第4話本当に守りたいもの

「それで、 説明してもらおうかどうしてさっきまで校舎の外にいたのか」


「そんなの俺たちはただ一緒にグランドの方にあるベンチに座ってご飯を食べてただけですよ」


「もちろん本当にそれだけなら先生だってこうして聞き取りをしたりはしない」


「昼休みが終わった頃ぐらいに6人の生徒が外から戻ってきたんだ」


「その生徒たちはなぜか全員体に怪我をしていてな」


「その怪我はどうしたんだと聞いてみたらお前にやられたって言ってたよ」


「確かに俺とあいつらは喧嘩をしましたけど、向こうが変な言いがかりをつけてきて」


「なるほどそれで暴力沙汰の喧嘩に発展したと」


「そうです」


「それでも納得できない引っかかる部分がある」


「なんで6人がかりで攻めたあいつらがボコボコにやられてお前が無傷なんだ」


「そんなの決まってるじゃないですか相手が弱すぎたからですよ」


俺は煽る口調でも馬鹿にする口調でもなく至って冷静な口調でそう言った。


「なるほどひとまずこの件はただの喧嘩として捉えておく」


その先生の含みがある言い方に違和感を覚える。


「お前あの時間に起こったいきなりの雷のことについて何か知ってるか?」


「いいえ何も知りませんただの偶然でしょう」


「そうか悪いなんでもないただの確認のつもりだったんだがかまをかけるみたいになっちまったな」


「これは先生からの1つ忠告だ」


「お前たちがいつどこでイチャイチャしようとかまわないが 」


「イチャイチャ!」


俺の隣で黙って先生の話を聞いていた葵がその言葉を聞いて恥ずかしそうに頬を赤らめる。


「下手に喧嘩をするのだけはやめといた方がいいと思うぞ」


「分かりました」


俺は素直にそう言って家えと帰る。



「何とか俺たちのことはばれずにやり過ごせたな」


帰り道を歩きながら安堵のため息を漏らす。


「どうなるかと思ってヒヤヒヤしたけどなんとかなって良かったね」


今回は幸い誰も犠牲者が出なかったみたいだが、先生たちだけでなく同じクラスの生徒たちからも何かしらの違和感を向けられていると思っておいた方が良さそうだ。


「あの人たちかずくんのことを調べさせて欲しいみたいなこと言ってたけどまた何か仕掛けてこないかな?」


不安そうな口調で言葉を漏らす。


「大丈夫じゃないかもう1人の仲間がいるっていうのも嘘だったみたいだし」


「きっと俺たちのことを調べたいって言ってたのも大した理由はないと思うぜ」



「なあとうさん久しぶりに修行をつけてくれよ!」


「どうしたんだ家に帰ってくるなり珍しいな」


「ちょっと色々あってな腕がなまってないか見て欲しいんだ」


「ああ、分かったどこからでもかかってこい」


そう言ってどでかい剣を構える。


俺も腰に刺している剣をゆっくりと構える。


何か事件があった時にすぐに対応できるように自分の今の剣の腕を知っておくのは重要になってくるだろう。


それに一流の剣士になるためにもさらに俺は高みを目指す。


「行くぞ!」


「どこからでもかかってこい!」


父さんがそう言ったと同時に俺は一気に距離を詰め下から上にまっすぐ素早く県を振り下ろす。


だが父さんはその俺の剣をガードする。


すぐ後ろに下がる。


「やっぱり久しぶりに修行してもらって気づいたけどなまってるな」


「剣士ぶりやがってお前が本当の剣士になりたいと思ってるんだったら今この戦いで感覚を取り戻してみろ!」


「そんなこと言われなくたってわかってる!」


剣を構え直しもう一度切りかかる。


「ただ闇雲に剣を振って攻撃してくるだけじゃ俺には当たんないぞ」


剣が力強く弾かれ一瞬後ろにのけぞってしまう。


そんなこと言われなくたってお父さんの強さは俺がよく知ってる小さな頃からずっと修行をつけてもらってたんだ。


だけどそのお父さんの強さを父さんの動きを今日俺は超える!


