第17話 萌え恥な謝罪

その日、私は素晴らしいモノを見た。

こんな体験が出来るなんて…やはり萌えは

世界を幸せにする。


考えてみてほしい…厳格でどこか抜けている、

真面目委員長キャラが…日本で萌えのジャンル

として確立されたあのメイド服を着ていると。



何故メイド服なのか?

もちろん、他にも選択肢はあったのだろう。

セーラー服、バニー、スク水…エッチな

話しでは無い浪漫の話しだ。




星使者は星に仕える者、

メイドもまた給仕や家事をする使用人で

仕える者、シオンが着るに相応しい。


そしてメイドには美味しくなれる

魔法の言葉が存在する。

あの言葉に加え、醜態を晒す言葉を

付け加えれば…シオンの頬を紅く染められる

だろう。


クロネ「さて、今からメイド服を縫うの

だけど…自力で手縫い…とはいかないので…」


拓海「ので…?」


クロネ「チャチャチャ〜ン。」


「この錬成機を使います」


拓海「錬成機〜?まさか!?」



クロネ「材料、手順…結果。全て正確に情報を入れる事で即興作成を可能にします」



拓海「わぁ〜凄〜い。そんな物持ってるんだ」



クロネ「こういう夢の世界の産物を使用できるのが記憶体の強みね」



拓海「こっちがホントのひみつ道具使い」



クロネ「実は昨日の転移も輪廻界変じゃなくて夢の産物を使ったの」



拓海「へぇ〜デメリットとか無いの?」



クロネ「大ありよ…夢って基本、設定が曖昧でデタラメでしょ?」



拓海「あー不思議な組み合わせで遊んでたり、二次元と三次元が混同してたり、展開が

むちゃくちゃだったり…ね」



クロネ「そう…、そのデタラメを現実使用に

持っていこうとすると、代償が大きいのよ」



拓海「あー、例えば?」



クロネ「この錬成機は本当に正確じゃないと

使えないから、使用者が限られる」


「転移装置は粒子を分解して再構築する

仕組みだから、かなりの確率で即死か肉体が

バラバラのまま跳ばされる…ね?」



拓海「確かに代償がデカすぎる」



クロネ「後は魔術とかもそうね…貴方に

使った治癒魔術は痛みを感じる代わりに

完全治癒ができる」



拓海「あー、やっぱあの魔術もそうだったか……」


治癒力の活性化、辺りを想像してたが、完全な

治癒蘇生となると確かにデタラメではある。


クロネ「という訳でそんな空想具を使って

服を作る訳だけど…肝心なことが…」



そうだ…問題は作る速さなどではなく、

どういった装いにするのか。


拓海「和装メイドが良いです」



クロネ「なら普通の着物とエプロンドレスに

しましょうか」


「ちなみにフレンチメイドは無くていいの?」


拓海「フレンチメイドとは?」



クロネ「簡単に言えば露出のあるメイド服」



拓海「おー…うーん、欲しい。けどパターン

変えてまで見たいと思わないな…」



クロネ「ニーハイ、太もも…」



拓海「両方お願いします…」



クロネ「シオンに着せるのは…大きくなった

ユウカに着てもらいましょう、短いの長いので季節使用にして」


そして服が完成して宿屋に戻った後、

静かに自分のベットに入り眠りについた。



-----------------------------


「はあぁ〜〜?!!!!!!」


朝、騒々しい声がして目が覚めた。

体を起こして声のする方を向くと半身だけ

起こしたシオンが自分の着ている服に

驚いている。

(しかも丈の短い方…)


昨夜…というか数時間前、目を閉じた時に

静かに布の擦れる音がしていた。

クロネが眠る前に服を着替えたのだろう。


(目が開かない…)

数時間程度の睡眠でまだ寝不足みたいだ。

(寝よう…)


目が覚めて、メイド服を着ていて動揺している

女の子というシュチュエーションに、

冴えない意識のせいで特に反応なく眠りに

ついた。


シオン「こういう事だけ情報を共有して…

意地が悪い」


目が覚めてから、私の知らない情報が

纏めて送られる…メイドカフェ、萌え、

フレンチメイドにコスプレ、生殖行為の際の

特殊な思考と、私にさせる要望…そのセリフと

ついでのように流された

彼の魂の情報と夜中の会話記録…。


シオン「やらなきゃいけない…?」


クロネ(責務を果たせない者として?構わないと

言っていたけれど?)


