第31話 未成年と成人の違い

 新橋のお父さんという想定読者は、ファンタジーも未成年ヒロインも受け付けないという話の続きなんですけど、じゃあ、未成年と成人でどんな違いがあるのか考えてみたいと思います。


 これ、たぶんだけど「小説文で書かれた作品しか取らないよ、」と同じリクツだろうなぁと思います。未成年ヒロインはウケが悪いとか、照れの方が先に来るとか。


 そもそも若いヒロインが目当てで読む層は直球で漫画やラノベに行きません? ファンタジーにしてもわざわざ一般文芸で異世界とか扱う必要ないですよね、専門とも言えるラノベレーベル山ほどあるのに。だから差別化というのもかなり入ってるだろうなという気がします。


 文学や文芸系って、その想定読者が何を目的に読むかってのも、大まかに決まってる感じあるじゃないですか。「人間を書く」とかいうアレでしょう。


 だったら、人間的幅の狭い未成年よりも色々経験値貯めた成人の方が扱いやすいと思うんですよね、悩みの幅がすなわちテーマの幅という感じで。


 新橋のお父さんという想定読者はファンタジーも乳臭いヒロインも受け付けないけど、丸の内のバリキャリ女子さんという想定読者になれば、もちろん想定されるNGワードが変わるわけですよね。



 未成年ってのは、せいぜいバイト経験とあとは学校生活と、付属としての家族関係しか描けないわけですよ。現実的舞台においては。家庭を中心的に切り回すような描写はワケあり家庭になってしまう。そういうテーマなら出せますけど。


 成人になれば未成年と違ってフリーパスです。逆を言えば、未成年というのを動かすのは、かなり制約が厳しい、と捉えた方がいいんじゃないかなと思います。


 その制約の一つであり、重い枷になるのが「なぜ未成年でないといけないのか?」という理由付けだろうなぁと。成人向けの小説に成人ヒロインが出るのはこれは当たり前なのでそこに理由など要らなさそうですが、未成年となると、文学文芸なら理由が必要だと思います。成人女性で支障が無いなら成人女性にするべきでしょう。フォーマットは成人向けの小説用なのだから、主役もヒロインも成人なのが無難と考えるべきですから。少年漫画の主要キャラは未成年が望ましい、というのと同じリクツ。


 それに、昨今の世論を鑑みれば、成人主人公が未成年ヒロインとセットというのはどうも描きにくいと思います。ロリコンですか。この主人公、どういう心境でこのヒロインと接するんですか。めちゃくちゃ書きにくくないですか?(笑


 成人同士なら阿吽で済むような共通認識も、片方が未成年というだけでそこに共通認識はなかなか見いだせるもんじゃないと思いますし。ジェネレーションギャップをいちいち書くのは面倒臭そうです、それがテーマにあるならまだしも……


 ラノベならそこまで細かい設定を詰めなくてもなんか雰囲気で押し通せそうなんですけど、文学や文芸はそういうリアリティにはものすごく煩いじゃないですか。(笑


 異世界にシャワーがあるのは違和感ゴリゴリだ、とかの騒動を思い出します。あの感覚って文学文芸なら当たり前のように求められると思うんですよね。だからアラ探しとバグ潰しの作業が途方も無くなるから、ファンタジーとも相性悪そうだなと感じる次第です。


 カテゴリが違う、で片付くんでそういうの気にするのが面倒なら素直にラノベで書くのが正解と思うんですよね、細かいことチクチク言われるの嫌だったら。




 最初に文学と文芸のカテゴリがあって、そこからはみ出す要請でラノベが生まれたわけなんで、そっちでやればいいことをこっちに侵略してまでやろうとしないでほしい、という苦言はたまーに聞こえてくるので注意したいもんです。

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