第5話実力テスト

「今日はこの学院の中でのそれぞれの生徒の実力を知るため実力テストを行う」


「詳しいルールは後でグラウンドに出てから説明するが戦い方はそれぞれ個人の自由だ武器を使ってもいいしすでで戦ってもいい」


「もちろんスキルや魔法も使用OKだ」


「これから15分間の休憩を与えるその間にそれぞれ武器のメンテナンスや技の練習などをしておくといい」


先生は言って教室を出て行った。


「ねえねえかずくん」


「なんだ?」


横に座っている葵に軽く肩を叩かれ顔を横に向ける。


「どんな戦い方をする人がいるんだろうね」


「それを知るための実力テストだろう」


言いながら俺は席から立ち上がる。


「かずくんどこに行くの?」


「ちょっとグランドに出て素振りしに行くだけだ」


それなら私も一緒に行く」


それから俺たちはなるべく人がいなさそうなところを探した。



「でも大丈夫かな?」


「何がだ?」


素振りをしながら言葉を返す。


「かずくんてスキルも魔法も使えないわけでしょ、そんな条件の中でどうやって戦えばいいんだろうね」


「そんなのスキルがあろうがなかろうが関係ねえよ」


「相手が魔法とかスキルで俺を倒そうとしてきてもその力を上回る力で圧倒してやる!」


「かずくんみたいに純粋に剣の力だけで戦ってる人って他にいるのかな?」


「世界中探せばどこかにあと1人や2人はいそうだけどそうそういないだろう」


「一応剣を使っての戦い方とか本に書いてあったりするけど今の出回ってる本ってほとんどが、スキルを剣と組み合わせての戦い方が前提になってるからな 」


「それ以外の戦い方だと魔法と剣を組み合わせての戦い方が主流だろうな」


「もちろん生まれつき魔力が少ないやつとか、俺みたいに魔力をそもそも体に宿してないやつは論外だけどな」


「てか葵は俺の心配をする前に自分の心配をした方がいいんじゃないか?」


「確か誰かと戦った事ってないよな?」


「うんだから今回が初めて」


「今全部でいくつぐらいの魔法を覚えてるんだ?」


「今は火属性の魔法をメインで覚えてて全部で10個ぐらいだったかな使える魔法は」


「なるほどな葵から火属性の魔法が飛んできたら一応警戒しとけばいいってことか」


「ありがとう敵になるかもしれない相手に何の警戒もせず情報を渡してくれて!」


俺はいたずらっぽい笑みを顔に浮かべながら言う。


「あ!しまったかずくんとも敵同士になる可能性があるんだった!」


「これでお前を俺の力で圧倒できるな!」


葵は何も言わずに怒った表情で俺の腹を殴り続ける。


だが力が全然入っていないので全く痛くない。


「まあそれは半分冗談だそろそろ先生が言ってた時間になるからクラスの方に戻ろうぜ」


クラスの方に戻ると先生にグランドで授業すると言われたのでグランドに出る。


「これから行うこの実力テストのルールの説明についてだが、まず男子と女子の2グループにそれぞれ別れてもらう」 


「そこからトーナメント形式でそれぞれ今からこのフィールドの上で戦ってもらう」


そう言って先生が向けた目線の先にはどでかいフィールドが用意されていた。


「戦いを始める前に勝ち負けのルールについてだが」


「自分と相手のどちらかが気絶するか高3と言ったらその場で戦いは終了だ」


「もしくは相手と自分のどちらかがこのフィールドの場外まで飛ばされたら負けだ」


「逆に言えばそれ以外だったら何を使ってもどんな武器を使おうがどんな作戦を立てようが何でもありだ」


「さっきも言ったが今回のバトルはトーナメント戦だ」


「男子グループと女子グループのそれぞれのグループで勝ち進んだ生徒が勝者だ」


「男子生徒は右に女子生徒は左によれ」


それから早速トーナメントが始まった。


しばらく戦いを見ていると俺の番になった。



「フィールドに上がれ」


