第十五話・・・別居

 『親』それは子供を育てるためにも、子供を自立させるためにも、色々なことで子供にとって必要不可欠な存在だ。そんな存在がおかしかったりいなかったりなんてしたら子供がまともに育つ保障なんてないに等しい。

 しかし俺にはその親が一人いなかった。いや、いなかったというよりいなくなったが正しいが。俺の母親は親父と喧嘩をして離婚。その後肺の末期がんを患って亡くなった。そう親父から聞いた。

 大体俺が年少ぐらいの時ぐらいの出来事だった。そのため俺は父さんと二人暮らしを続けていたのだが、去年になって親父がいきなり妙に色気付いて来たような感じがした。

 疑問に思って親父に問い詰めていたら『いやー実はな? 俺、気になる人ができてな』と。

 何だそんなことかと親父の恋愛でもあるので別に気にせず流していたが、後々になって気付くことになった。親父とその人が結婚すれば俺に母親ができるのだと。

 それを知ったのはもう親父とその人が結婚してしまった後なのだが。そして今の母親となった人の連れ子が今の義妹や義姉のまい亜依あいさんとなったのだ。

 別にそれなら問題はないだろう。しかし俺は高校生になってすぐ親父と別居することになった。

 俺の一方的な要望で別居することになったのだが、結果的にそれでよかったのかもしれない。もしそのまま親父と義母、義妹義姉と衣食住を共にしていれば一人の男以外血の繋がっていない家族がおかしくなってしまっていたのは間違いないから。

 だけど、なぜこのタイミングで親父たちが会いたいと言ってきたのが分からなかった。今はもう他人と言ってもいい存在になっているのに。

 唯一の接点といえば俺たちの学費や生活費などを振り込んでもらっているくらいだ。俺が会うことはないが亜依さんはその金を受け取るために少しだけ顔を合わせるらしい。

 ただそれだけ。それだけなのにいきなり俺たちに会いたいと言ってきた。



「それって冗談とかじゃないですよね」

「私がこんなで冗談言うとでも思う?」

「言わないです、よね」



 亜依さんがこんな切羽詰まったような表情で冗談を言う訳がない。なので本当なのだろうが、正直言って会いたいとは思わない。

 実質喧嘩別れみたいに別居になってしまったのだから親父と顔を合わせると気まずくなるくらいは分かる。だけど今ここで拒否すればまた亜依さんに何かしら負担を負わせてしまうかもしれない。

 なら断ることはできなかった。



「分かりました、会います。でも、舞はどうするんです? あの子母親のことあまり覚えてないですよね?」

「ええ、それが問題なのよねー、まあでもあの子が学校行っているうちに会えば問題なしじゃない?」

「そういうもんなんですか......?」

「そういうもん、まあ遅くなることも考えて置手紙とか色々準備してから行くけど、その日は諒ちゃんは学校休むんだよ」

「はい......」



 亜依さんにそう言われ大人しく返事をすると俺は自分の部屋に行ってベッドに倒れ込む。

 久しく親父の顔を見ていない。昔の写真は一応持っているものの別居してから荷物の搬入時以外目にしていなかったためあまり細部まで思い出せなかった。

 だが、親父がよく俺に掛けていた言葉だけは思い出せる。



「父さんみたいにはなるな、か......今絶賛親父のおかげでスタート地点に立とうとしてるんだが」

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