閑話22 ロイドとシルクのデート!?

 

 ある日、ロイドはシルクから頼まれ事をされた。


「何……聖王都を見物したい?」


「うん。どういう場所なのか、まだ全然知らないから色々と見物してみたくて」


「ルディアはどうしたんだ? あのイノシシ娘、一応はシルク嬢の主だろう?」


 偶然とはいえ、ルディアとシルクの間には主従契約が結ばれており、ルディアはシルクの主という立場の筈である。 


「ルディアさんは、ファイさんと一緒に用事があるから出掛けてるの」


「ふむ、そうか……よし、ここで断っては後からあのイノシシ娘に小言を言われそうだからな。不肖、ロイド・グラスナー――シルク嬢の聖王都見物の護衛を務めさせて頂こう」


「あ、ありがとう」


 こうして、ロイドとシルクの聖王都見物がスタートした。まず、最初にロイドが案内した場所は、聖王都の大通りだった。


 大通りには、多くの店が軒を連ねている。シルクは瞳を輝かせる。


「わぁ……お店が沢山ある」


「ここには、聖王都各地の様々な品物を取り扱う商店が多数ある。シルク嬢、何処か見たい店は――」


 そう言い掛けて、ピタリと制止するロイド。そんな彼に対し、首を傾げるシルク……一体、彼はどうしたのだろうか?


「ロイドさん、どうしたの?」


「い、いや……何でもない」


「何か気になるお店でも……あっ」


 シルクは気付いた――ロイドはとあるカフェに視線を向けていたのだ。そのカフェの入り口付近に張り紙が張られており、新作スイーツに関する内容が書かれている。


 そう言えば、ロイドは甘い物好きだとルディアから聞かされている事を思い出した。 きっと、気になっているんだろうと思わず笑ってしまう。


「ロイドさん、あのカフェに入りましょう」


「い、いや、しかし……」


「私もあのお菓子食べてみたくて」


「そ、そうか! では、行くとしよう!」


 満面の笑みでカフェに入っていくロイドに、思わず苦笑するシルク。カフェに入ったふたりは、新作スイーツを堪能する。


 店内で楽しく談笑するふたり。ふたりは窓際の席に座っており、店の外から見るとまるで恋人同士が語らっているように見えなくもない。


 その光景を店の外から見物しているふたりの女性が居た――ルディアとファイである。用事を手早く終えて帰って来たふたりは、大通りで何か軽食でもと思っていたところ、カフェで楽しく談笑しているロイドとシルクの姿を目撃したのだ。


「ちょっと……ちょっと、あれどういう事ですか、ファイ先輩? な、ななな何でロイド先輩とシルクさんがカフェで楽しそうにしてるんですか? あ、ああああああああああれじゃ、まるで……!」


「ええ、デートみたいね♪」


「で、ででででででででどぅえーと!?」


「ルディア、どぅえーとじゃなくてデートよ♪」


「ゆ、許せない……シルクさんの主は私だというのにぃぃぃぃ!」


「……ねぇ、ルディア。この前のおもちマニアの件の時から思ったんだけど、あなたってひょっとして女の子が好きなの?」


「何言ってるんですか、ファイ先輩! 私は美少年や美青年、御髭が似合うダンディなおじさまも好きですよ! でも、一番の大好物は美少女です(*´ω`*)♪」 


「あら、そう」


 意外と守備範囲が広い後輩にファイも呆れ顔である。


「ともかく、このままではシルクさんが間違った道に進む事になりかねません! シルクさんが正しい道を進めるように道を示すのが主である私の使命……んごぉおおおおおおおおおっ!?」


 力説するルディアの後頭部が何者かに掴まれた。説明するまでもなく、掴んだのはロイドだった。


 どうやら、外が騒がしいのに気付いてカフェで会計を済ませ、イノシシ娘が居るこの場所に直行した模様。


「公衆の面前で、何を力説しとるんだ貴様は(# ゚Д゚)?」


「先輩ィィィィィィィィ! 公衆の面前で後輩にこんな仕打ちをするなんて、先輩は鬼ですかァァァァァァァァァァ!?」 


「ろ、ロイドさん、落ち着いて」


 ジタバタするイノシシ娘。ファイはやれやれと、両手を上げる。


 ロイドの直ぐ後ろに居るシルクは、あわわとした表情で宥めようとする。


「だって、用事済ませて帰って来てみれば先輩とシルクさんがカフェに居るじゃないですか!?」


「それに何の問題があるんだ、ん?」


「ロイド、あなたねぇ……傍から見ると恋人同士がデートしているようにしか見えないわよ?」


 ファイの一言にロイドの手が緩み、ボトンとイノシシ娘を地面に落とす。お尻から地面に落ちたルディアは涙目になっていた。


「で、ででででででででどぅえーとだと!?」


「デートよ、デート♪ さっきのルディアと同じ言い方ねぇ♪」


 デートという単語が出て、ロイドは明らかに動揺しているようだ。


「ハッ(゚Д゚)!? し、シルク嬢――」


「……………………………………………///」


 ロイドはシルクの方に視線を向けると、彼女は両手で顔を隠していた。顔はよく見えないが、耳は真っ赤になっていた――恥ずかしさのあまり、顔を見せられないようだ。


「い、いや、違うんだ! シルク嬢が聖王都を見物したいと言うから、俺は彼女の護衛役をしていただけで――」


「ホントですかー? そう言って、シルクさんにやらしー事するつもりなんじゃないんですかーエロイド先輩( *´艸`)♪」


「誰がエロイド先輩だ(# ゚Д゚)! “エ”はいらんわ!!」


 結局、この騒動の所為で聖王都見物はお預けになってしまった。騒ぎを起こした原因であるロイドとルディアは始末書を書かされる羽目になったのだ。


「シルクさん、ロイド先輩が護衛じゃ不安だから今度は私とデートしましょ!」


「させるか、たわけ! シルク嬢とお前をふたりっきりにする方が危険だ!」


 ギャーギャーと言い合いながら、始末書を書く守護騎士ふたりに苦笑しながらお茶と茶菓子を用意するシルクだった。





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