第90話 娘

次女が小さかった頃

可愛くて仕方なかった。

ずっと 自分は次女が大好きだと信じて来たが

今はそうでもないのかもしれない と思った。

そして、なぜ あんなに好きだったのかを考えた。

次女は プクプクスベスベしていて 良く笑った。

柔らかくスベスベの髪を触ると それだけで幸せになった。その髪を、毎日解かして結んでいた。

そして今。次女は

年頃も過ぎ、朝の挨拶さえ不機嫌に無視され

痩せている事にこだわり 余り食べようとせず

いつも不景気な顔をして プライドばかり高くなってしまった。

他の2人は、うちにいた時

ゴミを捨ててくれたり、風呂を洗ってくれたり

夕飯を一緒に考えてくれたり 自然に手伝ってくれていた。2人が先に家を出て行ってみて

次女だけが日々の家事をやろうとしない事に気付かされた。そして、2人がいつもニコニコ良く笑う子だった事にも。

2人がいた時は、2人と一緒に次女も良く笑った。

そう言えば、小さい頃 喘息で保育園を休み

一日不機嫌にフウフウ言っていた次女が

長女が保育園から帰って来た途端、一緒にブロックで遊び始めた事があった。

あの時、「大人は無力」と感じた。

子供たちがお互いを必要としている事を強く感じ

心を打たれた。美しい気付きだった。

子供たちは今もお互いを必要としている。尊い。

離婚する前、夕方は忙しく、私は毎日不機嫌だった。

しかし元旦那が帰って来ると 子供たちはとても喜び

笑顔になった。元旦那は色々ふざけて、

子供たちを笑わせていた。私には出来ない事だった。4人が笑うその光景を ずっと見ていたかった。

感謝が足りなかったのかもしれない。

その光景は、息子が6歳の時に 永遠に失われた。

父と一番仲良しだったのは次女で

父が居なくなったダメージを一番強く受けてしまったのは 次女だったと思う。

次女が 自分を大好きでいれくれる気の合う誰かを

見つけて、いつかまた小さい時みたいに

自信に溢れて良く笑う様になる日が

いつか来ると信じている。

しかし

放っておいても中々その日がやって来ないので

もっと色んな人と自然に出会う場所に、

次女を引っ張り出したいと思っている。

相手の性別とか年齢とかはどうでも良い。

「生きていて良かった。ここにいたい」と

次女に思わせてくれる人に 出会って欲しい。

かつて、私にそう思わせてくれたのは

子供たちだったから。

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