第79話 兄
兄には ガッカリした。
駄目な奴なのは、小さい頃からわかっていた事ではあるが、まさかここまで駄目だとは思わなかった。
実家を手放す事になり、隣の叔母(母の妹)が「それなら私が買う」と母に言ったので、実際の受渡しは兄と叔母の長男でする事になった。
「家の中を空にする」と言う話は、「それはそうだろう」とみんな納得していた。しかし兄は
庭の木も全部切ってしまった。
母と叔母は2人とも植物がとても好きで、叔母は家にある木も気に入っている物が沢山あった。
手入れが大変なタイプの木を切るのはわかるが
母や叔母の意向を全く確かめずに、根こそぎ切ってしまうとは思いもよらなかった。
無惨な庭を見て、母は心を痛めているが
兄は母と話そうともしない。まるで恨みでもあるかの様に。兄は母が好きなのかと思っていたのだが
なぜこんな事になってしまったんだろう?
兄は、LINE上の姉からのメッセージも無視している。
あいつは一体、どうなっているんだろう?
どんなに仕事で忙しいのか知らんが、姉は最低限の
連絡しかしていない。
「自分の意向こそが優先されるべきだ」
駄目な奴の常として、兄もきっとそんな風に思っているのかなぁ。
そんなわけで 実家の庭は今は無惨に見る影もない。
しかし、いくら切った所で、種や根が残っている物はいずれは生えて来て、放っておけばボーボーになる。
事が全部済み、叔母といとこに家が引き渡され
兄が介入出来なくなった暁には、叔母の許可を取って
木いちごの種をばら蒔いて来ようと思う。
実家ではなぜか、日陰に木いちごがあったが
木いちごは日照りに強く、日向のいちごは格段に甘くなる。それに大木になったりしないので 後始末にも困らない。明日葉もツワブキも、そもそも植えたわけではないので そのうち生えて来るだろう。
兄のアホさは子供の頃から変わっていないのに
自尊心ばかりが強くなって、全く手に負えない。
誰があいつに「自分は重要人物だ」と勘違いさせた
のか? 一番悪いのは、父と母だったんじゃないだろうか。兄のアホさ加減のせいで、兄が小学生の時に色々担任の先生に言われて困っていたはずなのに
覚えていないんだろうか。なぜあんなに兄を頼りにしていたのか。男だから? 「男だから」と任されてしまう役割をこなし続けた結果、大分しっかりしたなとは思ったものの 兄はどこまで行っても兄でしかない。「才覚」なんて物を兄に求めるのは、所詮
馬鹿化けている。
母は可哀想だが、息子があんな風なのも母のせい。
その息子に「任せたい」と言ったのも母なので
自業自得なのだ。そのうち木いちごがなる頃には
母は「兄が木いちごを植えてくれたんでしょ」とか
言い出し兼ねない。何せ「ちゃんと覚えておく」って事が出来ないんだから。そこは「年のせい」ではなく性格の問題だ。という事はつまり
「生家の家族は誰も信用出来ない」って事なんだ。
私の周りにはいつも沢山の人がいたけど、私はいつも孤独だった。母の事はとても好きだけど、心を許せる、母は自分の事をわかってくれている とは思っていない。もちろん、何でも話せる相手ではない。
私に必要なのは懺悔かな。だから沢山の人がカトリックになるんだろうか。
じゃあもし、「何でも話せる友達」がいたら
宗教は必要ないのかな
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