第7話 躊躇なく勃起するための修行
翌朝、レッドドラゴンの眼球を一つだけ採取した。
馬と荷物を失い、当然お金もごく僅かしかない。
ドラゴンの眼球は宝飾品として凄まじい価値があるので、売って旅費にしようという算段だ。
残りの死体は、村の人たちに預けた。
人的被害は皆無だったが、森が焼け家畜も逃げ出し、いくらか生活が苦しくなるだろう。あのドラゴンを全て売り払えば、向こう一年は村人全員が食べていけるはず。
ということで、僕たちは旅を再開。
予定通り途中でドラゴンの眼球を換金して諸々の荷物と馬を購入。その日のうちに、ダリア王国に到着した。
「うはーっ! あたし、外国って初めて! ちょっと国境跨いだだけなのに、もう全然街並みが違うね!」
ダリア王国の東部最大都市、ローグローズ。
王都に次ぐ規模の街だと聞いていたが、想像以上のひとの多さと発展具合に面食らう。アトリアは楽しそうにキョロキョロとあたりを見回し、「うぉー!」とか「ひゃーっ!」と事あるごとに声を漏らす。
「今日はもう遅いし、冒険者登録は明日にしようか。とりあえず適当な宿とってから、三人で美味しいものでも食べ――」
「坊ちゃま」
僕の言葉を遮り、ミモザが凛とした声を鳴らした。
「失礼ながら、明日の冒険者登録の前に至急解決すべきことがあるかと」
「解決すべきこと……?」
「登録の際には、その技量を見極めるため模擬試合が行われます。実力に応じてランク付けを行うのと、不適合な者を弾くためです。坊ちゃまほどの能力があれば問題はないと思いますが……しかし、昨日使った剣の威力はあまりに強大。制御できなければ、この街に甚大な被害を出してしまうでしょう」
ミモザの発言はもっともだった。
〈抜刀〉により僕の股間から出た剣――〝それは
「坊ちゃまともあろうお方が、どうして準備不足な状態を放置なさるのですか。私の知る坊ちゃまは、一にも二にも自己研鑽。己が最強であることを世に示すため、ひたすら鍛錬に励むお方だったはずです」
ミモザの静かで冷たい視線が痛い。
僕は視線を伏せて、泳がせて。
もごもごと唇を動かし、決意を固めて彼女を見上げる。
「……明日の模擬試合は、スキルを使わずに挑もうと思ってたんだ。多少無理をすれば、レッドドラゴンとも戦えるくらいの力はあるってわかったし。だったら、それでいいかなって」
「与えられたランクによって受注できる依頼の難易度が変わり、当然報酬の額も大きく変動します。スキル無しで最高位のSランクを目指すのは不可能かと」
「い、いや別に、最初から一番上を目指さなくたって――」
「生活が安定すれば責任を取ると、そうおっしゃっていたのは坊ちゃまです。将来の伴侶として、坊ちゃまには早く大金を稼いで頂きたいのですが」
「っていうか、レグルス君が一番上を目指さないとからしくないね。ちょっと前までは、あたしが遊ぼうって言っても、ずーっと剣の修行してたくせに。もう強くならなくていいの?」
「強くはなりたいけど……だ、だから、その……っ!」
ミモザの願いも、アトリアの疑問も、ごもっとだ。
僕だって強くなりたいさ。なりたいけど……!
「〈抜刀〉を使うには
昨日は他に選択肢がなく彼女らを頼った。
二人は好意的に受け止めてくれたが……でも、あんなのは正しいことじゃない。仮に将来の伴侶だとしても間違っている。
「ははーん、ふーん……なっるほどねー♡ お姉さんたちにえっちなことをお願いするのが恥ずかしいとか、レグルス君は可愛いなぁ♡」
アトリアは艶っぽい笑みを浮かべ、妖しく白い歯を覗かせた。
そしてなぜか僕に身体を寄せ、ふるんと大きな胸を押し付ける。
「ちょ、ちょっとアトレア! 胸が……!?」
「わざとやってるのー♡ おっぱい押し付けられて嬉しい?」
「えっ? あ、いや、その……」
「嬉しくないの? あたしの身体、魅力ない?」
「っ! あ、あるよ! すごくある! あるから……だ、だから、大切にしたいっていうか……」
「触らないってことが、大切にするってことじゃないんだよ? 好きなひとに触って欲しいって思うのは、変なことかな?」
「わ、わかんないよ、そんなの……!」
「じゃあ、あたしが昨日レグルス君に触られて、いっぱいキスして、どれくらい嬉しかったか教えてあげる♡」
「へっ?」
僕が逃げないよう腕を引いたまま、ふっと耳元に唇を近づけた。
「実は昨日の夜ね、二人が寝たあとに色々思い出してぇ――」
ごにょごにょ。
ぞわぞわ。
甘く熱っぽい吐息と共に語られる、雷撃のように刺激の強い話。
女の子の……それも大切な幼馴染の秘密のお遊び事情に頭の中が溶け、ぐわぐわと眩暈がする。
――
―― ♂♂♂×× ××××× ××××× ――
……あ、やばい。
「剣の制御の前に、坊ちゃまにはまず基礎的な修行が必要なようですね」
「しゅ、修行……?」
聞き返すと、ミモザはいつもの無表情で「はい」と頷いた。
「坊ちゃまのことが大好きな私たちの身体を使い、いつでもどこでもどういう状況でも、躊躇なく勃起するための修行です。スキル発動に必要な
「……」
「さあ坊ちゃま、勃起しましょう。股間の輝きが、きっと私たちの未来を明るく照らしてくれます」
「レグルス君のおち○ぽが、あたしたちの太陽になるってことだね!」
「そういうことです、アトリア様」
「……どういうこと?」
【おち○ぽチャンバラマスター】二日目。
かくして、僕史上最低の修行が始まった。
――――――――――――――――――
あとがき
Twitterの方で「どうしておち◯ぽを伏せ字にしてるんですか?」と質問があったのですが、理由の九割はおちんぽよりおち◯ぽの方が字面がマヌケで面白いからで、残り一割は削除対策です。運営さん、消さないで……。
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