第17話 人称の「難儀やのぉ……」マトメ
人称の選択にまつわる問題点をつらつらと書き記してきました。
一人称だと「主人公の精神性がブレブレになるから細かい描写が出来ない」
三人称だと「地の文に人格が滲んで”誰やねん?”になりやすい」
この問題はどうしても付いて回るもので、それゆえにそれぞれの人称で書く際には問題点をカバーするための工夫が必須になるわけですね。気になる人は、という嫌な常套句が付いてきますが。
気にならない作者さんは別に気にしなくていいわけで、読者の多くも気にしてないこの問題。まことに厄介なワケなんです。というか、「因果よのぉ……」て感じです。
でも気になるモンは気になるんだから仕方ないじゃないか、と開き直りまして、次の章では打開策についてツラツラと考えていきたいと思います。
追加記事:
マトメなのでついでに入れておきます。
<現在進行形の一人称>
暑い。蜃気楼が見えるんじゃねーかと思うほど暑い。目の前のアスファルトが実はチョコレートみたいに溶けてて、この日陰から一歩踏み出した途端にねちょっと靴裏に張り付くんじゃねーかと心配になるくらい暑い。大地に突き刺さる陽光も眩しい。真新しいアスファルトだけ黒抜きで、他の一切合切は輪郭が飛んで真っ白だ。なんも見えねぇ。
<過去形回想録での一人称>
暑い日だったよ。蜃気楼が見えるんじゃねーかと思うほど暑かったね。目の前のアスファルトが溶けて靴の裏にくっつくんじゃないかと思うくらい暑い日だった。日陰の中から見た景色は白飛びして、ちょうどその頃に敷き直されたアスファルトだけは黒々とぬめってたな。他は強い陽射しで真っ白になってたから、何があるのか解らなくって、目を細めたり手でひさしを作ってみたりしてた。
<現在進行形の三人称>
照りつける強烈な陽射しに景色は真っ白に染まっていた。彼は日陰から出ることを躊躇している様子だ。道路を前に試すすがめつ、猛暑日の殺人的な外気温を気に掛けている。
<過去形回想録での三人称>
暑い日だった。照りつける強烈な陽射しに景色は真っ白に染まっていた。彼は日陰から出ることを躊躇している様子だった。道路を前に試すすがめつ、猛暑日の殺人的な外気温を気に掛けていた。
三人称は他人が眺めている体裁なので、この他人は彼の心境と無関係に視線を飛ばすことが出来るので、描写を何から始めようが自由です。一人称は心境とリンクするので、現在進行形だと視線の自由度がほぼ無くて、時間経過と思考とが絡まりながら視線は動いていきます。その動きに沿った描写しか出来ません。
……と、なるはずです。
それから、一人称の人格が明確に現れているほど、過去形の一人称は過去語りである時の言葉遣いもまた明確に現れなければ変です。
現在進行形での一人称は独り言を拾っているようなもので会話ではないので、相手が居ません。なので説明や解説の文章が出るのは違和感です。そういう意識で読むと、例示で出した現在進行形一人称は最初から最後まで違和感満載です。
これが「お前誰やねん」問題なんですよね。どんな書き方をしようが綻びが感じられてしまう……
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