花が願う
仲仁へび(旧:離久)
第1話
たくさんの死霊が集まる名所。
人の死にまみれた場所。
それは死の名所と呼ばれる場所。
そこにいる死霊たちは、何年も何十年も来る人達を眺めていた。
やって来るのは、絶望して、心を病んで、おかしくなった者達ばかり。
そういった者達を眺める死霊は、その負の心を受け入れながら、無限に肥大していく。
やがて、多くの者達が死を選ぶその場所は、いつしか負の力を発するようになり。
死を願っていない人間をも殺す場所になっていった。
美しい幻影を見せて、崖まで誘導して。
足を踏み外させる。
そんな場所へ。
「きれいなお花畑があるよ」
「素敵な場所ね」
「こんな隠れた名所があったなんて」
集められてしまった人々は、吸い寄せられてしまった人々は、足を踏み外して死んでいった。
けれど、そんな幻影の一つが。意思を持った。
今まさに崖に向かおうとしていた者の足にからみつき、救った。
その花はどうしてそんな場所にあるのか、分からない。
自分でも自分の事が分からない。
もしかしたらそれは、死霊たちの心に残っていた、一抹の良心だったのかもしれない。
どちらにせよ。
その花は願った。
人が死なないようにと。
人が吸い寄せられるたびに願った。
人が死を選ばないようにと。
花が願う 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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