第29話 クドい、しつこい、読みたくない、の「解説文」

 説明文で書いてはいけない、小説文で書かなくては。と再三書いてきました。読者は説明文を嫌うからです、普通は。矛盾したこと書いてますね、説明文で書かれた小説の方がまだ読みやすい、とどこかでは書いたじゃん、と思われたかと。


 ヘタな小説文よりは説明文の方が読みやすいんですが、その説明文には二種類があるんですよねぇ~。どれも一緒だと私も思っていました、ハイ。


 解りやすい内容を簡単な語句だけで説明したら、文章は読みやすくなるんですよ。いや、よく知ってる簡単な事柄を伝えるだけだったら、説明文で簡単に伝えられるというべきですかねぇ。厳密には「解った気にさせる」だけですケド。


 例題で出したダメ作文をそういう観点でもってもう一度読み返してみたらすぐ解ります。理解しにくい事柄など一切書いてないんですよ、アレ。すぐ意味が取れるような凡庸な事柄しか扱ってないんで、説明文が読みやすく感じるだけなんです。難しいこと何も書いてないからね。(笑


 誰でもすぐ解る、誰でも簡単に想像がつく、経験した覚えがある、どっかで見たコトある……そういう事柄なら苦も無く説明が通るんですよ。



 本来、説明文というのは解りにくい事柄を理解してもらう為に使います。普段見慣れない医療機械だとか警察組織の部署や役割なんかは説明しないと解らないわけですが、それを前提にする事柄を記述するという時には、事前に理解して貰わないといけないんで、しぶしぶでも書くわけですよ。端的に言うと、描写で書くには難易度高すぎるから説明文で書かざるを得ない、というだけです、コレ。


 じゃあ、極力、説明しなきゃいけないようなモノは出さないとするのが正解かと言えば、それは「筆力がない場合の苦肉の策」でしかないわけで、なんとか工夫して書くべきなんですよね。この工夫で割と作品の出来が左右しちゃうんですけど。


 文学でも一般文芸でもラノベでも、前提知識として物語の本題が始まる前に、読者に入れておきたい設定っていうのが度々出てきます。ラノベならテンプレでない異世界とか、一般文芸ならお仕事小説、文学でも特殊事情というのは説明の必要アリなんですよね。


 これが巧く処理出来ないからと言って、お仕事小説を書かないというワケにはいきませんよね。私は持ってませんが、作者さんが現実に働いている職場がちょっと変わった所だったりすると、それは一つの財産なので勿体ない話と思います。


 警察、医療、軍事、政治、この四つは市場に沢山作品があるんで少しは解説義務が軽減されるものかと思いますが、反面、本当に詳しく知っていないとヘタに手を出せないジャンルですよね。適当なコトを書いても減点されるだけなので。関係資料を大量に読んで隙を無くすか、直接には関係しないトコのジャンルに落とし込むか。


 取材や勉強をして、しっかり下準備が出来たとしても、まだまだハードルは高いです。説明文の中でも一二を争う、読者に読んでもらえない文章「解説文」にならないよう、あるいは極限まで解説を軽減する工夫を考えるなど、対策を練らなきゃいけないからです。その為のアイデアが別個に必要ってくらいにはこういう事柄の告知は大変なんですよね。


 なんで読者さんって解説文嫌いなんでしょうねぇ……(楽しいのに)


 説明文と解説文は、私個人の考えですが違います。違うモノだと思います。違うからこそ名称が違うワケです、きっとそう。


 説明文も解説文も、どちらも読者に対象物を解らせようとする文章です。ただ、説明文は比較的簡単な事柄に対して使う言葉であり、解説はどちらかと言えば複雑な内容を紐解いて理解させる時に使う言葉であるように思うんですね。そして、簡単な事柄を説明するなら多少は正確性を犠牲に比喩などに落とし込んでもイケそうですが、元から複雑な事柄を解説する時は、正確性を揺るがせには出来ない、と。そういう差が両者には生じるような気がするんです。解説はクドくなるし、しつこい、と。


 だから単純に、複雑な内容を理解するのは難しいから聞きたくない、という心理的抑圧から読むのを避けられるんじゃないかな、と。


 特殊な世界観とか業務内容を理解してもらおうと思ったら、使う文章はたぶん「解説文」になりがちかなと。クドいし、しつこい。読みたくない、の三重苦だけど。だけど前提知識として必要なので理解して頂かないと、ということなら文章に工夫は要ります、と。


 有り難いことに今どきの読者はちゃんと描写文を読んでくれるので、昔のWeb環境に比べれば格段に書きやすくなったと思うんですよ、濃密描写が使えますから。かつてはスカスカじゃないと読んで貰えなかったのですが、今は表現の幅が広がりましたんで、なんとかなるようになりましたね!



 濃密描写が使えるなら、たいがいのことは何とかなります! もう、ギリギリ、これ以上は描写で伝えるのムリ、までは描写にして、ギブアップな部分だけを解説文で書くというようにすれば、ずいぶん軽減できるかと思います。(笑

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