第8話 これもまた、強さか
僕はこれまで、数々の過酷な修行を乗り越えてきた。
ナイフ一本で猛獣の出る雪山を生き延びた。
何の装備身もなく谷底に突き落とされ這い上がった。
ジョブもなくスキルもない状態でダンジョンの攻略だってやった。
母さんの分まで強くなるために。
あの時助けてくれた、
何度も何度も死にかけて。
そのたびに、強くなって家に帰った。
修業は好きだ。自分を見つめ直すことができるから。
……そう、好きなのに。
こ、これは、流石に……!
「ん、ぅう……ぷはぁっ! も、もう無理だよ! いい加減に休ませてぇええええ!!」
あのあと僕は二人に小脇を抱えられ、宿に連行された。
部屋に入るなり服を剥かれ、ベッドに拘束。
昨日同様、唇を奪われ、身体中を食まれ、いとも容易く
その後は〈抜刀〉を使用して〝それは
再び股間に活力を灯して、最初からそれを繰り返す。
「ええー? もっといっぱい〈
「も、もう慣れた! 十分に慣れたよ! 本当の本当に!」
助かりたいがための発言だが、まるっきり嘘というわけでもない。
上も下も二人分の汗と唾液にまみれ、鼓膜は彼女らの淫靡な声に溶かされた。惜しげもなくさらされた四つのやわらかなそれも、一生忘れないほど眼球に焼き付けた。流石の僕でも、これだけ長時間されたらいくらか耐性がつく。
「それにしても坊ちゃま、あれこれと文句をおっしゃるわりには逃げないのですね。〈抜刀〉使用状態の身体能力なら、私たちの拘束など意味をなさないのに」
「……だって、二人は僕のためにやってくれてるのに、それを力づくで逃げ出すのは卑怯かなって……」
「とか何とか言っちゃってー♡ 本当は、お姉さんたちに無理やり気持ちよくされるのが堪らないんでしょー♡」
「ち、違う! 僕にそんな趣味は――」
ない、と言いかけて。
ミモザが指で、ピンと僕の乳首を弾いた。
――
―― ♂♂××× ××××× ××××× ――
うっ、うぅうううううう!!
どうなっちゃったんだよ、僕の身体ぁああああ!!
「あーあ♡ これじゃあ女の子と一緒だねえ♡」
「違う! 僕は……僕は……っ!!」
「おっぱいで息ができなくなっても興奮しますよね、坊ちゃま」
「そ、そんな趣味は――ふごっ!? うっ、ふぅー、ふぅーっ!」
顔の上に乗っかる、二人の汗ばんだ胸。
やわらかい。
やわらかい。
やわらかい。
いい匂いがして、息ができなくて、気持ちいい。
だからこそ、情けない。
でも、逃げ出せない。
処理し切れない感情の波が、ボロボロと涙となって溢れ出た。
あぁ、くそ! 何で泣くんだよ!
こんな情けないのはダメだろ!
