【タケノコ物語】第三幕

お爺さんんは、毎晩来る「五人の姿」をみて、理不尽に思ったのよ。

私にこう言ってきたの。

「美しき姫さん、あなたは宇宙人だと分かってしまったが、ここまでタケノコの刺身を取って食べて共にしてきた。私の気持ちに答えてほしい」と。

意図はわかっていたけど、執着を手放しているお爺さんの頼みだしタケノコの刺身も食べたいからこうやって言ったわ。

「どんな事でも、なんなりと言ってください。断るつもりはないです。私は、地球人も宇宙人で自分を異界の人とも思っていないわ。あなたのことを本当に親切にしてくれる友だと思っています」と答えたの。


お爺さんは大喜びしてね。

「嬉しい言葉をありがとう。わたしも70歳を超えた。いつ死ぬかもわからない。この世界では、男と女が結婚して美しい儀式をするのだ。そして、またあらたな形で子孫を残す。どうか、美しい儀式と子孫をのこしてくれないかね」とね。

もちろん、地球上の結婚がどういうものか知っているわ。

さらにいえば、子孫や性についてはあなた達以上に尊いこととして知っている。

なので、お爺さんに「結婚などはどのようなことをするの?」と聞いたわ。

「あなたは宇宙人ですが、肉体はしっかりあります。もしかしたら、あなたに会う人がいるかもしれません。五人の若者(ストーカー)に合ってみませんか?」

と言いました。

「私は、そんなに大した人ではありません。(タケノコの刺身好きな人です)相手の本心を知らないまま結婚して、相手がまた違う女(エロス)に走っても後悔します。世間では貴族として名を挙げていても、相手の深い心を理解せずに結婚はできません」と言ったわ。

お爺さんは

「良くぞ。言った。そのとおりだ。だから、5人の若者(ストーカー)たちの愛情(エロス)を確認してみてはどうですか」

わたしは、やっぱり人間がわからなくなった。

エロスが、分かっていないから自分に合うか合わないか、その場でわからないのだと。

こうなったら、お猿さんということを証明するしかない。

「5人の若者(ストーカー)たちの愛情(エロス)は、どれも同じです。優劣など無いでしょう。私が本当に感銘を受けたときは、結婚しましょう。そのことを彼らに伝えてください」

と言った。

これも「タケノコの刺身と少しばかり人類の役に立つため」と思って覚悟をしたわ。

お爺さんは「いいアイデアだ」と承諾してくれた。


日が暮れる頃、エロスのストーカーたちが家の前にぞろぞろやってきたわ。

笛を吹き発情させ、歌を歌い発情させ、自分を強くみせる戯言を吐き発情させ、扇を音で鳴らして発情させている。

お爺さんは

「大変よく来てくださいました。むさ苦しいお粗末な家ですが長く通って頂き申し訳ない」と言った。


続いて「このワシの目が明るいうちに、かぐや姫が結婚する姿がみたいのでお集まりいただきました。私が優劣つけるのは道理から外れます。かぐや姫に決めてもらいます」

自信たっぷりの5人の若者(ストーカー)たちは口を揃えて「それは良いアイデアだ」と言った。

私は予め以下のものをもってくるように言ったの。

・石作の皇子には「仏の御石の鉢を」

・庫持の皇子には「東の海の蓬莱山にある、白銀の根を張り、黄金の茎を持ち、白い宝石の木の枝を」

・右大臣阿部御主人には「中国(唐)の火鼠の皮衣を」

・大納言大伴御行には「龍の首にかかっているという五色に輝く宝石を」

・中納言石上麻呂足には「燕が持っているという子安貝を」

お爺さんはこれを聞いたとき「難題ですな。この世界の物ではない」と言ったわ。

私は「難しいかな?ちょっと成長できれば、すぐ持ってこれるわよ」と言った。

お爺さんは「とにかく伝えます」と言った。


伝えると5人のストーカーはそこから立ち去った。

かぐや姫は、結局エロスは、それくらいのものだと知っていた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る