言われた通りフィールドの上に上がると、相手が随分と余裕そうな笑みを浮かべながら俺に近づいてくる。


「随分と自信満々な顔をしてるな」


「そんなにお前強いのか」


「ああ、なんたって俺の剣は自己流で極めた唯一無二の剣術だからな」


そう言いながら相手は不敵な笑みを浮かべ剣を抜く。


「はじめ!」


審判の掛け声と同時に切りかかってくる。


それじゃあまずはこの学院の生徒の力がどのぐらいのものか見せてもらうとするか。



俺は剣を抜かずに相手の動きをただ観察する。


「どうしたそんな余裕ぶっこいて剣も抜かずにいたら俺の唯一無二の剣に勝てねえぞ」


俺は顔の表情を一切変えずにその攻撃を余裕で避ける。


「俺の剣の速さを見切って避けるなんて少しはお前もやるみたいだな」


「いやいやいやこの剣のスピードを避けられるのは普通だ」


今の剣父さんに修行をつけてもらってた時の1/10の速さもなかったぞ。


「何!」


「なるほどお前は瞬殺剣の本気を喰らいたいみたいだな 」


「出し惜しみしてるような素振りを見せてねぇでとっとと本気でかかってこいよ」


それから相手はスピードを上げ剣を構え直しまっすぐ向かってくる。


その攻撃を全て避け後ろに回り込む。


「瞬殺剣っていう割にはそんなに早くないなお前の剣」


「さっきからちょこまかと逃げ回りやがって!」


振り向きざまに横に剣を振るうがその攻撃を俺はジャンプし避ける。


「お前の剣は唯一無二であることにこだわりすぎて、ただのハリボテの我流になってるんだよ」


「分かったようなことを言いやがって!」


俺は小さい頃に剣の基本の動きを叩き込まれた。


何年か父さんに修行をつけてもらって基礎の動きを学んで行った。



「いいかよく聞け剣術でも魔法でも基礎の動きがあるんだ」


「基礎の動き?」


「例えば鞘に納めてある剣を抜く動き」


「そこからまっすぐ切りかかる動き」 


「相手の剣を自分の剣で弾く動き」


「ごくまれにこれに当てはまらない剣術の動きもあるが基本の部分は一緒だ」



だがこの相手はそもそもその基本の動きすらできていない。


俺の場合はスキルも魔法も使えなかったから基本の動きを覚えた後はいろんな昔の魔法とスキルを組み合わせて戦う前の本とかを参考にしていた。


そんな俺の長年積み上げてきた経験と努力で出来上がった今の俺の我流の剣とそもそも根底から違う。


「それなら俺の剣の最終奥義を食らえ!」


相手がそう言うと手に持っている県が光を放ち始める。


剣を俺に向かって勢いよく振り下ろす。


「はははさすがのお前もスキルと組み合わせたこんな攻撃食らったらひとたまりもないだろう!」  


「大きい声あげて何1人で笑ってんだ?」


「何!」


「なんでお前が俺の後ろに立ってる!」


「そんなの簡単だお前の攻撃を俺がよけて後ろに回り込んだ」


そんなはずはないお前が俺の攻撃をよけられるはずは!」



「だからさっきも言ったろうお前の剣はただのハリボテなんだ」


「俺にとっちやお前の剣は遅すぎる!」


「うおおおーーー!!!」


叫び声をあげながら俺に向かって切りかかってくる。


が俺が攻撃をしようとしていることに気づき急いでガードの体制に入る。


「無駄だ!」


俺は拳で相手が持っている剣を砕きそのまま相手の顎にアッパーカットを食らわす。


「何なんだあいつ!」


「今拳だけで相手を倒したよな」


「ああ、しかも一発で」


「どうなってんだあいつ!」


観客席に座ってみている生徒たちが口々にそんなことを言う。


横で戦いを見ていた先生が相手の意識が飛んでいるかどうかの確認をする。


「勝者和也」


先生が言いながら片方の俺の手を掴み上にあげる。


生徒たちみんな大拍手をする。


まだ俺1回しか勝ってないのになんだこの盛り上がりは!

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