第56話 パシリ
「昨日は色々凄かったな………」
俺はベットに寝転がりながらそう呟いた。
今は昨日と同じく志歩はレッスンでいない。
もう起きた時には志歩は居なかったので今日は顔を合わせられていない。
「自分であんな事言っておいて、自分から求めるとかやってる事ヤバ過ぎだろ」
俺が志歩に例の話を切り出したのが昼ちょっと過ぎくらいで、俺たちが抱き合って目を覚ましたのが大体午後の5時くらいだ。
そのあと、お互いに気まずくなりそのまま寝たんだった。
「4時間って……俺どんだけ欲求不満になってたんだ……?」
とはいえ志歩の普段見られない面も見れたので良かった。
いつもは元気溌剌な女子高生だったが、あの時はただのか弱い女の子だった。
「本当に危なかった」
志歩の見た事のない表情とかのせいで、俺の理性がほぼ機能していなかったので途中から何をしていたのか覚えていない。
でもどこにも血は着いてなかったから最後までしていないのは確かだ。
「起きるか」
ずっと昨日の事を考えてベットで寝転がるのもアレなので起きてご飯を作ることにした。
そしてリビングに入ると目玉焼きと焼いたベーコンが置いてあった。
志歩が作ってくれたらしい。
俺は志歩に感謝しながら朝食を食べ、勉強を始めようとした。
「ブーッ、ブーッ、ブーッ……」
スマホが震えている。
誰かから電話が来た様だ。
「母さんかな?」
この人は薄情なことに志歩と許嫁になってから1度も電話を掛けてきてくれない。
電話を掛けられても何か話す事はないが、1度くらいはかけて欲しかった。
「奈珠華じゃん」
スマホ画面には山吹奈珠華という文字が表示されている。
「はい」
「私の電話にはワンコールで出ること」
「ポロン」
開口一番ふざけた言葉が聞こえたので反射的に切ってしまった。
「ブーッ、ブーッ」
「はい」
「なんで切ったのよ!」
「反射的に」
「何よそれ!」
自分で切られる原因作っておいて怒ってるぞ、こいつ。
「まぁ良いわ、柳にお願いがあるのだけど良いかしら?」
「何?」
奈珠華がお願いとは珍しい。
こいつは学校でも基本的に人に物事を頼む事がないので、わざわざ電話を掛けてきてまでお願いをするという事は大切な事なのだろう。
俺はふざけるのを止め、奈珠華の言葉に集中した。
「シュークリームを買って来て欲しいの」
「は?」
真剣に聞いて損した。
さぞ大切なお願いだと思って聞いていたら、シュークリームを買って来て、だと?
俺をパシリかなにかと勘違いしてるのだろうか?
「なんで買ってこなきゃならないんだよ」
「実は蜜花ちゃんがレッスン中にシュークリームを食べたい!って言い出して、それに便乗して夏木ちゃんも食べたいって騒ぎ出したの」
「あ〜はいはい、そういうことね」
「志歩ちゃんも疲れたから食べたいって言ってるし」
「買ってくるよ」
志歩が疲れているのは多分俺のせいで昨日変な時間に寝てしまったからだろう。
責任を取ってシュークリームを買ってくるしかない。
「何時ごろに行けばいい?」
「11時くらいにお願いできる?」
「了解した」
今は9時25分なので、速攻で着替えて家を出ないと時間的に間に合わない。
一瞬リムジン頼めば良いんじゃね?という考えが思い浮かんだが、ケーキ屋にリムジンが停まっているとか嫌なので、俺は徒歩で行く事を決意した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「あ、ゆーくん!」
「お疲れ、柳」
俺はあの後全力疾走でシュークリームを買いに行った。
電車の時間を見たら、11時にここに着くためには結構10:20分の電車しかなく急いで買いに行かざるを得なくなったからだ。
「これ………」
俺はシュークリームの入った箱を取り出した。
「ありがと!!」
「……ありがと……」
「ありがとう〜」
この4人からお礼を言ってもらえるなら頑張った甲斐があるというものだ。
みんなニッコニコでシュークリームを頬張っている。
こんな場面、普通のファンじゃ絶対遭遇しないだろ。
俺も自分の分のシュークリームを買って来たのでそれを4人と一緒に食べた。
「柳くん……練習……見てく?」
シュークリームを1番最初に食べ終わった、蜜花がそう聞いて来た。
「え、いいの?」
「んー!ゆーくん見てって!」
志歩が口をクリームでいっぱいにしながらそう言った。
「じゃあ見てみようかな」
2人の勧めで、俺は今から志歩たちの練習を見学する事が決定した。
後書き
親が中々帰ってこないなと思ったら犬買ってきた件について
ラノベの題名の様ですがさっき起きた出来事です。
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