第9話 街の風景

立ち並ぶ商店街、先程の緑溢れるのどかな

村と違い、心奪われそうなほど…

活気と魅力溢れる品々が並ぶ。その光景は

無限に色を散りばめたかのように、

輝いて見えて。


魔術によるものなのか、放電や火起こしを

する物に

風を起こしたりする物

などが売っていて、生活基準にあまり

差異は無い様子。


思ったよりかはハイテクなんだな。

(電気が扱えるなら、携帯に近い連絡用の

ツールがありそうだし)


ユウカ「鎧の人ばかり…」


タクミ「ん?ホントだ。」

兵士だけでは無い、

ローブやマント…魔術師っぽい人もちらほら、

この街の日常風景にも思えたが、必死に

話し合う様子から何か異常があったのは

見て取れる。


クロネ「あれは指名手配を追ってる冒険者ね」


タクミ・ユウカ「「指名手配?」」


クロネ「この街は今、子供が拐われる事件が

多発していて、ギルドの冒険者や街の兵士が

総出で探し回ってる。」


タクミ「ふーむ、クロネは…」


クロネ「知らない、覚えなくて良い物だと思って…。」


タクミ「そっか…シオンは当分起きない

だろうし…、」



人助けは出来なそう…



「ちょっと早く家に入りなさい!!」


「イヤだ!そとで あそぶ〜〜ぅ〜の!!」


「外は危険なの!言う事聞きなさい!!」


「イヤダァ!!!」


なるほど…この街のお母様方は苦労なさる。

他人ごとではないと言う事実に怯え、

その怖さを知らぬ

遊び盛りの子供をあやさなければ

ならないと…、大変だ。


冒険者の一人「大変だな」


同じ冒険者「あぁ、…隣りの3番街も4件被害にあったらしい。」


冒険者の一人「お前んとこ、息子がいたろ?」



同じ冒険者「あぁ…まだ1年も経ってない赤子

でさぁ…、子守りの籠に

括り付けようかって…嫁とよぉ…、」



冒険者の一人「あぁ、その迷信な…家の周りの女達も言ってたよ」



どうやら迷信が出来てしまう程に、街の者から

恐れられているらしい。

これはかなりの被害者がいそうだ。


幸い、俺たちの中に拐われる様な子供はいな…

…ん?ユウカは一応…人の子では無いし

…大丈夫だよな?確かに見た目は

小学生くらいの少女に見えるけど……っ!?