シオン「あ〜ん、やる…もちろんやるけど…

繁殖を目的としないで、ただ性欲に

弄ばれるために…惨めすぎる…」


「感情を育てるとこうなってしまうの?

人間って…」


クロネ(シオン、セリフを言う時は声色高く

お願いね)


シオン「二人揃って、

私を弄るのを楽しまないで」



ユウカ「シオン、その格好は何?」


シオン「ひゃぁ!ユウカ…おはよう。」

(主人に似て気付き難いわ)


ユウカ「ん、おはよう。その格好は?」


シオン「これは使用人が着る物で…ほら

星使者は星に仕える者だから、正装みたいな」



ユウカ「そっか、てっきりコスプレかと思った」


シオン「えぇ!えー…え〜(そういえば

彼の持つ情報が入って…)コスプレ?

彼の世界の物?」


ユウカ「うん、メイド服、可愛い…良いな」



シオン「クロネが、ユウカの分も用意

してるって」



ユウカ「ほんと?」


シオン「えぇ、着替える?」


ユウカ「うん、やった」



-----------------------------


「主ーー」


身体を揺さぶられながら、起床の呼び掛けを

かけられる。

一度の呼び声でスっと目が開く。


「おはよう」


ユウカ「おはよう、主」


視界が悪いため直ぐに眼鏡をかける。

「んぉ?」

ベットの横側に立つユウカはエプロンと綺麗な着物に包まれた和服美人として

朝の起床を出迎えてくれた。

「んー和服美人。似合ってる」


単色の黒の着物に白のエプロン、それと

流れるように美しい、ユウカの灰白色の髪が

見事にマッチしている。

整った顔立ちと、元々の「空の器」という

性質も然る事乍ら本当に日本人形のようだ。


(こう改めて見ると、顔立ちは日本人っぽい

んだな…)

これに関しては、間違い無く俺が触れた事が

原因だな。

髪色も…日が経てば黒くなるって事かな?


間違いでなければ、俺の遺伝子情報が

多少入ってるよな…顔は全然似てないけど。


ユウカ「似合う?!ありがとう」


???「おはよう…、その…ご主人様、」



拓海(まさか!?その声と呼び方は)


シオン「昨夜は遅くまで起きていたのね…

起きていたのですね」



拓海(これは!?ぎこちない言葉遣い…だが良い、

そこが良い、そして直に感じる最上の

恥じらい)


シオン「くっ…変態。変態の色が視える…。」


(これは…朝だからなのか…それともシオンに

反応して……、あぁ)


少しでもそういう目で見ると、直ぐに

嫌な人間の顔が出てきて萎えてしまう。

母たる星の権能とでも言うのか…

最低な仕様だ。


拓海「顔洗ってくる…」




ユウカ「シオン?」


シオン「女である前に母…、惨め過ぎる…」


ユウカ「?」


-----------------------------


拓海「さて、シオンさん。貴女まだ、

見せていないモノがあるんじゃない?」



シオン「………。」


「ダメ!流石に素面で

コレは出来ない///……か…かくなる上は…」


クロネ(いいの?無駄に情報を流してバカに

なったら、また迷惑かけるかも?)



シオン「○×△☆♯♭□ーー!!」


言葉にならない奇声をし、悶えるシオン。

数秒間 悶え続け、奇声を終えると

息を整えた。


シオン「はぁ…よし、」



あ恥「ご主人様?肝心な時にいつも役に

たたない、あ恥を〜許してく〜ださい〜♡」



両手でハートを作り、ウインクしながら

謝罪するシオン。

自分をあ恥というあだ名で呼び、

キャラじゃない可愛い声と仕草でこれでもかと

言う程の恥をさらしている。


拓海「猫耳とニャン語尾バージョンも…」


シオン「もうやらない!!!!」


ユウカ「主、見て。

可愛いニャンコだニャン♡」


拓海「百点」



シオン「あ〜本当に恥だわ〜」



斯くして、楽しい…元い可愛い萌え恥

謝罪イベントは幕を閉じたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る