第26話 浮かんだストーリーを「最適化」してますか?

 書き始める前に必要なモノは、まず「状況・人物・事件」と「テーマ」と「文章ルール」だと思います。これに順番を付けるなら、やはりいの一番は「人物」でしょう。発想の取っかかりになりますよね。経歴を考えるうちにそのキャラの人生の中からテーマや事件も見つかったりします。物語のタネを練る方法としては、他に換骨奪胎という手法があることも紹介しました。


 プロになると編集者さんが、「次はコレやりましょう!」とか言ってくださるそうですが、ほぼコレに相当すると思います。ゼロから発想するのは至難ですので、お題をくださるのは実はありがたい話のはずです。結果、起点である「コレ」から大きく外れたとしても、提出してみたらいいと思うんですね、どうせ編集者さんも発想の起点として言っただけだと思うんで。とらたぬ話ですが。


 お題の「コレ」を人生に持っているキャラの履歴書を書けばいいわけです。そこから想像を膨らませていくうちに、書きたいストーリーが浮かべば、コレが入ってなくたって元々の目標である「ストーリーを思いつく」は達成されてますからねぇ。


 鈴木先生もYouTube動画で、「ノルマから逃げたくて生まれてくる発想の方が総じて出来がいいんだよね、」と仰ってましたし。まぁ、デビューした人の話を私がしたところで、て話ですけど。


「状況・人物・事件」を何とか作ったら、そのまま「テーマ」も仮決めしちゃいましょう。細かいプロットを組んでいるうちに相応しいテーマも見つかります。


 そうするとストーリーが順調にカタチになっていくはずなんですけども、プロットですね、どの場面をどうお出しするかという計画を練る段になって問題が発生することがあります。脳内で大まかなトコ作ってしまう人ほど陥る罠です。


 どういう媒体で脳内作業していたかが問題になってきたりします。



 私は物語を考える時、映像化されて脳内再生されます。これって人それぞれで、中には文字列が並ぶという人もいるらしいです。まったく想像が付かないですが。


 私はアニメの時と実写映画の時とがありますが、こういう視覚媒体のメディアで脳内に構築されてしまう人は特に注意が必要なんです。「ローカライズ」の作業が余分にあるからです。ひと手間増えるんです。


 執筆時というのは、脳内に浮かんだ場面を文章にして書き下ろしているわけなんですが、これを何も考えず、思いつくままで書いてしまってたんですよね、以前の私は。それがいけなかった。ローカライズはただ映像メディアを文章メディアに変えればいいってモンじゃなかったんです。


「最適化」をしないといけない。


 アニメや実写という「視覚媒体」を小説という「別の媒体」に最適化するということが執筆過程には存在しています。二つは基本的に、特性が違う別の手法なので共通点は少ないです。だから、一旦「バラバラにしないといけない」わけです。今までこのエッセイでしつこく書いてきた「物語内容」と「物語言説」です。頭に浮かんだ映像作品は、別の解釈をされねばならない。分解して論理構成を変えねばならないということです。


 ここを区別しないでごっちゃにしたまま書き出すと、構成という部分の評価が低い作品になるということだと思います。改稿の手間が嫌ほど掛かるのも、分解しないで無理やり別媒体に押し込んだ弊害だったってワケです。


 例えば、漫画なら視覚媒体ですので一コマの中に「人物の容姿」「特徴」「動作」「位置関係」「風景」「場所」「季節」「時間」と、非常に多くの情報を一度に提示出来ます。これをどの順に脳みそへ入れるかは読者の好みに委ねられ、しかも同時に提示されて、一瞬で理解されます。ノーストレスです。


 先にも書きましたが、映像作品でよく使われる手法に「パノラマ展開の風景」を映して、場面転換で人物を写すというものがありますが、これも視聴者はノーストレスなんです。情報は一瞬しか流れません。漫画でも一コマ、せいぜい見開き1ページくらいでしょう。どんなに細かに描かれていようが、読者はパッと数秒目に入れるだけでページを捲れるわけです。よくあるテンプレ異世界ならなおさらで、ほとんど目に留めずに飛ばし読みしてしまえます。それでいてテンプレ異世界だという設定は伝わります。ノーストレスです。


 これが、文章媒体だと不可能なんです。なのに、ちょいちょいやってしまうんですよね。視覚媒体だと常套手段だから、文章でも同じと勘違いするわけですよ。私もそうでした。とんでもない!


 映像または画像で解釈したものを、文章に解釈し直すということです。浮かんだ通り順番に文章にしていけばいい、という話じゃなかったんですよね。その画像を一枚ずつ解釈し直さないといけないってことなんです。その事実に気付いたのはつい最近のことですよ。トホホです。

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