第4話

「そうだよ。ユウが好きな推理ゲーム。お互いの動向を確認して、いつ告白するかタイミングを考えるゲーム」



「告白をゲームだなんて思えないよ」



あたしは左右に首を振って答えた。



すると、ホナミがまた呆れ顔になってしまった。



「ゲームだと思えば気持ちを伝えやすくなるってことだよ? もちろん、告白をするときはお互いに本気」



そういうものなのかな?



あたしは2人の言っていることがいまいち理解できなくて、お弁当の残りの口に入れた。



「じゃないと、いつまでも告白できないじゃん」



ホナミの言葉にあたしは言葉に詰まってしまった。



確かに、その通りかもしれない。



重たく考えれば考えるほど、告白は遠のいていくのかもしれない。



そう思って「う~ん」と唸り声を上げた時だった。



「おいミホ。お前ジュース買ってこいよ」



あたしたちの間に割って入るようにしてカズヤが声をかけて来た。



イクヤやイツキとは違い、そこには有無も言わせぬ威圧感がある。



「あたしたち今楽しくおちゃべりしてるんだけど」



途端にホナミが不機嫌な表情になって言い返す。



「俺はミホに言ってんだ。お前じゃねぇ」



ホナミはカズヤに睨まれて頬を膨らませている。



「わかった。言ってくる」



ミホはさっきまでの元気を失ってしまったかのように、小さな声で言い席を立ったのだった。



放課後になり、廊下に自然と6人が集まる形になっていた。



「今日はちょっと面白い噂話を聞いたんだ」



歩き出した時そう言ったのはカズヤだった。



あたしとミホとホナミの3人は顔を見合わせ、バレないようにうんざりした表情を浮かべた。



「噂ってなんだよ?」



イクヤが興味を示して聞いている。



「あのゲーム研究会が、危険なゲームを持ってるって噂なんだ」



「危険なゲーム……?」



あたしは首を傾げて聞き返した。



あの部室には昔の遊び道具も沢山置かれている。



けん玉やベーゴマ、竹馬なんかもあったはずだ。



怪我をしやすいという意味で危険なものなら、確かにあった。



「どういうゲームなのかは聞いてないけど、厳重に保管されてるらしい」



「どういうゲームかわからないなら、探しようがないじゃん」



ホナミがカズヤに突っかかるように言う。



「それを探すんだろうが」



カズヤはチッと軽く舌打ちをして答えた。



どっちみちゲーム研究会へ行くのだから、カズヤに付き合わされることになりそうだ。



タイトルのわからないゲームを探すなんて、ほぼ不可能に近い。



ゲーム研究会に置かれているゲームを全部プレイしてみなければ、なにがどう危険なのかもわからない。



しかし、カズヤは1人その危険なゲームを探し出す気満々でいる。



「今日はゲームの続きはできなさそうだね」



ホナミがあたしへ向けて耳打ちをしてきたので、あたしは大げさに肩をすくめてみせたのだった。


☆☆☆


廊下に人がいないことを確認し、あたしたち6人はゲーム研究会の鍵を開けて部室内へと侵入した。



そこには昨日と変わらない景色が広がり、見ているだけでドキドキしてくる自分がいた。



「ドアの鍵は念のためにかけておこう」



カズヤがそう言い、鍵をかけなおしている。



人がいるとバレるわけにはいかないので、電気も付けられないままだ。



カーテンを開けることもできないし、部屋の中は薄暗くて少し異様な雰囲気が漂っていた。



「よし、じゃあ、手分けしてゲームを探すぞ」



カズヤの言葉を合図にして、あたしたちはタイトルもわからないゲームを探す事になったのだった。


☆☆☆


それから1時間はすぐに経過した。



とりあえずそれっぽいタイトルのゲームを集めてみたけれど、どれもホラーゲームだったり推理ゲームだったりして、ごくごく一般的なものだった。



「この中に危険なゲームがあるとは思えないけどなぁ」



イクヤがホラーゲームを手に取って呟く。



中には年齢指定されているゲームもあるけれど、単純に内容が過激だとか、映像がグロテスクだからであって、本当に危険なわけじゃない。



噂になるくらいだから、こういう一般的なゲームではないだろう。



「ねぇ、いい加減諦めてゲームしようよ」



ホナミがしびれを切らしてカズヤに声をかけた。



カズヤはまだ粘り強く、1人でゲームを探している。



「ダメだ。今日プレイするのは噂のゲームだ」



一度こちらへ顔を向けたが、そう言い切って再びゲーム探しに戻ってしまった。



あたしとホナミは目を見交わせ「あの集中力を勉強に生かせば、もっと真面な人間になれるのにね」と、笑い合った。



「噂になるくらい危険なゲームなら、もっと別の場所にあるかもしれないな」



ゲームの捜索を再開させようとしたとき、イツキがそう言い出した



「確かに、普通に置いてあるとは思えないよね」



ホナミがすぐに賛同する。



「じゃあ、どこにあると思うんだよ?」



カズヤの言葉に、あたしたちは部室内を見回した。



壁際には棚が並び、その中にゲームソフトが所狭しと入れられている。



教室の前方には大きな段ボール箱が1つあり、その中にはけん玉などの昔のおもちゃが入っていた。



後は……。



あたしたちの視線は自然と教室後方へと向かっていた。



昨日、顧問の先生が出て来たドアへと集中する。



「あの部屋か」



カズヤがすぐに立ち上がり、ドアへと向かった。



あたしたちも、その後に続く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る