第18話

 5月の、春が終わったばかりの、柔らかい日差しが窓から溢れる。

 喪服を纏った俺と兵士は、お祖母さんの骨壷を抱えて、食堂に戻ってきた。

 結局、お祖母さんは助からなかった。

 兵士は子供みたいに泣きに泣いて、俺は側で見ていることしかできず、もどかしかった。

 葬儀では、商店街のたくさんの人たちに見守られて、お祖母さんはとても穏やかそうに見えた。


「裕介、ありがとう」

「なにが?」

「ずっと一緒にいてくれて」

「別に……俺がいたかっただけだし」

「うん……そういや、裕介、家に戻るとか言ってなかった?」

「それは……別にいい。お前は気にするな」


 あれから一度もスマホの電源を入れていない。どうせ父さんや秘書からの着信しか来ていないはずだ。

 会社にはとりあえず欠勤の連絡はしておいたが、別に俺が休んだとしても、咎める奴は誰もいない。

 今は、何よりも兵士の近くにいたい。


「……ん?誰か来た」

 

 兵士が食堂の玄関の方へ向かっていった。


「おいっ!なんだよ!あんたら!」

「どうした!?」


 兵士の大声に、食堂まで走って行くと、サングラスをかけた、黒スーツの男が4人、兵士を取り囲んでいた。

 俺の顔を見た途端、4人とも驚いたように動きを止めた。


「オレは裕介じゃねー!」


 兵士は男たちに掴まれていた腕を振り払うと、俺の近くに寄り添った。


「……父さんのSPだな?」

「はい。裕介様を家に戻すように仰せつかりました。」


 リーダーらしい男が低い声で答えた。

 

「戻るから。兵士には手を出さないで」

「裕介、いっちゃうの?」


 兵士が俺の手を握った。


「絶対、戻ってくるから。待ってて」

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