第52話 神田ァァァ!
「なんでこんな事に……」
俺は志歩に連れられて、学校近くの道を歩いていていた。
服装も女子っぽく見せるためにスカートにされており、大きめの胸パットを入れられ虚乳にされ、顔も化粧で原型を留めていない。
全くの別人になっていた。
着替えててきた時は、志歩に可愛い可愛いと囃し立てられたが身長が高いせいで違和感しかない。
ちなみに俺が女装しているので、志歩は変装せずに出歩いている。
あと、主に志歩が凄い注目を浴びている。
中には俺に目を向けてくる人もいるが、残念。俺男なんだ。
「もしかしてゆーくんには女装の素質が……!」
「無いからやめて」
志歩の苦労がこれでよく分かった。
着替えるの大変だし、ウィッグ着けるのは大変だし。
こんなに苦労するとは思って無かった。
「にしても、バレないな」
俺は小声でそう言った。
小声の理由は見た目はいくらでも変えようはあるが、声は変えられないからだ。
もし声を聞かれてしまえば「なんであの見た目で声だけ男?」と思われる。
男の娘が好きな人は大歓喜だろうが、生憎俺の心は男のままだ。
それに志歩と一緒にいるから女装だとバレてしまったらお忍びデートとも思われかねない。
「あれ?志歩さんじゃないですか!」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
まさか……!!
「あれ神田君?」
神田ぁぁぁぁぁ!!
お前は何しとんじゃぁぁ!
この時間部活無いのかよ!!
「名前覚えててくれたんすね!」
もうデレッデレだ。
顔から幸せオーラが出ている。
志歩と道端で会えた事がそんなに嬉しいのか?
まぁここまで分かりやすく顔が弛んでいるということは嬉しいんだろう。
俺はいつも志歩といるからで感覚がおかしくなっているのかもしれない。
「あの、隣の方は誰ですか?」
「あ〜………」
志歩が固まった。
多分、上手く誤魔化そうと考えているのだろう。
反射的に、「俺だよ」と言いそうになった。
危ない危ない。
「どうしました?」
志歩が返答しないので神田がそう聞いてきた。
俺は話せないし、志歩は誤魔化して方に困ってるから何も言うことが出来ない。
「あ、あのね、この子、優ちゃんって言うんだけどすごく人見知りで……」
「あ、ああ、そうなんですね、じゃあ学校で!」
神田が気を使って去っていった。
上手く誤魔化せたようだ。
「良かったぁ〜」
「死んだかと思ったよ」
俺は バレる=ファンに刺されて死 だと思っている。
これで、一旦落ちつkー
「もしかして鏡志歩さんですか!?」
一難去ってまた一難、今度は見知らぬ男性に声を掛けられた。
目がキラキラしていたので、すぐに志歩のファンだと分かった。
「あの、握手とかってしてもらえますか……?」
そう、おずおずとそう尋ねてきた。
「良いですよ〜」
志歩はさっきと全く違う笑顔を浮かべてそう答えていた。
欠点1つない完璧な笑顔だ。
俺は志歩のプロ意識に嘆感した。
切り替えが早すぎる。
これが大人気アイドルの意識か……すげぇな。
「ありがとうございます……!この手一生洗いません!!」
そう言って、男性は立ち去ってしまった。
あと、嬉しいだろうけど手は洗え。普通に風邪引くぞ。
「ふぅ」
志歩が安心したように息を吐いた。
「あのさ、もう家戻らない?」
「うん」
家を出て30分ほどで俺たちは家に戻った。
まず志歩が注目を浴びるので自然と人が寄ってくる。
そしてその隣にいる俺にも注目が集まってくる。
俺は女ではないのでよく見られると男だとバレてしまうだろう。
「どうする?志歩?多分バレちゃうよ?」
俺は家に帰ってそう聞いていた。
多分俺が女装しても大勢に見られるだろうからそのうちバレてしまうだろう。
流石にツアーに一緒に行くのは厳しいのではないだろうか?
「いや、絶対にゆーくんは連れてく」
志歩の気持ちは変わってないようだった。
「志歩、流石に今回は厳しいよ」
ここまで愛されているのは嬉しいが、志歩の活動に影響が出てしまったら俺も罪悪感で死にたくなるのでそう伝えた。
「分かった……今回は連れてかない。だから行く前はずっと一緒にいて?」
「分かってるよ」
そう言って志歩が抱きついてきた。
なんか永遠の別れみたいな感じで会話しているが、実際はツアーに連れて行くか行かないかの話だ。
「人のおっぱい……なんかいい……」
志歩が俺の虚乳を揉んできた。
ちなみに俺はまだ女装を解いていない。
はたから見たら随分と百合百合しい光景だろう。
「やめろ!揉むな!」
俺は立ち上がって逃げた。
「まて〜〜」
志歩も立って俺を追いかけてくる。
女装してる男子を女子の中の女子である志歩が追いかけるという奇妙な構図が出来上がった。
「ムニムニしてる〜」
結局、俺は部屋の隅に追い詰められ、諦めて胸を揉まれるのだった。
後書き
勤労感謝の日って良いね
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