……剣士失格だ。
僕はなんてダメなやつなんだ……。
「いいんだよ、正直になって。お母さんがあんなことになってから、レグルス君、ずーっと頑張ってるんだもん。いーっぱい甘えて、誰かに寄りかかるのも大事だよ?」
そっと、アトリアの手が僕の頭を撫でた。
優しくて、温かくて、やわらかい手。
しなやかな指先で僕の涙を拭い、静かに頬に触れた。
次いでミモザも僕の手を取り、宝物のように包み込む。愛おしそうに、僕の指先に唇を落とす。
「夫婦ってさ、どっちかだけが頑張ればいいってものじゃないと思うんだ。だから、あたしたちの前でくらい弱さを見せてくれてもいいんじゃないかな?」
「同感です。どのような坊ちゃまでも、私たちの気持ちは不変。必要以上に格好つけずとも、私たちの中で世界で一番格好いいのは坊ちゃまです」
母さんが剣士として再起不能になった時、強くなりたい、誰かを守りたいと思った。
それと同時に、母さん以上の気高い剣士になれなければ意味がないのでは、という強迫観念にとらわれた。
強く、正しく、清らかに。
そうして自分を鍛え、無駄を削ぎ落して、残った上澄みだけが僕の価値だと、そう思っていた。
だけど、二人は弱い僕も好きだと言ってくれる。
いてもいいと、包み込んでくれる。
それが嬉しくて、心強くて、僕は一度せき止めた涙を再び解放した。
「もう正直に言えるよね。あたしたちにいっぱい愛されるの、好き?」
「……好き」
「
「……うん、好き」
「えへへー♡ ダーリンってばすっごい変態じゃん♡」
――
―― ♂♂♂♂♂ ♂×××× ××××× ――
変態。
そのワードに、股間が燃え上がった。
気高く在ろう、誇り高く在ろうとしてきた反動だろう。
でも今は、不思議と悪い気がしない。
情けないとも思わない。
そんな僕でも、二人は好きでいてくれるって知ってるから。
無理やりされて女の子みたいに喘がされて気持ちよくなってもいいって、二人が教えてくれたから。
「流石です、坊ちゃま。自身の弱さを受け入れ、躊躇なく勃起する力を手に入れたことで、坊ちゃまはまた一つ強くなりました。ではここで、修行を次の段階に移すといたしましょう」
「次って、今度は何するの?」
「戦闘のたびにこうして服を脱ぎまぐわうのは、非効率的で大変危険です。ですので坊ちゃまには、瞬時に
「おーっ! それができたら便利だね!」
「ということで坊ちゃま、今から私たちで坊ちゃまの身体を開発します。覚悟はよろしいですか?」
「……もう、好きにしてぇ……」
将来の伴侶に、僕は全てを委ねた。
不思議と何の不安もない。
罪悪感も焦燥感もない。
心は凪ぎ、与えられる興奮に、素直に股間が隆起する。
――これもまた、強さか。
剣士としての新たな在り方を学び、僕は嬌声を響かせた。
もう
◆
「ごめんね、二人とも。随分かかっちゃってさ」
「謝罪すべきはこちらの方です。何ぶん私、他者の開発経験がないもので。不甲斐ないメイドで申し訳ございません」
「いやいや、ミモザさんがいなかったら無理だったから! あたしとか、レグルス君をどろどろに甘やかすことくらいしかできないもん!」
「……ううん。二人がいたからできたんだ。ありがとう、僕の修行に付き合ってくれて」
あれから一週間後。
スキルの試用も含め、修行を全て終わらせた。
満を持して、冒険者ギルドの看板を叩く。
建物の中は、荒くれ者たちの巣窟。
何だお前らは、とその場の全員が僕たちに厳しい視線を送る。
「アトリア、ミモザ――」
と、二人に呼びかけて。
――それぞれ腕を引き、順に口づけを交わす。
瞬間、グツグツと煮え滾る下腹部。
彼女たちと積み上げた快感の日々。
そして僕は勝ち得た、唇という新たな性感帯を。
キスだけで完全体と成る剣を。
――
―― ♂♂♂♂♂ ♂♂♂♂♂ ♂♂♂♂♂ ――
「冒険者になりたいんだけど、模擬試合にはここで一番強いひとを監督官として出してくれないかな」
光り輝く下半身。
どよめく冒険者たち。
僕はコツコツと受付へ進み、そして言う。
「そいつを五秒で片づけるって約束する。――もしできた時は、僕に最高位のSランク評価をつけて欲しい」
――――――――――――――――――
あとがき
最初サブタイトルを「もう勃起(なにも)、怖くない」に設定していたのですが、ここのところ勃起というワードに頼り過ぎている感が否めなかったのでやめました。勃起は大切なので、ここぞという時に使おうと思います。
面白かったらレビュー等で応援して頂けると執筆の励みになります。
よろしくお願いいたします。
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