第45話 文章の基本は「大・中・小」

 第28話で文章ルールを作るということを書いたと思うんですが、ベーシックと呼べる基本的ルールの他に、独自にですね、作品ごとの特殊ルールをさらに付け加えることで作品のクオリティを向上させることが出来る……はず、なんですね、コレが。


 基本の文章ルール+独自ルールという意味で、28話は語っております。


 基本のルールの方は、中学校で習う国語の教科書とかで勉強するのが早いよと、各先生方も推奨されているんですが、まぁ、本屋へ行けとか言うのも何なんで、参考サイト探しときました。


https://www.kokugobunpou.com/#gsc.tab=0

『国文法をわかりやすく解説-国語の文法』kokugobunpou.com



 基本はここのサイトでお勉強できると思います。


 で、この基本の他に、専門分野における記述のルールという中で超有名なヤツが割とデフォルトで現在の文章界隈では実装されているらしき、という話でして。新聞社のセオリーだったヤツ、と、ものの本には書かれていました。


『記述する際には、大状況から小状況へ、重大なものから重大でないものへ。』


 これを指して覚えやすく「大・中・小」と唱えます。

 リピートアフターミー。はい、大・中・小、大・中・小。


 文章を解りやすくするためには、大きなもの重要なものから言及していき、細々したもの些細な事柄は後回しで告げる、というルールを採用するのがヨロシイということみたいです。こちらわかつき先生がお薦めくださった本多勝一氏の本からです。


 これ、住所とかの記述もそうなってるんで、人間の脳みそ的にも慣れがあって理解しやすい順番ってヤツなんでしょうね。


 なので、例えば風景を描写する時も、ベーシックな考え方としては「全体像をまず記述してから細々したものへ移っていく」という風になるようです。逆順である「ランドマークとなる特徴的な物体をピンポイントで最初に描写する」という手法は、つまり応用編というわけです。


 よくある文章としては、こんなの。


『福井県にある、越前海岸。その先にある1kmに渡り灰色の岩が連なる断崖の壁が、東尋坊だ。日本海の荒い波が眼下の巨大な岩にぶち当たっては砕けていく。』



 まず日本列島地図の県名から始めて、越前という地名、1kmと明確な数字を羅列してます。これ、福井県も越前海岸も、超メジャーなネームバリューでそのまんま何の説明も無しで通用する名詞です。東尋坊も準メジャー。誰でも知ってる土地は説明不要ということですが、誰でも想像がつく場所から始めることであまり知らない場所に言及していく際に誘導を入れやすくなるんですよね。


 なので、たぶんですがこの「大・中・小」のルールはそれを応用した技術ってことじゃないかなと思います。錯覚の利用ですね、知ってる名詞から始めたら、知らない場所でもなんか知ってるような親しみが湧く的な。


 同様のトリックを使って、以下に例文をもうひとつ作っときます。


『英国貴族を思わせるイングリッシュガーデンが密かな目標だった。中古の洋館付き住宅を探すところから始めて、トトロの映画アニメで見たような庭付き和洋折衷の家を見つけるとすぐ賃貸契約をした。赤いスレートの屋根に見合うよう、赤みの強い煉瓦で小径を飾ろうと思う。休日DYIでどれほどの期間を費やすかは解らないが、あの色とりどりの花が四季を通じて咲き続ける英国の庭を目に浮かべると、暗い予測は吹き飛んでしまった。』


 具体的なお庭の様子は一切書いてませんが、なんとなくどんな様子かは想像がつくんじゃないでしょうか。これでもかとキーワードを並べたんで。


 風景描写で、具体的にお庭の様子を書いてもいいんですが、大抵のケースにおいてそういう描写は退屈で読むのがダルいと思うので、ちょっとした工夫は必須と思うんですよね。よくある風物をよくあるような見方で描写すると、よくあるだけに飽き飽きしたという感想が浮かぶもんだと思います。


 で、昨今のWeb小説なんかはテンプレに全体重で寄り掛かっちゃって、読者が飽き飽きするような記述部分はナシでいいやというのがお約束化しまして、舞台セットを使い回しにする代わりに、そういう記述を一切カットするという荒技を編み出したわけじゃないですか。この先どうするつもりなのか期待して見守ってますが。


 似たような風景に似たような国家や体制、これは舞台セットが同じでやってる演目だけ違う演劇みたいなモンですが、そういうものと理解されれば十分通用します。


 でも、それは旧来のラノベや、文学文芸だと当然ダメですし、市販のラインに乗せる出版物としての小説作品だとまだぜんぜん認められてないと思うんですね。描写しないというのは。なのでこの荒技はデビューを目指すなら忘れてください、となってますよ。ええ。「具体的に書け」と言われたらほぼコレのことです。


 似たような設定でも舞台セットはちゃんと作ってね、てコトですよ、つまり。


 なので一般文芸とか恐らく市販を目指すラノベなんかも、描写が出来るコトは必要資格になってると思います。ここで言う描写ってのは、つまり、「よくある風物をよくあるような見方で描写する」、という意味になるわけです。


 まず読みやすい文章の基本は「中学校レベルの国語文法に則っていること」と「記述は大・中・小の順番を守る」というのがベーシックの設定で、要求されているレベルと言えば、当然にそこはクリアしてることが求められてます。


 それプラスなんです、けっこうハイレベルなトコの描写が要求されてます。「よくあるような事物なら書かなくてよろしい、もっと独自のモノを書きなさい。そしてそれを、よくあるような書き方でなく、独自のセンスを光らせて書きなさい。」と言われてます。これが出来てないと選考を突破できないんだろな、と思ってます。



 それでですね、この言葉の後半部分は勉強すればどうにかなるとかの分野じゃないんで、せめて前半部分ですね、ベーシックのデフォルト、建築でいうなら基礎工事ですね、土台となる文法だの記述のセオリー程度はアンチョコが作れるんじゃないかなと思って書いてるわけです。


 なのでコレ、建築物で言ったら「ただの土台」の工法を書いてるだけです。

 あしからず。

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