第40話 郵便局の車の扱いって郵政民営化があったからだろうか?
先生が僕と葉月先輩──ナンバープレートの方面にあまり積極的ではない二人組がナンバープレートについてあれやこれやと意見を交わし合うのを面白がってか、真っ直ぐ学校には帰らず、近くの郵便局の前に車を停めた。
けれど、その意図が飲み込めず、先生に疑問を口にすると、先生は傍らの郵便局駐車場を示す。
そこには赤いワゴンタイプというのだろうか。お馴染みの郵便マークがプリントされた郵便車両が並んでいた。どうやら軽自動車らしいが、そこで気づく。
「……黄色と黒が反転してる」
これはあまり見かけないが、普通車にあるのと同様に、軽自動車にも営業ナンバーというのがある。普通車と同じく色が反転するらしいが、やはりなかなか見ないレアものだ、と思っていたが、まさかこんな身近にあるとは。
いや、それよりも。
「郵便局が、営業ナンバー?」
そっちの方が疑問だった。警察、消防、ついでに救急車も普通ナンバーだったのに、同様に一般的に馴染み深い郵便車両が営業ナンバーとは。ここに一体どんな違いがあるというのだろうか。
すると、先生は今度は近くの役場で車を回した。その駐車場の中には、市の名前が刻印された車両が。しかし、ナンバープレートは意外なことに普通ナンバーだ。警察などと同じく。
そこで葉月先輩が推論を立てる。
「もしかして、警察、消防、救急、役場は公的な運営……例えば市区町村が運営しているもので、郵便局は民営されたから民間企業の扱い……?」
ふむ。気をつけなかったが、昔は郵便車両も普通ナンバーだった気がしなくもない。いつだったか、郵政民営化というのがあって、郵便局というのが民間企業に区別されたのだったか。
それが原因か? と先生に解答を求めてみるが、先生は肩をすくめた。
「詳しいことは俺も知らない。ただ、調べてレポートにまとめるにはいい素材じゃないか?」
「……!」
そう言われた葉月先輩はいつもの嫌々感がなく、むしろノリノリに見えた。自分で見つけた疑問を自分で解消する、という行為は、やはり魅力的らしい。そして、レポートのお題が増えるのはいいことだ。
いつもないやる気に葉月先輩が満ち溢れていることもいいことだろう。早速、携帯端末で検索をかけてみる先輩であった。僕もついでに調べてみる。
すると、今まで手続きがどうのばっかり気にしていた営業ナンバーの事実がわかった。
実は営業ナンバーというのは、運送運搬を主な目的とする車のことを指す。身近なところだと、ダンプカーやタクシー等々。
それ以外のものは普通乗用車、商用車というものに該当し、普通ナンバーが使われるのだという。
商用車というとぴんと来ないだろうが、要するに、何かを運搬するわけでもなく、ただただ営業などのために使う社用車ということだ。
そう考えると、納得がいく。
警察車両は確保した犯人を乗せたりするが、そこにタクシーのような二種免許というのはいらなかったはずだ。更に役場の公用車は資料を届けに行ったりとかで使われることもあるが、主な利用目的は移動にある。故に、営業ナンバーには該当しないのだ。
対して、郵便車両であるが、これは皆さんご存知の通り、手紙や荷物などを郵送──運搬するために利用されるものなのだ。故に、営業ナンバー登録されていて然るべきである。
なんだ、郵政民営化は全然関係なかったじゃないか、と落胆する傍ら、新たな知識を得られたことの充足感があった。
ちなみに、この論理で行くと、意外とたくさんあるダンプカーなどは様々なものの運搬に使われているため、通常は全て営業ナンバーであるべきなのだが、普通ナンバーのものが見受けられるのは、やはり営業ナンバーに登録する際の手続きの都合があると見える。
ただし。タクシーは必ず営業ナンバーでなくてはならない。法律でそうされているのだ。つまり白地に緑の文字のやつはタクシーではない。俗に白タクと呼ばれる、法律違反のものであるらしい。近頃流行っているとの噂もあるため、そこには気をつけるべきだろう。
少し勉強になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます