愛と対価⑴
──以上が、今回の報告となります。
たくさんの大人たちに囲まれながら、國久さんはじっと頭を下げていました。
大人たちは、國久さんにひどい事をたくさん言いました。國久さんは、いっぱい頑張って、とっても疲れているはずなのに、みんな、國久さんには優しくありません。
私は1番お姉さんだから、大人たちを静かにさせようとしました。……もともと、國久さんが一人で帰ってきて、みんなが死んじゃったって話していたら、そんな國久さんを村の人が無理矢理にシャンドレットのおうちに連れてきました。それで、私は誰にも乱暴してほしくなくて、そこに割り込んで、……そしたら、ワアワアって、みんなが言葉で、國久さんをいじめています。
止めようとしたら、ネルロさんに止められました。
シャンドレットは、大人たちに囲まれて、不安そうに國久さんを見ていました。
一人の男の人が、言葉だけじゃなくて、國久さんを叩きました。そしたら流石に、シャンドレットも怒って……あんなふうに怒ったシャンドレットは、初めてだったから、私も、ネルロさんも驚いたけど……大人たちは静かになりました。
……みんな、死んでしまいました。
お馬に乗るのが上手で、雷のように怖い秘書さんも、たまに一緒に遊んでくれたあの人も、みんな、みんな、私と國久さんで頑張ってお話しした人たちは、死んでしまいました。
國久さんも、大人たちから解放された後、少しぐったりしていました。
そこにシャンドレットがやってきて、あらためて國久さんが、塔の魔物は追い払えなくて、"きんきゅうじたいおう"とかいうのをやった、と話すと、また怒っていました。顔とか言葉には出していなかったけど、そんな感じがしました。
そんな國久さんでしたが、三日眠ると、また遠くに出張に行ってしまいました。
次は10年後だと、また人が必要だと言いました。私もお手伝いすると言いましたが、学校の勉強を頑張りなさいって言われました。
そうして──『アザレア』には、また色々な人が集まりました。昔みたいに時間はかかりませんでした。きっと、國久さんもやり方がわかったのだと思います。
私は学校で夜柚子ちゃんというお友達ができました。夜柚子ちゃんは、他の生き物の声が聞こえる能力を持っていて、"彼女たち"の言葉も少し聞こえると言っていました。
小さかった銀にも、ジルというお友達ができました。銀とは学校に入ってから、あまり遊べなくなりました。國久さんと出かけることもあったし。
ジルはとっても真面目で頭も良いです。人の顔と名前をすぐに覚えるし、勉強もよくできます。厳しい貴族のお家から来たのだと言っていました。
内緒で遊んでばかりの銀とは不釣り合いのようで、だけれど、とても仲が良かったです。
國久さんも、ジルのことを褒めていて、ジルは國久さんの手伝い──社長補佐をするようになりました。
──そうして、いつの間にか。
本当にいつの間にか、すっかり成長してしまって。
私の周りの精霊達の力を借りられるくらいにまで仲良くなったから、『アザレア』やギルディアのために、魔導書を作ろうと思った。
そして、実際にできてしまった。
そんなに難しくなかった。まあ、私の力を直接使うわけではないから、当然と言えば当然。あとはこれを、しっかり管理できるようになれば良し……パパに、本の管理の方法をまた教えてもらおうと思って。
國久さんが管理している私に関する書類を調べた。
ただ、連絡先が知りたかっただけ。両親への手紙は國久さんに送ってもらうようお願いしていたから。
連絡先はすぐにわかった。
この際、魔導書の試運転も兼ねて里帰りでもしようかって思っていたところ、他の書類が目についた。
領収証。
1枚は、960万と数字が書かれていた。
私が両親と離れて暮らすと決めたあの日の日付。
その他の10枚は、70万から100万の数字が書かれていた。
私が『アザレア』にきてから毎年毎年……。
家を出てから、10年間にわたり、両親から國久さんへ渡されていたお金──全部で大体2000万。
「何?これ」
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