第22話 「落とす」と断言される小説があるらしい…

 事前準備編ということで、非常に大事な注意喚起をしておきます。


 下読み経験者の方が仰ってたんですが、公募とかの一次選考で「まず落とす」と断言する作品タイプというのがあるそうです。作品というより、こういう文章で書いてあったら落とす、と仰ってました。


 それは、「説明でストーリーを進めている作品」です。


 これ、本当にアマチュアだとよく見かけるんです。読めばすぐ解ります。一度だけですがご本人に伝えてしまい激怒されたこともありました。皆に褒められている作品だったのでイチャモンを付けに来たと思われたんでしょう。


 セリフで、地の文で、ストーリーの進行をすべて説明してしまう書き手さんってかなり見受けます。しかも、読者がたくさん付いてます。困ったことに。


 誰が何をしてどうなったか、スジは確かにサクサク進むし、好まれています。読みやすい文章だと勘違いして絶賛されているのを見たこともあります。読者は何が起きたのかが知りたくて読んでいるので、それをあっさりと教えてもらえるなら楽でいいんですよね。私は勝手に命名して「ダイジェスト文体」と呼んで危険視してます。


 でも、これは一般文芸とか文学のモノサシで言うと、「小説の文章ではない」になって一発アウトらしいです。


 なるほどそういうことだったのか、という理解を貰う方法って二つあって、一つは読者さんに自分で考えてもらって答えを見つけてもらって、「ああ、なるほどそういうことだったのか、」というヤツで、もう一つが一から十まで解説で書かれてあっての「ああ、なるほどそういうことだったのか、」となるヤツなんです。


 これの、下のタイプはいわゆる「小説になっていない」という評価だそうです。


 この文体というのがまた、なかなか書けなくて取りあげられなかったんですよね、今まで書いてきた講座系のエッセイで。ちょいちょい書いてしまうのに、なぜか必要な時には書けないって感じで。



 だいたいの目安ですが、一人の登場人物を読者にしっかり印象付けようと思ったら、集中してその人物に関しての記述だけでまず5000文字連ねないと、読者は脳裏に置いてくれません。経験則。だいたい5000文字、そのくらいの分量が要ると思います。一人称はこれを地の文でやれてしまうんで、読者が入りやすいって言われるんだと思いますね。


 で、このダイジェスト文体ですが、こないだ書いたチャレンジ2000文字掌編で、偶然、初稿がその形式を取ったんで発表できる運びとなりました。


 なかなか説明しても解ってもらえないんですよ、この文体。ちょうど良く見本になりそうな作品が書けたんで、出してみたいと思います。

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