動きをよく観察しろ相手の動きを先読みして強力ないってを放つんだ。


俺は一度手に持っている剣を鞘に戻す。


「うおおお!」


叫び声を上げ大きな剣を俺に向かって振りかぶってきたと同時に、その件が当たるギリギリでしゃがみ攻撃を避ける。


今だ!


一瞬の隙をついて俺は父さんの喉元に向かって剣を振り上げる。


「参った降参だ」


「ってことは…俺の勝ちってことか?」


「ああお前の勝ちだ」


「いいよっしゃーあああ!!!」


俺はあまりの嬉しさに大きくバンザイをした。


「やったねかずくん!」


戦いに集中していて全く気づかなかったが横で戦いを見ていた葵がそう言っていきなり飛びついてくる。


「でもなんでここ最近は戦いの修行なんて全くしてなかったのに父さんに勝てたんだ?」


「戦いに勝った本人がそれを理解してないんじゃ今回の勝利がただの偶然で終わっちまうぞ」


「まあそれだけ俺が歳を取ったってことなんだろうけど」


「それじゃあただ単純に父さんの剣の腕が落ちただけじゃねえか!」


「それだけじゃねえと思うけどな…」


「今何か言ったか?」


お父さんが立ち止まり今何か小さい声で言った気がしたが聞き取れなかった。


「いや何でもないただの独り言だ!」


「もうこんな時間だしあおいちゃんいつも悪いが夜ご飯の準備をしてくれるか」


「うん、わかった」


家の中に戻りいつも通りキッチンの前に立つ。



「それで初めて学院の方に通った感想はどんな感じだ」


「特に感想っていう感想はねぇな」


「今日は入学式が終わって1つ授業みたいなのはあったけど短縮授業だったからすぐ終わったし」


「普通の学院での生活が始まるのは3日後って感じ」


「でもクラスの人もたくさんいたしこれから友達もできて行くかもしれないから楽しみだね」


できた料理をテーブルに運びながら言う。


「のんきだなお前は友達作りにばっかかまけて勉強するの忘れるぞそのうち」


「かずくんよりは私頭がいいから大丈夫だもん」


「…」


俺より葵の方が断然頭がいいので何も言葉を返せない。


「そうだぞ、剣の修行をするのもいいが学院に入ったんだから勉強をしておけよ少しは」


「いいんだよ学校での勉強なんてどうせスキルを使った戦い方とか魔法を使った戦い方とかしか教えてくれねえんだから」


「それだったら自分でやり方を考えて強くなれる自信が俺にはある!」


「はぁ葵ちゃん…こいつのおもりをするのはだいぶ大変だと思うけど頼むよ」


父さんは呆れたような口調でため息を漏らす。


「大丈夫です学院に一緒に入るって決めた時からその覚悟はできてます」


父さんのその言葉に笑って言葉を返す。


「何なんだよ2人して俺を脳筋バカみたいに言いやがって」


「だからさっきからそう言ってるんだよ」


「なんだとこの野郎!」


俺は少し声を荒げテーブルの上に身を乗り出し若干父さんの顔を睨みつける 。


「まあまあかずくん食事中だからとりあえず座って」


俺と父さんの顔の間に手を入れなだめるように言う。


「全く2人して言いたい放題いいやがって」


作ってもらったご飯を全て食べそれからしばらくして眠りについた。



ちょうど寝ている途中に目が覚めた俺に父さんが声をかけてくる。


「なぁ和也学校であまり喧嘩するなよ」


「なんでそのことを知ってるんだよ」


今日学校で何人かの男子生徒に絡まれた話は一切してないはずだ。


「感だよ」


「お前のことだから入学初日から誰かに絡まれて喧嘩してきてもおかしくないって思っただけだ」


「なんだよただの感かよ」


「別に俺は喧嘩をすること自体は悪いことだと思っちゃいないが、本当に誰かを守りたいって思ってるんだったら下手に喧嘩に乗っかっちゃダメだ」


「…そんなこと言われなくたってわかってる」

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