第6話 現在進行形の地の文は、制限だらけ

 まず、例題として提示した作文の、現在進行形のヤツですが… 実はアレ、ぜんぜんダメダメなヤツなんです、なんかもうスンマセン。ヘタクソすぎて。あれでも唸りながら書いたんです。スンマセン。(ちょこっと改稿してみましたが、やっぱりヘタクソなままです、orz)


 現在進行形の地の文は、ライブ感が大事なんです。ライブ感だ!というのが私が到達した答えだったんですが、おそらくモデルにしていたものが漫画や映画などの視覚メディアの絵面だったせいで間違えてしまったんだと思います。


 視覚メディアというものは、一部例外を除けばほぼ全てが「三人称」です。


 視覚表現における一人称というものがどういう絵面になるかは、Minecraftの一人称視点を使えば一目瞭然です。非常に視野が狭く、完全に目の前しか見えません。黒いブロック二つ積めば視界は真っ黒、それが視覚情報における一人称の正解。なのでほとんどの視覚メディアは三人称です。これだけは絶対譲れません。一人称は自分の姿が映りません。絶対に。一度でも「自分」が画面に映ったならそれは三人称です。


 ある書き方本には、「視覚は同時に広範囲の情報をもたらす。山を見ればどのような木が分布し、どう繁茂して、どういう形状の影が落ちているかが、。それを文章として書く順番を付ければそれだけで、見たままではなくなる。」とありました。現在進行形でも同じ矛盾点に突き当たるはずです。


 横道に逸れたので一人称の問題に戻ります。


 では、文章でMinecraft一人称を表現したらどうなると思いますか? 非常に狭い視野というのは、要するに視線の先しか情報が来ないということを示しているんですよね。太陽がどの位置にあるかは視線を向けないと解らない、どんな景色かは見回さないと解らない、なんかダメージ受けていても振り返らないと「何が起きたかすら」解らない、というのが一人称のライブですよ、ええ。


 振り返るという動作を経て初めて、ひょっこりはーん、で骨がこっち狙ってるのを見つけるわけです。そして慌てて横移動したら、視界が真っ赤に染まってHPがガンガン減って『まめ太は溶岩ダイブして死亡しました』とかの文字が目の前に出てくるわけです。足元にあった穴なんか、スタート地点に戻された後ですら認知するのが難しいです。石の床の下に溶岩があるという地形を移動中、一カ所だけ穴が開いていたというのが答えですが、一人称だと地面を見てない限りこの情報は来ないんです。足元が土ではないということさえ、「私」の意識になければ書けません。


 見晴らしの良い場所は見晴らし良く、そうでない場所はそれなりに。けれどライブ感、臨場感は一人称カメラ使いだしたら他が使えませんわ。


 これが一人称を現在進行形でライブ感たっぷりに操ろうとすると出てくる問題なんです。思考しない限り視線はそこへ向かわない、事前に読者に伝えておきたいからと言って前説が出来ないんです。


 思考した順番にしか文章には出来ない、これもとても大きな難点です。事前説明しておきたい事柄があっても、視線が向かう必然性と時制が優先。なので場所を示す単語のひとつさえ文中には置けません。その単語をライブ感覚で「私」が思い浮かべない限り。


 これがさらに悪化すると、なぜ自分の一挙手一投足を自分で解説してるんだろう、という疑問が浮かんできます。ライブなのに。事件の真っ只中なのに。と。そんな余裕があるのは不自然です。


” 私は声のする方向へと振り返った。”


 こんなことをいちいち考えて行動してるヤツがおるかい。と。

 ほぼ無意識とか条件反射とか、あるいは意識などしないであろう事柄が書けなくなっていきます。ライブなので!


” 私は声のする方向へと振り返った。”


 それは誰に向かっての報告ですか? 結局はここへ戻ってしまうんです。


” 私は声のする方向へと振り返った。”


 これ、客観視点の三人称じゃないですか。

 私の動作を視認している私はどこから見ているどこの誰ですか?


 こんなことをいちいち細かく気に掛けてしまうのが悪いのかも知れませんが、真剣に書いているからこそ、細かいところが気になって無視できなくなるんです。

 


 


 現在進行形は、その時その時、地の文も同じ時間軸で、思考が浮かんだ順番でしか文章を綴れない。自分の動作を視認しているような文章はどう考えたって違和感の塊だとしか思えない。リアルタイムのライブ状態だからこそ。



 では次に、また作文してみたいと思います。今度は、どうしても現在進行形のライブ感覚で書きたくなるタイプの「私」を使います。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る