第十一話・・・どうしてこうなった

「まあいいでしょういいでしょう、では軽く自己紹介を、私はこの胡正こうせい高校生徒会会長の霧島 瑠偉きりしま るいだ。そして『打倒! 黒見虚リーゲンナイト討伐隊!』の隊長でもある。以後お見知りおきを」

「......誰かーこの子の保護者を連れてきてー」

「おいこら! 私は三年生だぞ!」

「小学三年生だそうです」

「ちが~う! 胡正高校三年だ!」

「で、今日はあるんですか?」

「話題転換するなーーーー!!!!」


 少し装飾が施された椅子に座っていた少女が容姿に似合わない言葉を口にしたため、胡正高校の見学か何かかと思い、どこかに保護者が居ないかキョロキョロと辺りを見渡すがそれらしき人物は見つからない。

 だがそこまで俺はバカではないのでこの少女はここの生徒で、言う通り会長なのだろう。しかし俺は誰が会長なのか気にしたこともなかったためこの少女に関してはチラッと見たことがあるな~程度しか覚えていない。

 ここの生徒と知ってもなおからかっているのはまあ、反応が面白いからなので、特段しっかりとした理由があるわけではない。

 しかしもうそろそろ本題に入らないと早く帰れない気がしたので、俺は微笑むような表情から一気に真剣な顔へと変えて口を動かす。


「それで、そろそろ本題をお願いします」

「そろそろって、それは君が......いや、いい、で、本題だったね、キミは喜入きいれちゃんが攫われた理由を知ってるかい?」

「理由......? 知りませんけど......」

「なら話そうか、彼女を殺す為でも、金でも、体目当てでもない、喜入ちゃんが攫われた理由。それは......彼女の父親を殺す為なのだよ」

「父親を殺す......」

「ああ、喜入ちゃんのパパさんはね黒見虚を目の敵にして、そしてされているんだよ、彼が、黒見虚が何をしたのかはさすがに分からなかったけど」

「そうなんですか......でも俺とどんな関係が?」


 霧島は次々と俺の知らないことを告げてくる。こんなポンポンと情報を口にしていいのかと内心思うが、まあ大丈夫なのだろう。しかし父親を殺すために、一人の少女をなんの躊躇もなく攫うなんてあまりにも少女が不憫過ぎないだろうか。

 そして俺に関しては井白にはなあなあで流されたのでここできっちり霧島から聞いておきたい。


「君の父親と喜入ちゃんの父親は仲が良かったらしくてね、君からお父さんに話を聞いてきてほしいんだ」

「......すいません、それは、無理だと思います」

「なんでかね?」

「今父とは別居中でメールも電話も知らないですし、母は随分前に亡くなってしまったので連絡する手段がないんです」

「そうか、なんかすまんね......よ~し、でもこれから君は私たちの仲間だ! とは言っても仲間はそこにいる副会長だけなんだけど」

「うおっ!?」

「どうも、副会長の桐ケ谷です、以後お見知りおきを」

「ど、どうも......」


 いつの間にか後ろにいた生徒会副会長。名前は桐ケ谷というらしい。振り向いてすぐのところにいたため少し大げさかもしれないが驚いてしまう。その影響か心臓が早く打ち付け、返答が少し詰まってしまった。

 しかし今の今までこの二人で生徒会と『打倒! 黒見虚討伐隊!』を回していたのだろうか、そうだとしたら随分なブラックだが、考えたら終わりが見えないのでやめておく。


「......でも俺の父が関わっているのだというのなら、俺は手伝います」

「よ~しよく言ってくれた! じゃあ今日は祝杯を挙げなければな! きり~今日宴だから! そう家に伝えといて!」

「......分かりました」


 また勝手に話が進んでいるような気がするが、気にしないでおこう。俺はそれからいろいろと組織について教えてもらい、その後何故か霧島宅で俺の歓迎会を執り行うことになった。

 ......どうしてこうなった。

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