第18話 おち〇ぽ師匠
メルガが仲間に加わってから、二週間ほど経過した。
四人でダンジョンを攻略したり、手配犯を捕まえたり、商人の護衛をしたり。
仕事にはまったく困らず、しかも報酬が高い。
おかげで僕たちは、何不自由のない毎日を送っていた。
「おち○ぽ師匠! もう一回お願いします!」
「「「お願いします!!」」」
「わかった。もう一回やろっか」
「「「押忍っ!!」」」
パーティーに入りたいと言ってきたひとたちを全員倒したあと、何人かが弟子入りを申し込んできた。
僕みたいな未熟者でいいのだろうか、と思いつつ、強くなりたいと願う男たちを無視できない。
ということでアランに頼み、午前中の空いた時間にギルドの試合場を貸してもらい、そこで剣術や体術の稽古をつけることになった。
現在の弟子の数は、約三十人。
そこらの道場並みの数である。
「ほら、もっと強く振って! 腰を入れるんだ、腰を!」
「「「押忍、おち○ぽ師匠!!」」」
「理想の一撃を想像しながら、力強く振る!」
「「「押忍、おち○ぽ師匠!!」」」
このおち○ぽ師匠というのは、言うまでもなく僕のことだ。
最初の呼び名は、ピカピカち〇ぽ坊主。
しかし僕を師事するにあたり、これでは失礼だと思ったのだろう。誰かがおち○ぽ師匠と呼び、すぐさまそれが定着してしまった。
僕自身、ジョブが【おち○ぽチャンバラマスター】なせいかあまり気にしていなかったのだが、ふとした瞬間に冷静になりこれでいいのかと悲しくなる。
……名前呼びに変えさせてもいいけど、街のひとたちも僕らのことをおち○ぽ一門って呼ぶしなぁ。
この前とか、全然知らない子どもからもおち○ぽ師匠って呼ばれたし。
もう何もかも手遅れな気がする。
「おう坊主、ちょっと今いいか? 大事な話があるんだが」
ピカピカち〇ぽ坊主を広めたアランは、すっかり僕を坊主呼びだ。
曰く、長いから嫌になったらしい。発案者なのだから、こうなったら最後までそう呼んで欲しかった。
「あぁ、いいよ。はいはい、みんな今日は終わり! お疲れ様!」
「「「ありがとうございます、おち○ぽ師匠!!」」」
「帰る前に、しっかりとストレッチするんだよ」
「「「押忍っ!!」」」
弟子たちを解散させ、アランのもとへ。
タオルで汗を拭う僕を見て、彼は難しそうに眉を寄せる。
「勝手にすりゃいいけどよぉ、あんなバカども育てたってどうにもなんねぇぞ。せめていくらか金取れよ」
「僕はまだ、お金を取れるほどのレベルじゃないよ。それに僕自身、色んなひとに剣術とかを教わってきたんだから、こうやって恩返ししないと」
アランは納得していない様子だがそれ以上は何も言わず、僕を連れて応接間へ。
向かいに座った彼は、いつになく神妙な面持ちだった。
「……[竜の牙]のこと、覚えてるか? ほら、うちがスパイ送り込んでた」
「うん。そりゃあね」
【おち○ぽチャンバラマスター】と何か関係あるのではないかと思い、あれから僕なりに調べてみた。
だが、結果は何もわからず。
人数が多いので探せばメンバーは見つかるが、みんなただ働いているだけで何も知らない。ボスに会ったことのある人間すら一人もいない。
聞くと、一部の幹部しか会ったことがなく、メンバーは幹部たちから指示を受け動いているだけらしい。そして僕がパンツを切り刻んだあの金髪の大男は、幹部の一人だとか。……こんなことになるなら、あの時逃がさなければよかったな。
「スパイさせてたやつが、最近ちょっと落ち着いてきて色々話してくれた。……どうやらあいつ、[竜の牙]の本部でとある人間の顔を見てボコボコにされたらしい」
「誰の顔?」
「あちこちの国で指名手配になってる、魔物売買業の大物だ。人間の子供をエサにして魔物をおびき寄せるようなゴミクズ。最近じゃドラゴンの中の王、ブラックドラゴンを捕まえたなんて話も出回ってる」
「ってことは、[竜の牙]が魔物を買ってることは確実じゃないか。すぐに捕まえた方がいいだろ」
「そう思って俺が直々にやつらの本部へ抜き打ちの査察に行ったんだが、何も無いんだよ。魔物どころか、ネズミ一匹見当たりやしねぇ。……その代わり、件の魔物売買業者の死体があった。んで、捕まえときましたよとか抜かしやがる」
「賞金欲しさに殺したってこと? でも、わざわざ自分たちのアジトに呼び出して殺す?」
「俺も何がなんだかわけわかんねぇよ。酷い状態だったから、持って帰るのに苦労したぜ。ボスには会わせてもらえなかったし、本当に最悪だ」
アランは重々しいため息をついて、パンと太ももを叩いた。
「こっからが本題なんだが、その業者の持ち物からアジトの場所が判明してな。元々ダンジョンだったところを改装して、大量の魔物を檻に入れて保管してやがった。ただ、何体かが抜け出してて危なっかしくて調べられやしねぇ」
「僕たちでその魔物たちを一掃して、捜査しやすくして欲しいってこと?」
「話が早くて助かるぜ」
◆
「――ってことだからみんな、急で悪いけどこれから仕事だ」
報酬など細かいことを決め、僕は宿に戻り三人にことの詳細を話した。
いきなりなのに、三人は特に異論はないらしい。……本当にいいひとたちに恵まれたな、僕ってやつは。
「じゃあ、レグルス君♡」
蠱惑的な声で言って、大きな胸を揺らすアトリア。
「坊ちゃま、いつものを」
涼し気な声を鳴らし、腕で大きな胸を挟み強調するミモザ。
「あれ……しないとだね、レグルスくん」
顔を真っ赤にして、大きな胸に汗の粒を垂らすメルガ。
三人の言葉に、僕は深く頷く。
「――――よし、勃起だ」
三人に抱き締められ、胸に顔をうずめ、呼吸する権利を奪われ。
そして――。
――
―― ♂♂♂♂♂ ♂♂♂♂♂ ♂♂♂♂♂ ♂♂♂♂♂ ――
準備は終わった。
さあ、仕事にとりかかろう。股間の輝きと共に。
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