一匹狼の印象。
愛桜が魁比呂に対して、怖い印象を持ってる理由は一つ。
愛桜が初めて、魁比呂と出会ったのがきっかけ。
きっかけは高校を入学した頃、彼女は女子校育ちで美人だったため、男子生徒から下心を持ち仲良くなろうと近寄る。しかし、男を苦手にしてるからか近寄る男子に喧嘩腰になってしまい、クラスの中でも浮いてる印象を持たされてしまった。
「入学したての頃の愛桜は野良猫みたいに威嚇してたのねぇ~?」
「うぅ~、恥ずかしいのを思いださないでよ~」
愛桜は恥ずかしげにテーブルに突っ伏す。
「その野良猫も今じゃあ、半分家猫みたいに可愛くなって……」
「これも魁比呂のおかげじゃない?」
明日香と朔良は入学した頃から愛桜と同じクラスメイト。だけど、最初から三人が一緒とかではなく、愛桜が一人浮いてたこともあった。
だけど、愛桜が今のように明日香と朔良と一緒にいることになったのは、ひとえに魁比呂のおかげでもある。
火野愛桜と魁比呂の出会い。それは教室での出来事だった。
きっかけは愛桜がまだ野良猫のようにピリピリしてた頃――。
またもや、男子生徒が下心ありきで愛桜に近寄るも、彼女は鬱陶しい男子に喧嘩腰になる。
それが、ちょうど、偶然、気持ちよさそうに居眠りしていた魁比呂の近くだった。
当時、風紀委員の一員だった彼は風紀を重んじる生徒であるが上に、風紀を乱してる生徒が近くにいれば、たとえ――。たとえ、居眠りしていてもガバッと起きてはジロッと睨み利かせる。
「ねぇ、静かにしてくれない?
こんなに陽気で気持ちいいのに、群れすぎて、気分が悪くなるんだけど?」
不機嫌さ全開にする彼に愛桜は喧嘩腰で突っかかる。
「はぁ!? そっちが勝手に割り込んできただけでしょ! そんなに寝たければ、屋じょ――」
「なに、俺に命令? あと、俺に盾突くの?
随分と野良猫が喚いてるようだね。校内の風紀を乱す、っていうなら……」
スッと彼の表情が消え、不穏な空気を漂わせたまま――。
「咬み殺してあげようか?」
確実に心をへし折ろうとしてる姿勢。その姿勢に、雰囲気に、態度に、愛桜はガタガタと震えだす。
「ご……?」
「ご?」
「ごめんなさーい!」
彼女は涙目になり、それなりに仲が良かった明日香に泣きついたのだった。
ついでに彼は下心で愛桜へ近づこうとしてた男子にこう言った。
「ねえ、俺の近くで群れるのはやめてくれる? これ以上、群れるんだったら、キミらといえど、咬み殺す」
体罰する姿勢を全開にしていたのだった。
この時から魁比呂の近くで群れることはボコボコにされると分かり、クラス内部でも雰囲気というか立ち回りが多少なりとも変化した。
逆に――。
「怖かったぁ~」
「あぁ~、ヨシヨシ」
彼に盾突いた愛桜は魁比呂の迫力の前に気圧され、仲の良かった明日香に泣きじゃくる。泣きじゃくる姿、立ち振る舞いに愛嬌を持ち始めたのか女子たちが愛桜を大事にしよう。男子から近寄らせないよう、周りへの気配りに意識を持ち始めた。
「よくよく思えば……愛桜が素直になれず、ツンツンでポンコツ女子だと判明したのは魁比呂に盾突いたからよね」
「確かに、あのまま魁比呂が不機嫌にならなかったら、愛桜は今も一人浮いてたかもね」
「へぇ~」
「ふーん。愛桜って、ツンデレポンコツ女子とか、女子校育ちなのに、属性が多すぎる」
「なによぅ~。私が、女子校出身じゃ悪い、って言うの!!」
プクッと頬を膨らませ、不機嫌ですと可愛らしく表現する。
「はーい。可愛い可愛い」
「ムゥ~」
明日香に頬をツンツンされて、ふてくされる愛桜。
「はいはい。ふてくされない、ふてくされない。
でも、愛桜が盾突いた少年に一目惚れするとか、もう
「そ、そんな……私……魁くんと赤い糸で繋がって――」
「愛桜。私は運命の糸、としか言ってないのに、どうして、赤い糸なんて思ったのかなぁ?」
「…………」
愛桜は明日香の指摘にピシッと固まってしまった。固まってしまったのに加え、プシューッと頭から湯気が出て、顔が林檎のように真っ赤っかになってたのだった。
「……墓穴を掘った」
琥珀の毒舌が愛桜の心に深く突き刺さったのだった。
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