「本当に?」

「だから! 協力って言うなら! そういう情報は! 共有しろ!」


「ちがっ、ていうかほら、まだ情報の共有の途中だし……!

 ……それにアルターくん、それを知ったらどうせ、“ソフィアは狂った俺の幻覚なんじゃないか?”とか疑い出すでしょ?」


 …………。

 たしかに!


「…………うわ~~! あるなその可能性~~!!」


「あちゃ~……やぶ蛇だったか……」


 ソフィアは頭を掻いている。


 いやまあ。

 確かにその可能性はある……が、心配はいらない。


「別に、それでもいいよ」


「……え?」


「幻覚でもなんでもいいんだ。

 現に、俺はこうしてまたループを脱するために立ち向かえてるわけだし。ソフィアが何者でも、たとえ幻覚でも、まあ……ありがとな」

 

 俺をもう一度立ち上がらせてくれて。それから……俺を、ひとりにしないでくれて。

 さすがに、その一言は心の中に留めておいたが。


「あ、うん……どうも……。

 あのさアルターくんって…………もしかしなくても、わりといい奴だよね」


 なんだかバツが悪そうに、ソフィアがもじもじとそんなことを言う。


 ……なんだこの空気は。

 相手は怪しすぎる幼女なのに、なんだか気恥ずかしかった。


「……で! 話の続きだが!」


「あ、うん」


 ふたりして居住まいを正す。

 ええと、なんだっけな。

 

 ……あ、そうだった。


「……なんにせよ、ループはアンブレラが満足するまで終わらないって結論なのか?」


「それは」


 ソフィアはそこでなぜか、逡巡しているように見えた。

 ややあって返ってきたのは、


「……わたしが、アルターくんに知っていることを全て言わないのは」


 肯定でも否定でもない、そんな台詞だった。


「そして、分かりきったことばかりをわざわざ断言するのは――推定や思い込みが、気がつかないうちに致命的な間違いを引き起こしてしまうから」


 特に――現象では。


「わたしが今から言うことは、まだ確証がない。いや……間違ってないかもしれないけど、なにか決定的な勘違いをしているかもしれない」


 だからあくまでも可能性として聞いて欲しい、とソフィアは続けた。


「…………これを引き起こしてるのが誰かの意志だとして。

 世界は、どうしてループさせられるんだと思う?」


「……え?」


 急に出された問いに俺は面食らったが、答えは自明だ。悩むまでもない。


「そりゃ……だろ?」


「うん、そうかもね。

 だったら……世界は、いつループを始めると思う?」


「いつって――決闘が終わった時に」


 そう答えながら、なんだ? と思う。


 別に、なにも間違ってない……はずだ。

 アンブレラが、決闘の内容に納得がいかなくてループを起こしてる。

 

 ……なのに。

 なんで違和感があるんだ?



 セロくんと剣を打ち合う。

 俺は魔術を起動する。

 セロくんはそれを打ち消し、、俺は負ける。

 

 ソフィアが俺の目をじっと見る。



「納得がいってないのは、?」

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