第2話 ある創造主の話

エンコーダーは理を司っていた。終わりのない闇。

果てしない漆黒の世界のどこかには"理の間"が存在する。

そこに3人の巨大な幽体”シンカー”が”理の天秤”を囲み天秤の錘を操作している。

理の天秤とは無限に秤がついていて、それを吊り下げている棒も無限である。

無限の杯と棒が連なって多重に交差し、絡み合う。

一つの杯の錘がいくつもの杯に影響を与える。

3人のシンカーは皆同じ姿で、関節は無く、足は無く、植物の蔓のように伸びた腕だけを動かしている。胴の中央に表情の無い白い顔がついている。

シンカー達はは”理の天秤”に砂を入れて錘を調整しながら、

お互いに意見を交わし合っていた。


A「おい、そっちによってきたぞ」

B「お前はいつも勝手なんだよ」

A「おれがおしえてやらなかったらどうなる?」

C「わかってるさ、だが今はこうさせてもらう」


彼らはお互いに調和を保つように活動していた。

そこに、もう一人の幽体Dが3人の行いに加わろうと訪ねてきた。


A「お前には無理だ」


D「黙れ」


A「おまえがくることはわかってはいたが、またこじらせたのか?」


B「お前は弱い」


D「うるさい、黙れ」


C「まぁまぁ、我々は常に変化の過程にある、だろ?」


4人目のシンカーDは他の3人とは違い、輪郭が薄く、弱い。

Dの慣れない手つきはしばしば他の3人の手間を増やしたが、

Dが天秤の扱いになれてくると、

他の3人の輪郭がよりくっきりと浮かび上がり、他3人の存在が強くなった。


C「くっきりしてきたね、おれのからだ」


B「うむ、これはこれで理にかなって”は”いるな」


C「その手は?」


Dは他の3人のシンカーとは違い空洞な手が生えていた。

彼の手からは緑色の瘴気が上がっている。

彼は砂にその緑色の物質を混ぜて錘にし始めた。

A「おい、その緑のやつを混ぜてどうする?無駄だ」


その緑の物質は雲のように広がった。


B「その世界を作るのか?そんな弱い体で」


D「作った後に強くなればいい。

おまえたちだっだってそうやって”確定”できたのだろう?」


A「ここもそう長くはもたないぞ」


4人目のシンカーDは緑の雲の中に手を突っ込む。


雲の一部が尾を引きながらヒトの形に変化し、目の無い人間の姿が現れた。

シンカー達がその小さな存在を見下ろす。


A「おい、目のない人間。その緑のやつはなんだ?」


「わが主が"レギオン"と呼んでいるものです。

あなたは、どのようなことでお困りでしたか?」


話しかけられた目の無い人間がそう答えた。


C「これはどうも、テイレシア。ひさしぶりだね」


D「黙れ、干渉するな」


巨大な幽体は再び砂と"レギオン"を混ぜたものを理の天秤に注いだ。

すると、

理の天秤の支柱から緑色のガスが漏れだし、天秤を覆い隠す程の雲ができた。

テイレシアと呼ばれた目の無い人間を手のひらに乗せると、

緑色の雲の中に飛び込んで混ざり合い消えた。

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