第2話 りっちー現る
「魔王様……魔王様……起きてくださーい。もう朝ですよー。朝に弱い私よりも朝弱いなんてさすが魔王ですけど、学生の朝は早いんですから起きてくださーい」
「んんん? なんだお前は」
「おうおう、第一声がなんだとは失礼ですね魔王様は。私ですよお忘れになりましたか?」
俺はテレポートで家の屋根に登ったが、力の覚醒に伴う疲労感が出てベッドに即戻って今まで眠っていたのだ。
俺が朝のベッドの上で伸びをすると横には骸骨の衣装を纏った女の子がいた。その女の子はとても小さく手のひらサイズで3頭身しかない。
「妖精か何かか? 俺を魔王だと知っているということはそう見えて高位の妖精なのだろうが」
「いやいや! 本当にお忘れですか! 私ですよ三魔将の1人りっちーです!」
「りっちー……リッチー……ああ、あのアンデットの高位魔族か。うん? 貴様3000年も生きていたのか」
「いえ、アンデットなので生きてはいないんですが、死んでもいないというか仮死状態で眠っていました。魔王様が起きられた波動を感じたので私も起きたんです」
「そうか、で。それがなんなんだ」
「なんなんだじゃありませんよ、私めは魔王様の世話係なんですから。これから付き添わせていただきます」
「ええ? そういう役目はモフモフした猫とか美少女とかじゃないか? なんでお前みたいな変な人形みたいなのがついてくるんだよ」
「まー! 失礼な。私この時をどれほど待ったことか。魔王様がまさか人間になるとは思っていなかったですけど。モフモフは無理ですけど美少女にならなれますよ!」
「じゃあなってみてよ…ておわわ!」
りっちーは俺が言い終わらないうちに、ドクロを被った巨乳でスラリとした美脚な少女に変身した。
しかも大きなメロンをこれでもかと主張しながらいいよってくる。
「ふふん、どうです魔王様? このりっちー可愛さと美貌だけでなくてメイドスキルも持ってるんですよ?」
曲線からは目をそらしつつ、
「ああ、これか。ステータスオープンっと」
俺が唱えるとリッチーの横にステータスや装備など諸々の情報が表示された。
「ほーん。レベルは9999……マックスで能力値もほぼカンストだな」
「ええ、3千年の努力の成果です」
「でもこれじゃあ俺と一緒に旅してもつまんないだろ?」
「え?」
「イヤだって俺は……ほら」
「ま、魔王様の能力が一般的な人間並みになってる……!? レベルも1だし!!!」
「ああ。まあ予定外で取得しちまったスキルがあるけど、俺は普通の人間として生まれたかったからな。どうやら魔王の力はいまだと制御できないみたいで純粋な低レベルの人間じゃないんだけど」
「な、な、な。なんでそんなことを!? これじゃあ、ちょっと強いモンスターに襲われたら死んじゃうかもしれませんよ!?」
「それさ。死の恐怖を味わってみたかった」
「へ?」
「どうにもな、飽き飽きしていたんだ。強いってことにな。もっとこう、這いつくばって生きていきたいんだ俺は」
「とんだマゾですね、この魔王様は……3千年以上生きてきて初めて知りましたよその胸中」
「うむ。だからお前も余計な手出しはするなよ」
「うわーん、せっかくいろんな修行に耐えたのにー! 魔王様とペアになれずボッチ確定だああああ!」
俺はそんなりっちーを放っておいてベッドから抜け出し着替えつつ答えた。
「俺ももっと別の何か……動物にでも転生するのかと思ったがな。人間に転生するとなると波乱がありそうだ」
クックックと俺は笑った。
「で、でたー……魔王様のクックック笑い。今までその笑いが出ると碌なことがなかったですよ」
「そうだな。面白くなりそうだ」
俺がりっちーと話していると軒下から女の声がした。
「ちょっとラルスー! 起きているならご飯の用意を手伝いなさーい! お父さんももう行くから挨拶もしていきなさい!」
俺が一瞬、誰の声だったかなと考えているとりっちーが答えた。
「今の魔王様のお母上の声ですよ。ちなみに魔王様にはひとつ下の妹がいますね」
「ふーん? 妹か。おもしろいが……まずは、父君と母君にご挨拶だな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます