第11話 作品構造のリクツ

 何にもないゼロベースから小説一本を仕上げていく行程を考えてみます。


 前のページで、文学やミステリーなど全体図を考えて書くことが必須の作品と、テンプレ利用など割とライブ感覚で書けてしまうものとがあるじゃないかと考えていた、という話を書きました。


 連載など考えると、どうしたって全体の設計図を用意出来ないケースがあると思ってしまうじゃないですか。けれど、そもそもで順序が逆だったんですよね、これ。連載作品ということは、大長編ですよ。そんな大きな作品を書くよりも先に、掌編から始めて短編、中編と徐々に行くのがセオリーだってことですよ。なので当然、設計図付きを最初にマスターするのは正道というワケです。


 プラモデルを考えれば納得します、初心者は設計図と見比べながら作るもんです。モデラーとかの慣れきった猛者になってからですもん、設計図見なくても作れて、ジオラマなんかのデカい作品作り出すのって。


 初心者に毛が生えた程度のくせにおこがましかったなぁ、と反省したわけです。ちゃんとセオリー通りにやる練習もしてないんだから、構造がデタラメな作品を作ってしまうのは当然だ、というワケです。


 やってきてないことは出来ないのが当たり前、ということで作品構造をマスターするなら設計図付きの作品を何度か書かねば無理だ、という至極当たり前なリクツに到達したんです。


 で、作品構造とはなんぞや?と、元の地点に戻ったんですよね。


 よく解らんなりに適当にネットを漁りました。「物語を構成する3要素」なる語句がヒットしました。釣り上げます。


「背景・人物・事件」→「どんな時・所を設定しようか、どんな人物を設定しようか、どんな事件を起こそうか」という、作者が発想を呼ぶ為のキーワードがある。


 これ、設計図を書けと言われるお話の中でも出てくる言葉です。「状況」「人物」「事件」ですよね。確かに物語を作る時の「起点」です。元素みたいなモンと捉えたらいいんじゃないですかね、これ。組み合わせ次第で出来上がる物質の性質が変わる、と。あるいは錬金術の装置でしょう。材料を入れる箇所が三つあって、それぞれに何か投入したら何か出る、と。


 作品構造というのは、この「状況」「人物」「事件」の相関図になると思います。


 作品を相関図として表記したものが、そのまま作品構造を示しています。物語内容と物語言説に分けるらしいという話も前にしましたが、相関図に書かれる事柄は物語内容の各要素で、そこに物語言説の解釈という矢印的な注釈が置かれている状況だと思います。


「桃太郎」はどうなるかと言えば、物語内容は「桃太郎」「鬼ヶ島」「猿・犬・雉」「財宝」でしょう。それが物語言説の矢印で結びつけられ、「桃から生まれたから桃太郎、鬼ヶ島に鬼退治、猿犬雉をお供に、財宝を奪い返した」になったわけです。


 なので、同じ物語内容を使ってかの有名な「裏桃太郎」が出来上がります。「鬼ヶ島の鬼は悪くなかった、なのに桃太郎とお供に、財宝を奪われた」になります。


 この矢印を複雑化することで、ドンデン返しや二重の意図、隠した真相と言ったトリッキーなことも出来ますが、それらは行き当たりばったりで作るのは至難と思います。設計図必須、というヤツは野放図に作ったヤツより必然でグレードが上がりやすいとも言えるかと。





「しっかりした設計図に従った作品」「野放図に建て増した作品」ではおのずと出来映えが変わってきます。ただ、大人気な創作者のうちには、設計図など作らず思いつくままに書いているよと豪語する人も確かにいます。そういう人というのは恐らくですが、無意識に設計図を組む天賦の才があるか、驚異的な辻褄合わせのチート能力を持ち合わせているか、そのどっちかであると睨んでいます。

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