タクミ「ユウカは…?」


目の前に居たはずのユウカがいない。

視界にはちゃんと入れていた筈なのに…。


クロネ「私も、一度も目を離してないけど

見失った、コレは魔術じゃなくて星使者の

魔法ね。」


なら誘拐犯は妖精の可能性が高そうだな…


タクミ「クロネ…」


クロネ「駄目、起きてる時の私はシオン程

の情報量を持ってない」


タクミ「いつ起きる?」


クロネ「最低でも4時間…」


位置探索はしばらく不可能……探し回るか、

聞き込みをして情報を集めるしか無さそうだ。


先ずは、そこで会話してる冒険者に

話しを聞こう…、「すみません…

子供が居なくなって。」


冒険者の一人「それはイケねぇ!いつだい?!」


タクミ「今さっきです」


同じ冒険者「あぁ…また誘拐が…」


冒険者の一人「迷子の可能性もある…兄ちゃん…この先のギルドに行きな、

流石に今居なくなったんじゃ情報はねぇが

捜索届けを発注して貰え!」


タクミ「助かります」


クロネ「お2人、コレを」


冒険者の一人「ただの助言だ、金はいらねぇ」


クロネ「あとぐされ無い方が助かります」


冒険者の一人「おぅなら貰っとく、見つかる

と良いなアンタらの子。」


クロネ 「はい」ニコッ。


俺とクロネは2人に頭を下げると

その場を後にしてギルドへ向かった。



同じ冒険者「僕は何もして…そうだ、兵士の

方にもお願いして探して貰おう」



冒険者の一人「既に他の捜索で手一杯だろう

が…まぁそうだな、出来ることはしてやろう」



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タクミ「お金、持ってたんだ」


クロネ「あれはその場で作ったの、シオンに

怒られるから、したくは無いけど。」


勝手な金銭の製造は違法だもんな…確かに

シオンは怒る、もしクロネが沢山の人に

金銭を配りでもしたら、金の価値が落ちて

この街、いてはリーセイの

経済にダメージを与えてしまう。


シオンが傍観者と自称し、そうしようと

するのは星使者が干渉した際の影響力を

危惧するための物だろう。



そんな事を考えているうちにギルドへと

たどり着いた。

中は想像したギルドより静かで、街中の捜索で

多くの人間が出払っているからだろう。


受け付けのお姉さんに捜索届けの紙を

出してもらうよう頼み、ついでに既に被害に

あっている誘拐事件についての情報を

幾つか目に通した。


――誘拐、迷子についての情報の記載―――



・突然、目の前から居なくなる子供、6件


・手を繋いで歩いて行く子供の目撃、2件


・夜中の屋根の上、赤子を抱えた人影 、1件


・宙を舞う赤子 、4件


・親を忘れた子供、20件


同じ事例を3番街〜1番街でも多数、


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これは…大事件だ。これだけ被害が出れば

街全体が動くのも納得だ、しかも

王都でも廃人病と言う病や石化させる

妖精の討伐依頼などが出ていて、

他にも妖精が関与するご近所トラブルと

国は常に深刻な状態にあるようだ。



クロネ「王都の病と…、誘拐事件の元凶、

妖精の仕業だと思う」


タクミ「うん…、」


一度ギルドに並ぶ机の椅子に腰を降ろす。



何となくこの国の問題は大半が妖精

が元凶、または

関与してるんだろう。

だから幽閉や戦争なんて言葉が出てくる。



タクミ「迷子は迷子で、この国で居なくなら

れるの怖いんだけど…、」


クロネ「あの子も一応、星使者…無事を

祈りましょう」



まさか自分が子供の安否を心配する

保護者になるとは…、

友人には保護者みたいな存在と言われた事が

あるが…、俺もまた友人達にとって

保護対象で…持ちつ持たれつの関係だったが、

これは訳が違う。



認めたくは無いが、彼女が初めて目にした

俺は親のような者だ、あの村にユウカを

任せる事も頭に過ぎったが…、

縁を持った以上…、簡単に誰かに任せる訳には

いかない。

子供を捨てる真似はしない、縁を持った以上

責任を捨ててはいけない。


親になんてなりたくない……、けど

親のようにもなりたくない。



きっとこの世界でも俺が向き合ってきた問題に

こうしてぶつかる事になるんだろうなぁ、



クロネ「ねぇ貴方?」


タクミ「ん?はい。」


クロネ「私達、夫婦に見えるみたいよ」


タクミ「あーさっきの…子供を探してるって

言ったから…あの人達は…」


クロネ「もし、生まれる子が貴方に全く似ないで、ちゃんと育つ子だったら、私と…」


ブンブンブンブン全力首横振り。


クロネ「冗談…、」


タクミ「良くないって……!」



クロネ「なら……お付き合いは?」


タクミ「恋愛?」


クロネ「と、性愛」



タクミ「んー好き…だけど」


タクミ・クロネ「「親愛だよね・親愛よね」」


恋愛感情における好きと言う気持ちが行く前に

大事な存在と言う気持ちが勝る。



クロネ「そうよね。熟年夫婦感は既に

あるんだけど…、」


タクミ「それ貴女、誰とでも出来るじゃない」



クロネ「知りたい相手は選ぶもの…誰とでも

は無理よ」

「それに理解し合わなきゃ…私だけ物分り

良くても…、ね?」



タクミ「そうだね」



クロネ「これからも深め合いましょうね」



タクミ「うん、えっ、うん。」



その後、シオンが起きるまで街を回って

聞き込みをしたが、得られる情報は特に

無かった。

いや、育児をするお母様方に3番街の

店は乳製品とオリーブを安く売ってると、

家事を支える耳よりな話しを聞かせて

もらえました。



クロネ「それじゃ交代するわ、お休みなさい」


タクミ「おやすみ」


手掛かりを求め数時間、結局進展せず

シオンが意識を取り戻したようで、

いよいよユウカ救出の捜索が始まる。


クロネが目を閉じ、青白い光に包まれると

眠っていたシオンが姿を現した。


シオン「……。」


タクミ「おはよう」


シオン「…、」


タクミ「お眠?」


シオン「おはよう…、」


まだ本調子じゃないのか、テンションの低い

シオン。


シオン「うぅ…」


タクミ「どうした?」


シオン「私が止める、なんて啖呵切っといて

気を失い、君に不始末をやらせた上…大事な時にすやすやと……あぁ恥、万能でありながら

ただのお荷物!!」



タクミ「あぁ〜〜ね、でまだ挽回できるから、

ほら…ユウカの居場所…お願いします先生。」



シオン「そうね、挽回…挽回…。」

「王都の北側、キサツキ区の少し外れに

ある空洞。拐われた他の子もいる」


タクミ「おっけ」

そこが誘拐犯の拠点だな、

詳しい事情は行きながら聞くとして…


「ありがとうシオン。でも、クロネは

君にお仕置きするんだって…、俺は

別にいいんだけど……ね(ニコッ)」



シオン「構わない、責務を果たせなかった

者への罰として…。」



タクミ「そっか、良いの考えておく」



シオン「別にいい…じゃなかったの!?」



タクミ「うん、でも楽しそうだから」



シオン「君、鬼畜って言われた事ない?」



タクミ「あったかもしれない〜」



さぁ一刻も早くユウカを救出して

シオンを辱めなければ……。


こうしてユウカ救出のため

キサツキの空洞へと向かうことになった。

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