(´◉ω◉` )」
「わ、分かりました……(;´・ω・)」
相変わらず、手厳しいなぁ。でも、心なしか充実感に満たされてる表情をしているような気もする。
親善試合中は僕がリリア嬢の傍に居ないから、御自分が護衛を務める事が出来るから満足しているのかな?
「ディゼル先生、一回戦突破おめでとうございます!」
「ありがとうございます、ライリー嬢。ベルハルト殿、如何されました?」
「ああ、いや……若いのに大した腕前だと思ってな。君なら守護騎士も務まりそうだ」
「いえ、そんな事は」
まぁ、守護騎士だったのは事実なんですが……。
「あ、次の試合が始まりますわ」
リリア嬢の隣に座るロゼ嬢の声が耳に入り、視線をリングに向ける。次の試合の参加選手ふたりが入場し、歓声が登場内に響く。
第七試合に出場するのは、極東国の侍衆に所属するソウマ・リュウドウジ殿と帝国騎士団所属のリュー・トライアングル殿。
「お、どうやら間に合ったみたいだねぇ」
「試合観るの遅れたら、オメーボコボコにされたかもな」
「おいおい、いくらなんでも……いや、リューちゃんならあり得るかも」
「ザッシュさん、そんな事言ってるのがリューさんにバレたら現実になりますよ」
後ろの方から聞こえてきた声に、僕やリリア嬢達が振り返るとザッシュ殿とソラス殿、少し後ろからアトス殿がこちらの方にやって来ていた。
「やぁ、ディゼルくん。一回戦突破おめでとう」
「ありがとうございます……あの、ソラス殿」
「ああ、オレの双剣の事は気にしなくていいぜ。試合では武器破壊が勝利条件だしよ――それよか、試合観戦といこうや」
そう言って、ソラス殿達は近くの空いている席に座る。それから間もなく、第七試合開始のアナウンスが闘技場内に流れた。
親善試合第七試合ソウマ・リュウドウジ対リュー・トライアングル――勝者はソウマ殿だった。
リュー殿も剣術の腕前は高かったけど、対戦相手であるソウマ殿は今大会の優勝候補の筆頭。彼の抜刀術で、剣を両断される――武器を破壊された事で彼女は敗北した。
更に続く第八試合ラウラ・シュトレイン対ファイ・ローエングリンの試合が行われる。戦いの末、勝利したのはファイ殿。
ラウラ殿はカイル殿やユーノ殿と同じ護剣術の使い手、護りに長けた剣術を主体とする。しかし、ファイ殿の流れるような剣捌きで防御を打ち崩され、隙を付いた一撃で剣を場外まで弾かれ、当身を喰らわされてラウラ殿が気絶した事で決着した。
第一回戦の全試合が消化され、第一回戦を勝ち抜いた選手達がリングに集められる。リングの上にテーブルが置かれ、テーブルに上には紙が入った容器が。
そういえば、二回戦以降はくじ引きで次の対戦相手を決めるとエルド陛下が仰っていたな。
確か、第一回戦の勝者は――。
第一試合……両者引き分けにより、両者とも失格
第二試合…ライリー嬢
第三試合…マイラ嬢
第四試合…カイル殿
第五試合…ザッシュ殿
第六試合…僕
第七試合…ソウマ殿
第八試合…ファイ殿
勝者は7人、第一試合が両者共に失格の為に奇数。続く第二回戦では誰かひとりが不戦勝で勝ち進む事になる。
ライリー嬢が最初にくじが入った容器に手を入れて、くじを一枚引いた。続いて、マイラ嬢、カイル殿と、容器の中のくじが引かれていく。
最後に残った一枚をファイ殿が手に取ると、映像用魔道具に映し出されているエルド陛下が口を開く。
『皆、そのくじは魔力感応紙で出来ている。魔力をそのくじに流す事で、自分の次の試合が分かる』
はい、と僕達は頷いてくじに魔力を込めた。持っているくじに変化が生じる……文字が浮かび上がって来た。
ライリー嬢が困惑した表情で周囲の選手達のくじを見回す。
「あの、私のくじだけ変わっていないのですが……?」
『くじが変わらなかったのはライリー嬢か。そなたは第二回戦は不戦勝だ、他の選手達の試合をじっくり見学するとよい』
「は、はい」
闘技場内の大型映像魔道具に、第二試合の組み合わせが表示される。
第一試合 ディゼル・アークス対ソウマ・リュウドウジ
第二試合 マイラ・レイラント対カイル・ハーツィア
第三試合 ファイ・ローエングリン対ザッシュ・シャルフィド
ライリー・フォーリンガー――不戦勝により準決勝進出。
僕は第一試合か。しかも、今大会の優勝候補筆頭のソウマ殿が相手か……これは、気を引き締めないといけないな。
第二回戦、第一試合が始まるまで一時間の休憩が入る。観客達は手洗いに行ったり、売店に行ったりしているみたいだ。
僕も30分ほど、リリア嬢やライリー嬢達と談笑した。試合開始30分前になり、僕は観客席から立ち上がる。
「では、行ってきます」
「ディゼルさん、頑張って下さいね」
「先生、応援してますから!」
彼女達から声援を受け、僕は選手控室に向かった。
おまけ
「「「「解せぬ(´;ω;`)」」」」
ソウマ、リュー、ファイ、ラウラが隅っこでいじけていた。偶々、通り掛かったアトスが何事かと訊ねてみた。
「あ、あのー……ど、どうされたんですか、皆さん(;´・ω・)?」
「「「「試合が省略されて、出番が無かった……(´;ω;`)」」」」
「いや、それを言うならザッシュさんやユーノ殿も同じですよ」
「「うん、そうだね(´;ω;`)」」
反対方向から声が聞こえたのでそちらの方に視線を向けると、同じようにいじけるザッシュとユーノの姿があった。いい大人なんだから、少しは大人の威厳を見せて欲しいと思うアトスであった。
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