第1話 星の夢



世界が終わる………


目が覚めてそう思った。



理由は分からない、ただ何となく

いつも通りのはずの今日が、いつもと違う

ような気がした。




不思議な感覚がスっと目蓋を

開かせる。

自然と首は窓の外の方に向き、

まだ鉛のままの身体を動かそうと意識が働く。



自分の部屋から玄関の方まで向かい

身体を動かすことで目が少し冴えてきた…、

けれど夢の中にいるような感覚が抜けない…。



これは夢を見てるのか?



夢をみた時のふわふわした感覚と

はっきりと意識のある状態に

困惑しながら、

とりあえず適当なスリッパで外へと向かい

辺りの景色を見る。



(いつもと変わらない、普通だ。)



外の様子は普段と変わらず、いつもの光景が

ながれている。



(気のせい?いや、だったらこの違和感の

正体が分からない、、、。)




外に出たことで空が自然と視界に入る。

上を見上げると、

空は雲に覆われていて、太陽は

なりを潜めているが

今は九月の中頃、

夏の猛暑は抜けきらず

日の出も未だに早いため、

身体から汗が滲み、寝起きの脳を再び

朦朧もうろうとさせる。



(着替えて顔を洗おう。)


一度意識をハッキリさせるため

着替えと洗顔、そして朝食を済ませようとする。



いつものように寝巻きから正装の

ジャージに着替え洗顔をする。


顔を洗い終え、

机の上にある菓子パンと冷蔵庫から牛乳を

取り机に向かおうとして

また違和感を覚える。


これまた気になったのは外の様子。

何故か外の景色が気になって仕方ないのだが

原因は分からない。


机に物を置き、窓の外の様子をみる……

……。


(あれ?太陽がない…。)


自然と今日は曇りだと認識していたが、

そもそも雲も存在しない。


気づきにくいが間違いない、ここには空が

存在しない。

脳がそう認識した途端、より景色から

現実味が離れていく。




上に見える空は白いというより無白むしょくで、物体は物に触れる感覚と

くうを掴む感覚のどちらも感じる。



世界が終わる、というより はじめから

《世界が無い》みたいだ。



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空が違う。

そこにある景色は自分のよく知る空とは

違う。



空は毎日違う形をしている、空の色に雲の量、

快晴か、曇りか、大雨か、

日によって姿を変え、この世界の今を

そこに映している。




ならあの空は何を表すのだろう。


真っ白で何も見えない、

雲ではないあの無白しろを。





段々と、空以外の景色もぼんやりと蜃気楼のように消え白くなっていく。






理由は分からないが

やはり世界は終わるのだろう。

自分が生きた記録や記憶、この目に映る

世界は消えて終わってしまうように思う。






朝 目が覚めると世界が無白に消え

終わりを迎えようとしている。


急なことで理解しきれないが驚くことは無い。

「明日死ぬかもしれない。」は自分にも

この世界にも当てはまることだ。



十八年も生き、世界を知ることができたのだ…

この地球ほし

感謝しなければ、

十八年の中で自分なりの幸せと答えを

見つけたのだ、十分だと言えるだろう。




既に結論を出してしまっているが、

終わってしまうのなら慌てても仕方がない。


相応しい最期としてカッコつけたいものだが…

……、

家の中で最期というのは味気ない…。




人生最期は海を眺めながらにしよう。






道中買ったMAXコーヒー片手に

海辺で腰を下ろす。

海の向こうでは無白の世界がこちらへと

静かに迫っている。




瞳を閉じ、次に目を開いたら

何が見えるだろう………、何かを見る自分が

まだそこに居るのだろうか?


できる事なら人生 二度目というのは無しに

して欲しい。

天国や地獄だとか、生まれ変わったら

なんて俺にはいらない。



一度きりの人生、一度だから良いこともある。

あと生きるのは疲れる…、

このまま休ませてくれぇ〜。




真っ白な空の下で静かに目を閉じた。



死ぬ時は一人と決めていた。

騒々しいより、静かで穏やかな瞬間が

好きだから。


行き方を選ぶのが難しい時代に生まれ、

昔から死に方だけはと決めていたけど…、

時代に関係なく

死に方は生き方を決めるより難しい。

だから死に方を選べる俺は幸福だ。



最期に友人達との思い出が脳裏に浮かぶ…、

(顔でも拝んでおくべきだったか……)

彼らに出会えたのが

人生の救いだったな……。



「死ぬ時まで一緒なのは流石にないか…。」


そんなつぶやきを最期に

世界は無になって




俺の人生はそこで終わった……。





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と思っていた。



終わってなかった。



全然終わってなかった。




目を開けたら普通に夜空が広がっていて

世界消えてなかった。




見知らぬ場所の風景を見ているが、

自分も地球ほしも健在だった。



拓海「じゃあ、あれは何だったんだ?」



世界の終わりが夢オチという

肩透かしを食らいつい口から言葉が漏れる。



???「あれは君と私が見ていた夢だよ。」




その口言葉に対して横から覗き込む

美少女が応えた。



歳は同じか少し年上で整った顔立ちに

夜明け空の様な髪の色、青藍の瞳に

白と青を基調とした服、そして

明らかに普通の人間では無いオーラを感じる。



(こっちの疑問に言葉を返すあたり、色々知ってるのは間違いない。)


(あんまり絡まれたくは無いが……、

まぁ無理だろうなぁ……、

それにしても何だろう、初対面なのに少し

腹が立つ。)



少女「君、《夢人》でしょ。目が覚めて寝て

起きたら、目の前にいたんだもん。」



あまり動じない俺だが、

ある日世界が終わり目を閉じ、再び

目を開けたら見知らぬ場所で

見知らぬ美少女に話しかけられれば

屈んで強調された胸に目が行くというもの、

目の保養だ、ナイスオッパイ。




よく分からんが、彼女が寝て起きると

目の前にいる人物は夢人らしい。


本当によく分からん。知っていることがある

なら、確信を着いたことをもっと

言って欲しいものだ。

(やっぱりちょっとイラついてるんだよな俺。)




彼女が人では無い、特別な存在

だからだろうか。

見知らぬことには違いないが、

初対面という感じではなく、むしろ親しみを

覚える。(ちょっとイラつくけど。)




拓海「お前が人間じゃない事はわかる。

あと無視できない事も。だから知ってる事を

話してくれ。」



少女「いいよ、全部話す。」


視線を胸から少女の瞳に合わせ向き合う。



少女「じゃあ…先ずは私の名前から、」


「私の名前はシオン。うーんそうだねー……、

名字はー…、…うん。」



シオン「アース、私はシオン・アース。

この星の記録を司る者、星ノ記録体。」



「君がいた世界は私達の夢そのもの。

君はその夢の住人、つまり夢人さ。」



「おはよう、夢人くん。

ようこそ この現実せかいへ。」


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