第6話 救出

 ドラゴンに囚われたお姫様まで何とか辿り着いた俺は結晶化した魔力を素早くもぎ取って魔力結界を破る。囚われていたお姫様を抱き上げると、まだ息はあるようだった。


「あ、あなたは……」


「それは後。今は逃げることだけ考えるよ」


 何とか魔力結界の隙間からお姫様を抱いて逃げようとすると、こっちに向かって飛んでくるドラゴンとばっちり目が合った。


「まずい! そっちに向かっていった!」


 ライファー君の声が聞こえる。ドラゴンがこっちに気がついて戻ってきたようだ。しかし魔力が手に入ればこっちのものだ。


「逃げるだけなら、任せておいて」


 セリナ姫は俺の腕の中で震えていた。ずっとひとりでこんなところに閉じ込められて、どれほど怖い目にあったのか。俺が怖がってる場合じゃないな。


「いい魔力だ、是非うちの国に君が欲しいね」


 俺はセリナ姫をその場に座らせると、結晶化した魔力で再度セリナ姫の周りに魔力結界を張る。これで彼女はとりあえず安全だ。一匹のドラゴンが目の前に迫ってくる。


「大丈夫、君らを殺しはしないよ。でも女はもらっていく、悪いね」


 ドラゴンは怒りで我を忘れたのか、捕らえた女諸共俺を焼き殺したいのか熱線を吐いてきた。しかし、先ほどまでドラゴンが築いてきた分厚い魔力結界を用いて俺もドラゴンの攻撃を弾く。


「なかなかの魔力だ、君の巣のことは本国に報告させてもらうよ」


 女に加えてドラゴンの巣を見つけたなんて報告したら本国のお偉方は大喜びだろうな。ドラゴンの魔力が尽きてきた頃を見計らって、俺は魔力結界を解除する。素早く魔力を再編成し、魔力槍を作ると思い切りドラゴン目掛けて投げつける。


 なんで槍かって? これが一番ぶっ刺さるんだよ!!


 よし! 翼に命中した!! これで奴もただのでっかいトカゲだ!!!


「姫は確保した! 急いで離脱しろ!」


 俺はまだ逃げ回っているはずのライファー君に声を掛けて、こちらも急いで離脱の準備をする。まずは姫の魔力結界を解き、動けない姫を抱き上げる。遠くからライファー君の声が聞こえた。どうやら無事らしい。


 ライファー君の姿を確認して、俺はセリナ姫をライファー君に預けた。


「まだドラゴンが追ってくる!」


 ライファー君の後ろから先ほどよりは小さいがドラゴンが2匹飛んでくる。


「君は先に行け!」


 俺はドラゴンに対峙すると、再び魔力を練り上げて向かってくるドラゴンに放った。


 女が魔力を持つのであれば、その魔力を使いこなせるのは魔力を持つ女から生まれた男だけだ。つまり「理想の花嫁」から生まれた子供が多ければ多いほど、その国は他国よりも優位に立てる。それが俺たち、魔力を操れる男たちが「理想の花嫁」を探し求める理由。国のためだなんて俺はまっぴらごめんだけど、それ以外に俺の存在理由はない。


 今度はまだ熱線を吐いてくるかもしれない。驚いたドラゴンが怯んだ間に俺たちはさっさとドラゴンの巣から全速力で離脱した。

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