第23話 魔術修練

早朝、本格的な修行を始める為…

王都を離れ、再びフェアル森林へ赴く

事となった。


一週間…滞在予定だった宿について、管理人

と話しをつけチェックアウトを済ませる。



ユウカ「眠い…Zzz…」


拓海「ごめんなユウカ…朝早くに」


ユウカ「ぬし…おんぶ…」



シオン「行きましょう」



拓海「よっこいしょ…っと…なぁシオン…

こんなに早くなくてもいいんじゃない?」



シオン「人に害を及ぼすとも限らないし、

急ぐに越したことはないでしょ?」



拓海「……まぁ…そうね…」



「…………」



「シオン…雑談というか…聞きたいことが

あるんだけど、獣と特殊な魔物…どうすれば

倒せる?」



シオン「その呼び方…面倒じゃない?

クロネはミラと眷属に中る魔物をMonoと

呼んでたけど…」



拓海「ミラとモノね…そのミラとモノに

対する対抗手段が何も浮かばないし、

何が効くのか分からないんだけど…」



シオン「ミラに関してはもう、その場その時でどうにかして…としか言えない。」


「モノについては…そうね…先ずは

全魔術を習得してからにしましょう」



拓海「それもそうだね…」


全ての魔術を扱う…か、

最低条件って感じがするな…

土俵にすらまだ上がれていない訳だし…

この身がするには、まだ早い話しだったか…。


拓海「でもやっぱり気になるなー…

二人がどういう対処を取るのかも気になるし」




シオン「……」

「………、私の出番は…無いと思う…。」



拓海「そうなの?」



シオン「私は枠に収まる事しか出来ないから」



シオン「カサリズマが処理しきれなかった

相手…その眷属が劣るものだとしても、

私達も格下な訳だし…相手に

なるかどうか…」



拓海「過小評価じゃないの?」



シオン「期待でしかないの…因子を持つ

魔物が本体より劣ってるって」



「もしもMonoがミラと同格のものとして在る

なら…私は手を出せない」


「例え本体に劣るとしても…

最小限のリスク且つ最大値を出し…それが

星外のソレに有効である手段を、

私は知らない。」



拓海「そっか…勝つこと自体は難しい

話しじゃないもんね、生命の生存を考慮しな

いなら」



記録を司る…、記録にある物であれば

再現可…無ければ…最大値を超える事は不可。


この事を上手く解釈して、今の会話を

整理すると、シオンは かさりんと

同じ出力を再現する事は可能…。


ただそれだと…結果は同じになり…

被害を抑える戦いでは無くなる。


勝負に勝って試合にも勝つ方法を

シオンは知らない…、だからシオン

相手にならない…。


頑なに「私は…」と言うのは

クロネには空想具があり、星の理に収まる

シオンとは違い地球ほし

限界を超える可能性を持ち合わせているから。



拓海「相手になるかどうかは…モノの

下位互換さ次第って感じかー…」



シオン「そうなるわね…得られる記録情報が少ないから、弱点を看破する事も

出来ないし…余程の弱さじゃない限り、

クロネに任せきりね」



拓海「うーん…、なら星使者の能力は?

