第16話 お喋りを止められない「心の声」問題

 三人称の地の文に見かける「お前誰やねん?」という違和感は、一人称にしてしまえば主人公だということで消し去ってしまえます。


 ところが今度は、主人公が奇人変人っぽくなってしまう問題が出てきます。




 緊迫の状況だろうが戦闘の最中だろうが、この主人公ときたら暢気に相手の服装だの技の解説だの、挙げ句の果てにはお天気の具合なんかを脳裏に浮かべる始末。書いていて「なんなんだこの主人公、」となってしまった覚えはありませんか?


 クールキャラを気取ってはいるものの、内心は大はしゃぎで到着した街の隅々までをベラベラと喋りたおす。あるいは女子キャラを見たら3サイズにすぐ目が行ってしまいバストの形状から大きさから尻のカタチまで言及せずにはいられない……


 それをまた、女子キャラに出会うたんびに繰り返す。どんだけ好色なんだ、と思ってしまって萎える……そんな経験をした覚えはないですか。クールキャラのつもりで設定しているのに、地の文が「私=主人公」であるせいで、ベラベラベラベラ喋り通しで、これのどこがクールやねん、と。


 仕方なく、私の場合はこの主人公をおしなべて「お調子者」に設定することで妥協しています。エロオヤジみたいな視線もお調子者なら嫌悪感を軽減できるので。あるいは女子です。女性は心がお喋りでも私的にはまだ納得できます。




 しかし、お調子者だからと言い訳をしてもまだ、やはりジットリネットリとエロオヤジみたいに女子キャラの頭の先からつま先までを描写するのには抵抗があります。


 緊迫の会話をしている場面で部屋の様子に言及しだすと、どこを見てんだと思って苛立ちます。真面目に聞く気のない不真面目さに映るんです。


 地の文に書かれるその細かい言及は主人公の思考そのものであるのが一人称だからです。この問題、他の作者さんはどう考えているんだろうと思って他者作品を読んだりするんですが、気にしているのかどうかは解りません。


 他の作品を読んでも、私は地の文の「私=主人公」を、どんなタイプだろうが肯定的に見てしまって、と思って納得してしまうせいです。


 他の人は正真正銘の、寡黙な、明鏡止水の精神性を持つようなタイプの主人公って、どうやって書いてるんでしょうかね……


 古い漫画ですが、北斗の拳のケンシロウみたいなタイプは寡黙であり、思考もブレが無さそうであり、ああいうタイプを一人称で書くことが難しいという話をしてるんですけど。


 でも私は男主人公ならああいうタイプを推したいのですね。(笑



 なので必然、私が書く一人称は各種の描写が三人称に比べるととても少ない傾向にあります。描写したくても描写できないんです。主人公が「お喋り浮かれポンチ」になる気がして。そんな風に感じる書き手も、あんまりいないんでしょうけど。




 

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