第5話 作戦

 さて、どうやってお姫様を助けようか? お姫様に近づきさえすればあの放出された魔力を使ってどうにでも出来そうだが……。


「僕が囮になります。その間にどうか、姫を助けてください」


「そんなの、作戦でも何でもない。無謀って言うんだよ」


 ライファー君は焦っていた。まあ、目の前でお姫様があんな風になっていたら誰だって慌てるか。


「でも、それ以外に何か策が立てられますか!?」


「例えば、本国の応援が来るのを待つとか」


「それだと、遅いんですよ……」


 これは何か訳ありだな。俺なんかに頼るくらいだ、最初から何かあるに違いない。


「わかった、じゃあやれるだけやってみようか。俺だってどうせ死んでも誰も困らない使い捨ての駒みたいなものだ。君の気持ちに賭けてみよう」


 ライファー君は驚いたように俺を見る。長子以外の王子が使い捨ての駒扱いされていることなんて、一介の衛士は思いもしないってことなんだろう。


「でも……」


「言い出したのは君だ。男なら責任を取れ」


 そうだ、俺たちは男だ。男ならやらなきゃいけないことはやらないきゃいけない、それだけだ。


「とはいえ、俺はそう簡単に死にたくないからな。これは君に預けるよ」


 俺は懐から護身用の金色に輝く魔力の結晶を取り出すとライファー君に渡した。ドラゴンは魔力の結晶を求める。今はお姫様の魔力が辺りに満ちあふれているけれど、少し離れたところまで来ればこの魔力の結晶を追いかけてくるに違いなかった。


「で、でででも! これは! 貴重なものなのでは!?」


「いよいよダメだと思ったら全力で投げろ。間違いなくドラゴンはそっちへ行く。その間に君は逃げろ」


「でも、これを無くしたらどうやって!?」


 ライファー君は魔力の結晶と俺の顔を見比べていたが、観念したように魔力の結晶を握りしめた。


「……わかりました。僕がドラゴンを引きつけます。その間に、どうかお願いします」


「任せとけって。その代わりあそこの魔力、少しもらうよ」


 威勢は張ってみたが、やっぱり本物のドラゴンは怖い。あの赤い翼。炎のような瞳。固い鱗。そして吐き出される熱線。そしてその大きさ。家くらいあるんだ! 怖いに決まってる!


 ドキドキしている間にライファー君は走り出していた。わざと音を立ててドラゴンの気を引きつけている。ドラゴンの飛翔速度は鳥よりは遅いが、人間が全速力で走るくらいの速さでは飛べる。


 つまり、いつかは追いつかれるってことだ! その間にお姫様に俺も走らないと!


 ドラゴンが全部ライファー君を追いかけていったところで、俺はお姫様のところまで全速力で走る。


 どうか、ドラゴンがこっちに戻ってきませんように!


 なんとか魔力結界に触ることができた。ライファー君が逃げた方をちらりと見ると、ドラゴンを連れて木のある方まで逃げていったみたいだ。これなら多少時間稼ぎになるだろう。さて、お姫様を助け出すか。


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