「命路」とか「理死」なら勝機ありそう…」



シオン「効果が適応されるなら…確かに

私が出来る唯一の対抗手段ね…。」



「どうなんだろう…星使者の能力は

規格外だけど一応、規格に沿っては

要るから…」


「ミラが宇宙の理を外れた何かだった場合は

無意味ね」



拓海「規格外だけど…規格に沿う?」



シオン「無法のように見える能力も

宇宙の法則を無視できない…無視しきれない

原理になってるって事。」



「命路や理死なんかは特にそう。

内的情報と外的情報が正確でないと使用

出来ないから…対象のほとんどは

地球内で生じたものに限られる…」



拓海「ふーむぅ…なるほど…」


要は辻褄合わせだ。

どれだけ矛盾が生じようとも…

‪結果に見合う過程を星が用意する。

ただし、それは正確で充分な記録がある場合に

限り…星の内側で完結しない

異星の来訪者or理から外れたものに対して

効果は見込めない…らしい。




シオン「私達 地球もこの広い宇宙うみに揺蕩う数多の星の一つに過ぎないでしょ?」



「知らないこと…不思議に思う事は

無数にあるけど…アレは本当に奇っ怪」



「私達が宇宙の中で小さいだけなのか…

アレが宇宙の理を外れているのか…、

どちらにせよ…恐怖でしかないわ」



拓海「……倒し方と…ミラの実態については

一回置いとくとして…」


「Mono、因子のある魔物の特徴を知りたい」



シオン「Monoは全部で四体…、

一匹は‪”‬赤い瞳と猛毒を持つ水蛇‪”…‬」


「一匹は‪”‬教養を強要する黒き猫‪”‬…」



「一羽は‪”‬不運を撒き散らす黒鳩‪”‬…」


「一羽は‪”‬嘘と言ノ葉を使う白烏」



拓海「うわぁ…響きがどれも穏やかじゃない」



シオン「まだまだ…既に判明してる事だけでも

絶望感…半端ないわよ」



その後、Kー因子を持つMonoの、

現段階で判明してる性質を聞いて

絶望すると同時に…確実に魂の在り方に

近づけるだろうという安心感を抱いた。


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早朝から昼過ぎにかけ、半日の殆どを

休む間もなく歩き続け…再びコリウとヨミ村の

境である関所へと辿り着いていた。


色濃い二日間を経たせいか、

国を隔てる関所の門に、どこか懐かしさを

覚えてしまう。


門番「おや…貴方達は…」


シオン「ご苦労さま…門を開けて欲しい

のだけど?」


門番「これはこれは…こちら(フェアル森林)に

入り用で?」


シオン「えぇ…隊の人間と村長にも報告…

するんでしょ?」


門番「はい、少々時間を頂きます」


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シオン「こんにちは、村長さん」


村長「お早いお戻りですね…」


「相変わらず冒険者と言うのは

多忙なようで…、」


シオン「村長…魔物の様子はどうです?」


村長「おかげさまで…十分な…とは

まだ言えませんが、日に日に魔物も動物も

元居る森へと帰ってきているようで…」


シオン「そう…良かったわ」



村長「今回はどう言った要件で…?」



シオン「森の生態の調査と魔術の研鑽を…と」



村長「それはそれは…ご苦労様です」


「言い分からするに、野外での魔術の修練を

なさるおつもりですね?」


シオン「えぇ…そうね」


村長「でしたら、宿の方をお使い下さい」


「食料の確保については個人的にお願いする事になりますが……それでも良ければ、」



拓海「あ、ありがたく使わせて貰います」



シオン「助かるわ、村長さん。

それじゃぁ……さようなら」



拓海「………」


-----------------------------


ユウカ「わはぁ…戻ってきたー」


村長との会話を済ませ…

魔術の習得と鍛錬をする為に、

白紙化現象が起きた場所…初めてユウカと

出会った場所へと赴いた。


村から程よく距離があり、木々の少ない

開けた場所となっている為、

周りを気にせず修行する事が出来る。



シオン「さぁ始めましょう?」


「地球の生態が侵され尽くされる前に、

速いとこ身につけて欲しいんですけど」


ユウカ「主、頑張れ」



拓海「シオン…何か…協力して…?」



シオン「何かって…なによ?」



拓海「なんか…習得のコツ…的なやつ…」



シオン「無い。自力でやって」



拓海「まぁ…そうですよね」



シオン「でも…まぁ…実戦を想定して

やるのは修練の基本よね……」


「よし…手伝うわ、容赦なく殺すから

魔術の会得はご自分で」



拓海「……おっけー…準備運動だけさせて」


実戦での魔術の使用…。

とりあえずは水の魔術から……、


先ずは推進力の強化。

足元を濡らす事による滑走…、そして

瞬間的な速度や跳躍力を手に入れる。

イメージとしてはフライトボートのそれ。


そしてもう一つ、飛び道具の開発。

必殺技とも言えるような遠距離から攻撃手段

が欲しい。

大量の水を噴射し、その水圧を攻撃として

使う。イメージは高圧洗浄機…だろうか。



そしてそれを…意識的にではなく、

瞬間的に反射して使えるよう…無意識下にまで

もっていく。

特に戦闘状態…脳や神経を研ぎ澄まし、

あらゆる所にリソースが割かれる中でも

最短最速を出せるようこの実戦で身につける。


「よし…」



シオン「それじゃ、沢山死んで…沢山強く

なってね」



こうして、それは厳しく辛い、痛い…

限りない命を犠牲にした修行が始まった。

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