閑話31 IF もし、ディゼルが女の子だったら……


 ※この物語は本編とは全く関係ありません。作者は『定期的にギャグを書かないと死んじゃう病』に冒されています。なお、これを書いたことは一切後悔しておりません。






 私は、“ディアナ・アークライト”。騎士の名家アークライト家の“次女”として生を受けました。天の力――選ばれし者の力を持って生まれた私は、王立学園を飛び級卒業した後、アストリア陛下の勅命で守護騎士に任命されました。


 守護騎士になって1年が過ぎた頃、アストリア陛下の勅命で陛下の妹君であらせられるアリア殿下の護衛を務めることに。


 出会って早々、深淵の軍勢に襲われそうになっていたアリア殿下を救出。湖で水浴びされていた殿下は、一糸纏わぬ御姿を晒されていた……い、いくら緊急事態とはいえ、王女殿下の素肌を拝見したことに罪悪感を憶えた。


 殿下は非礼を働いた私を咎めず、優しく許して下さりました。守護騎士としてこの御方の護衛を立派に務める……と、意気込んでいたのですが、実は少々困ったことになっていまして――。


「あ、あの……姫、御手を離されて頂けませんか? 密着されていては、不逞の輩が襲って来た時の対応に遅れるやもしれません」


「いいえ、駄目です。お姉様を狙う不埒な殿方が牙を研いでいらっしゃるかもしれませんから!」


 アリア殿下は瞳をキュピーンと光らせながら、ふーっふーっと唸りながら周囲を警戒している。今、私は聖王宮で開かれている舞踏会に出席している姫の護衛をしているのですが……当の御本人は、私に近付こうとする男性を威嚇している御様子。


 姫の威圧感に、男性の出席者達は困惑しています。無理もないでしょう、それだけ今の姫から発せられるオーラは凄まじいのです。


「大丈夫です、私がお姉様を御守りします!」


 あの、姫……私があなたの護衛なのですが。護衛の私が、護衛対象のあなたに守られるってどういう状況ですか。


 そう、私の頭を悩ませているのは姫のこういった行動なのです。湖で御身を救出してい以来、姫は私にべったりと張り付いております。


 護衛として、このような関係はどうかと思うのですが……。ちなみに、姫はアストリア陛下を“姉様”、私を“お姉様”と呼びます。少し紛らわしいです。


「その命、貰い受ける!」


「――!」


 黒装束を纏った、見るからに暗殺者と思われる男が頭上から短刀を持って襲い掛かって来る――賊が侵入している!


 姫を御守りすべく、私は魔法剣の柄を手に取り……。


「お姉様危なぁぁぁぁああああああああああああいっ!」


 ずどぉおおおおおおおおおおおおおおおおんっ!!


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアっ!?」


 暗殺者を迎撃しようとしましたが、姫が暗殺者を殴り飛ばしました。

 暗殺者は悲鳴を上げ、後方の壁をブチ破って外に落下していきます。


 え……? ちょ、何これ……? な、何で姫が暗殺者を撃退しているんですか!?


 唖然とする私でしたが、暗殺者はひとりではなかった模様。同じような連中が複数現れて私達を取り囲みます。


 私以外の守護騎士達が駆けつけます。これなら――。


「お姉様から離れなさぁぁぁぁああああああああああああいっ!!」


 ずどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどっ!


「「「「「ぎぇええええええええええええええええええええっ!!」」」」」


 姫が、回し蹴りで暗殺者達を全て蹴り飛ばします。暗殺者達は壁や天井にめり込んで動かなくなりました。


 私は目の前の光景に口をパクパクすることしか出来ません。他の守護騎士の先輩方は、眉間を押さえています。


「あ、あの……これ、どういう事ですか? な、何か私よりも姫の方が明らかに強いんですけどっ!?」


「あー……ディアナは知らなかったのか」


 目の前の惨状を前に、溜息交じりにグラン隊長がやって来ました。


「聖王家には代々伝わる秘伝の武術があってな……その名も『聖王流破邪滅殺天地無双地獄極楽昇天覇王拳』という」


「何ですか、そのツッコミどころ満載なネーミングの武術は!?」


「兎に角、姫はその武術を体得されていてな……正直な話、今のお前の100倍は強いだろうな」


「あの、私って護衛する必要ないんじゃ……」


「何を言われるんですか、お姉様!」


 ずんずんと、姫が私の下にやって来ました。


「湖で私を救って下さったじゃありませんか。心から感謝しています」


「は、はぁ……正直、姫の御力でも撃退出来たと思いますが」


「いえ、私が感激したのはその後のお姉様の対応です――」


『姫、私の肌で温めさせて頂きます』


『お姉様……』


「そして、お姉様と私はひしと抱き合い――」


「いやいやいやいやいや。姫、何ですかそれは」


「そんなっ……お姉様、あの熱い夜をお忘れになったんですか!?」


「そんなことした記憶は1ミリもございませんがっ!?」


「うぅ……絶対思い出して貰いますからね!」


 いえ、だから……そんなことをした記憶自体が無いんですが。

 これから、私上手くやっていけるかな……。






 ※続きません





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