番外編【エイプリルフールネタ】
四月一日。それは
そんなエイプリルフールには、嘘は午前中までだったり、吐いた嘘は午後にしなくてはならないなど、個人的なルールが多く存在し、派閥同士での小さないざこざさえもあるとか。
俺はそんな日に興味なんかないため、折角の春休みを堪能していた。とは言っても午前中はほとんど寝る予定しかないのだが。
そんな風に考えながらベッドで横になり、スマホを突く。すると突然、部屋のドアが蹴り開けるかのように豪快に開く。俺は驚きを露にして、ドアの方へ視線を飛ばす。
そこには腰に手を当て、フフンと言うかのようにドヤ顔を見せている
「......何故そこにいる」
「それはですね~、
「分かった。取り敢えず、そのまま踵を返して、来た道を辿ってくれ。そしてもう来るな」
「嫌ですよ~、だって今日はエイプリルフールなんですよ? それなのに何もしないなんて勿体なさすぎます!」
「俺は疲れてんだ、少しくらい休ませてくれ」
「あ、これ強制ですから、『ヲタリア』の創造主が休めれるかどうか決められますから」
「おい、そんなメタいことを言うな。幾ら番外編だと言っても」
「先輩こそメタいですよ」
「あぁ、もう分かった。やればいいんだろ」
茶立場に流されるように俺はベッドから降りて、茶立場と共に一階のリビングへ赴く。そこにはソファに座り、足を振っている
何をするのか、この場にいる茶立場以外の人間は分かっていないようで、頭の上に疑問符を浮かべていた。
「まだ七時じゃねぇか、こんな朝っぱらから何すんだよ」
「へっへっへっ、エイプリルフールは午前に吐いた嘘を午後に叶えるていうルールがあるんです。ですから、今からするトランプゲームで、最下位になった人が優勝した人の吐いた嘘を叶えるってゲームをしましょう」
「ちなみに、これはこの部屋にいる人、全員、強制ですよ!」
「別に私たちは良いけど......」
「......はあ、で? トランプって何をするんだ?」
「それはですねぇ、神経衰弱ですよ! 予選、決勝、最下位決定戦で決めます」
そう言い、茶立場は懐からトランプの箱を取り出し、腕を伸ばし、掲げる。なんの反応が無かったからなのか、恥ずかしそうに箱を胸の前まで戻してそそくさと机の上にトランプカードを裏面にして並べる。
茶立場は意外と几帳面らしく、均等に配置されていた。
そして茶立場は俺に対して指差しをし、対戦を挑んでくる。
「まず私と先輩で第一予選をしましょう、ルールはイカサマなし、普通の神経衰弱です」
「......やるしか選択肢ないからやるが......」
そう言い俺と茶立場は机を挟んで向かい合う。そして亜依さんのやる気が感じ取れない「始め」という掛け声を初めに対戦を開始する。
茶立場からものすごい気合が放たれて——
「な゛ん゛て゛ず゛か゛~~~~~~~!!!!!」
「すまんな、これが記憶力の違いって奴だ」
普通に嘘だ。茶立場が単純に弱すぎたのもあるが、イカサマなんてバレなければ咎められることがない。なので、以前SNSで得たイカサマ知識を使い優勝したのだ。
茶立場には悪いが、ここで敗北し、最下位決定戦でも敗北すればどんなものが待っているのか想像がつかないのは嫌なので勝たせてもらった。
その後は舞と亜依さんとの勝負で、弱気を出した亜依さんが負け、俺と舞との決勝戦となった。
「おにーちゃん、わたしぜったいに、まけないからね!」
「うん、分かった。頑張って」
「私との態度の差が凄い感じるんですけど」
「当たり前だろ、お前はウザいが、舞は可愛いし、家族だからな」
「ひっどいなぁ」
そして、舞の頑張る姿にやる気が付いたのか、亜依さんは少しだけ声を大きくして「始め」と声かけをする。舞には申し訳ないのだが、本気で勝たせてもらうことにする。
——本気を、出して舞と戦った結果。
「あれ~? なんでだ~?」
「やった! おにーちゃんにかった!」
俺は本気を出し、イカサマすら使ったのに僅差で負けてしまった。舞の神経衰弱に対する強さに俺は何故なのか疑問に思うが、ただ単に特異なだけと思考を止める。
「......ふ、あはははは!! あれ~? おに~ちゃ~ん? 舞ちゃんに負けちゃったんですか~? あんな本気出してて?」
「うるせぇ、完全に負け確なお前が言うな」
「いや、まだチャンスが——」
ボロ負けしていた。亜依さんにジョーカー以外全て取られて負けていた。
「えーとねー、じゃー、ねこみみをつけて、ごび? ににゃんで、おにーちゃんにつかえる」
「え? ちょ~っと舞ちゃん、それはさすがに~」
「麻美ちゃん、ルールはルールだから」
「だって、先輩に仕えるなんて、嫌ですよ!」
「なんだ? 俺に仕える以外は良いってことなのか?」
「ええ、それなら覚悟を決めてましたし」
「どういう覚悟決めてんだよ......じゃあ、代わりに舞に仕えたらどうだ?」
「それなら、まあ」
「舞もそれでいいか?」
「おにーちゃんがいいならいいよー」
何故だか、王様ゲームにすごく似ているような感じがするが、まあいいだろう。
そして時は経ち、午後。家のチャイムが鳴り、亜依さんが玄関に向かい、訪問者を迎える。
廊下から足音が聞こえたと思うと、廊下に繋がる引き戸が開いて——。
「よろしくお願いしますにゃん。舞様」
「お前......その恰好どうした」
「え? やっぱり猫耳に語尾ににゃんだったら、メイド服でしょう!」
「そうか」
茶立場は黒色の猫耳を付けて、白黒のメイド服に胸の少し上で猫の手をしながら舞に向かってそんなことを言う。
それに俺は舞の言葉以外の事が付け足されていることに足して少々文句を付けるが、この分野に関しては茶立場の方が詳しいのであまりとやかく言わないことにしておく。
それから茶立場は一晩中、舞に尽くすことになった。正直、見慣れない姿の奴が家にいるというのは茶立場に悪いが目障りだった。
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