第40話 現住所の重要性

 えー、鈴木輝一郎先生のYouTubeチャンネルでお聞きした話なんですが、履歴書を埋める際に住所欄をね、どう埋めるかってトコのお話をしてくださったんですよ。

 詳しくは先生著の『何がなんでも長編小説を書きたい』にもありますが。あと、『何がなんでも新人賞獲らせます!』に見本が載せてあります。


 住所というのは、出来たら市町村の何番地まで考えた方がいい、という話。下町なのかハイソな住宅街なのか、あるいは億ションなのか安普請の下宿屋なのか。最近だとシェアハウスってのもあり、こっちもピンキリだという情報あります。居住スタイルって現在ほんと多岐に渡ってるので、その辺りも視野に入れてね。


 これ、先生は「その人物の可処分所得が、住所には現れるからね?」と仰います。


 つまり、どのくらいの給料を貰っていて、そのうちの何割くらいを家賃に突っ込んでいるかにその人の物の見方や価値観が反映されている、てことだと。そこを考えて住居は決めないといけないってことだそう。


 私もある程度は設定を決めて書いてますけど、そこまで考えてはなかったですね。言われてみれば確かにそうで、安月給のサラリーマンが物件価格の高い都心部に住んでいるとなれば、何某かを犠牲にしてなきゃその生活は成り立たないんだってコトですから。設定の破綻ですわ、これ。


 貰える給料は、職業でだいたい読者は想像が付くわけです、都市部の家賃相場だってなんとなくイメージは湧く。物価についても。そうしたら設定の矛盾は割と多くの読者に気付かれてしまう可能性があります。


 安月給なのに高い都心部に住むなら、何らか理由が必要で、その理由はその人物の他の設定に根差していたりする。なぜ都心でないとダメなのか? これは切実なものでないとおかしくなります。都心一等地の家賃は安月給なら五割方逝ってしまう。爪に火を灯すような節約生活に、食事はカップ麺という感じが想像できる。そしてこれは、ただの見栄っ張りでは説得力に欠ける生活実態ということになってしまいます。


 都心にどうしても住んでいたい理由、先生は例として舞台関係の下積みだとか芸人の卵とかを上げてらっしゃったかな? 何か、生活より大事な理由がなければ、身分不相応な住居でカップ麺生活は送らない、という意味です。世田谷とか、地価が高いとボロアパートでも結構な値段になるから、高級志向の見栄からという理由でもちょっと厳しいケースもあるなぁ、と私も思いました。



 ファンタジー舞台だとまた別の観点で、この現住所というものは重要になるそうです。その人物はどのくらいの収入があり、その収入は何で得ており、物価がどのくらいで、その中で家賃はどの程度割いているのか、という具合。これがいい加減だとやっぱり破綻が生まれてしまう。


 さらには、ファンタジーは自分で勝手に決められると思われている分、これを適当だと思われると一気に作品世界の世界観がチープに感じられてしまうという危険もありそうです。「作り込まれた世界観」の反対語というワケですね。


 そこまで考えて用意するのがキャラクターの履歴書なので、地図とか必須ですよ。私もファンタジー作品を書く時は世界地図と国の地図、舞台となる地方の地図の三種類を用意してました。現実世界が舞台だと、幾つものGoogleマップをブクマするだけで済むので、パソコン以前の時代よりは遥かに楽になりましたよね。


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