第48話 人は見かけで判断してはいけない
(先輩方は一体どこに行ったんでしょうか?)
俺は1人、新品同様のリングの上で立っていた。
さっき殆ど活動していない有るのか無いのか曖昧な部活だというのは分かった。
そして風間先輩は、残りの2人を呼んでくるとのことでどこかへ行ってしまった。
それから暫く待っているのだか一向に戻ってくる気配がない。
奈珠華はというと、「レッスンにそろそろ行かないと遅刻するから帰るわね」と言って帰っていったしまった。
だから今、俺は1人ぼっちなわけだ。
先輩を待っている間、俺は少し色んなところを見てみたが近くで見ても新品同様の見た目をしていた。
これから練習する道具が綺麗なことに越したことはないのだが、綺麗すぎて先輩たちが練習しているのかと不安になる。
「柳君~連れてきたよ~」
風間先輩が戻ってきたらしい。
風間先輩の後ろには結構大柄てゴリラみたいな先輩1人とメガネをかけた小柄な女子1人がいた。
「君が入部希望者の柳君か。私は部長の久世大地だ、よろしく」
「私は清水春風だ!清水でよろしく!」
メガネの先輩パッと見、静かそうな人に見えたけど滅茶苦茶キャラが濃そうだ。
やっぱり人は見かけで判断してはいけない。
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
手っ取り早く社交辞令を済ませて、俺は1つだけ思ったことがある。
「ん?なんか男子少なくない?」
残り2人が両方男子ならまあ活動出来なくもないだろう。
2人で練習試合も出来るし。
ただ、男子1人となるとどうやって練習していたのか分からない。
サンドバックを殴り続けるのにも限界がある。
「この部活で男子は俺1人だったからな」
マジか、先輩が抜けたとかじゃなくて元々1人だったのかよ。
どうりでリングが綺麗なわけだ。
「しかし今日から柳君が入部してくれるから男子は俺1人じゃなくなるぞ」
めっちゃ嬉しそうだった。
今まで試合も出来なかったのだから嬉しくなるのも当然か。
「じゃあ早速練習してみるか」
「あ、すいません。今日用具何も持ってきてなくてですね……」
「大丈夫だ。用具は全部揃ってる」
準備万端だった。
あと久世先輩もやる気満々だった。
俺も幸い時間があるのでそのまま練習する流れになった。
じつに1年ぶりの練習だ。
あと帰宅部志望だったので今日までの1年間、殆ど運動していない。
つまりかなりの運動不足だ。
そんな人がいきなりボクシングの練習を始めたらどうなるか。
そう、すぐにバテてしまうのだ。
「腕が上がらん………」
案の定ジャージに着替えて、30分程サンドバックにジャブを打つ練習をしていただけで腕の動きが止まってしまった。
腕が攣りそうだ。
俺の想像していた以上に俺の運動不足は深刻だったらしい。
「柳、今日はこのくらいにしておくか」
俺の様子を見て練習を切り上げる判断をしたらしい。
確かに辛かったので切り上げてくれるのは助かる。
ただ思った事がある。
先輩、練習してなくない……?
そう、俺がサンドバックを殴っている間先輩はずっと俺の後ろに立っていたのだ。
筋トレ道具も揃って居るので、筋トレとかしないの?とは思ったのだが先輩にも何か考えがあるのかも知れないので何も言わないでおいた。
「じゃあ、明日入部届持ってきますね」
「ああ、よろしく頼むぞ!」
制服に着替えた後、それだけ言ってボクシングジム?をあとにした。
「やばい、めっちゃ疲れた」
俺は家に帰ってソファーから動けなくなっていた。
「ピーンポーン」
志歩が帰ってきたみたいだ。
重い体を引きずって玄関に向かった。
「どうしたの?疲れた顔して」
ドアを開けた瞬間そう言われた。
そんなに疲れた顔してたか……俺……
「部活見学という名の部活体験をしてきた」
「えっ!?何部の!?」
そういえば志歩にはまだ何部に入部するのか言って無かった。
「ボクシング部」
「ほんと!?やったぁ!」
奈珠華の言っていた通り、志歩はボクシング部に入って欲しかったみたいだ。
喜んでもらえたようでよかった。
それに久々に練習は意外と楽しかった。
「あとで私たちも挨拶行かないとね〜」
すっかり忘れていたが、志歩たちも一緒に入部だけするんだった。
なら明日は志歩たちと一緒に入部届を出さないとな。
「失礼しまーす」
「おお、どうした柳……と山吹たち」
俺は次の日の朝、入部届を出すために職員室を訪れていた。
「入部届を出しに来ました」
「おお!決まったのか!」
めっちゃ嬉しそうだ。
俺らのせいでクラスがうるさかったから、これで静かになると思うと嬉しいのだろう。
「で、何部に入ることにしたんだ?」
「ボクシング部です」
「え……」
理恵先生の笑顔が固まった。
後書き
最近、星野星野さんの現役jkアイドルを読み返してる。
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