始まりのプロローグ。


「――ほー、逃げずに来たか」


 俺は木刀を担いで、ニヤッと笑う。


「ルールは分かるな? “降参”の言葉を口にすれば終わりだ。

 もちろん、オレに貴様を殺す気はない。ないが――」


 

 俺は木刀で突く。

 もちろん、当たるわけないんだけど。



「――降参の言葉がないのなら仕方がない、か?」


「……!? 無能力者風情がッ……!」



 あー。

 めちゃめちゃ久しぶりな気がする、この感じ。

 最近はずっと、効率重視で無言だったから……。



「――どうして、そんな風に力を使うんだ?」



 そうしろってアンブレラに言われたからですけど……。



「ハッ――!

 これはオレの力だ!

 どう使おうと正しい! どう振るおうと許される!」


 

 おいおい…………楽しい!

 

 セロくんの行動固定気にせず力任せに動いていいって……最高じゃん!

 すげえ楽しい! マジでどう振るおうと許してくれよな!



「なら、やっぱり教えてあげないとね」



 あっ、やべ、距離を……。

 いや、離されてもいいんだった。負けるんだから。


 

「――唱え《つかい》なよ、アルター=ダークフォルト。

 



 はい、来た。

 なんなのその決め台詞は。普通にカッコいいのズリぃよ。寝る前とかに考えてたのか?


 でも俺も、これから“白闇蛇”を名乗るにあたってそういうのが欲しいところだ。


 そうだなあ……。


「白い闇に呑まれろ」とかどうだろう。


 これは白闇蛇の二つ名から着想を得ていて………………。

 …………俺には絶望的にセンスがなさそうだからやめようかな。



「――――死ね」


 とりあえず、シンプルな暴言で行くか。


 カッコいい決め台詞吐いたところで、どうせ打ち消されてダサいことになるし……。


「――本当に、大したものだよ」


 うわっ……!

 

 ……いてえ!


 ……うわあ、体術も強いんだこの人……。

 ……っていうかセロくん、ぜんぜん本気出してないよね? あの意味分かんない剣術使ってないし。


 すました顔してそー。……地面しか見えないけど。


「――それはたしかにキミの力だ。

 でも、もう二度と、いたずらに人を傷つけるために使わないこと。それを約束してほしい」


 まあな、それはな。

 イヤってほど分かってるよ。

 その台詞、アンブラに言ってやったほうがいいんじゃないか? 



 …………さて、と。

 じゃ、そろそろ起き上がって――。






「それじゃ――






 静寂がどよめきになり、それが大きなうねりとなって第二闘技場を振るわせた――。







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