第38話 自衛隊車両に巡り会いました。

 自分が住んでいるところからするとだいぶ都会だ。高速道路で十数分だが。

 高速道路を降りて、立体交差なんか通るとすごい変な気分だ。でもなんとなく楽しい。

 目的は巨大ショッピングモールの……探索?

 毎年学ん家に連れられて行くのだ。時期が時期だからものすごく混んでいるのだけれど、子どもの頃から果てしない冒険みたいな感じでそのショッピングモールの端から端まで回るのが楽しかったのだ。

 高校生にもなって冒険とは、自分もまだまだ子どもだなぁ、と思いながら、立体交差の車線中を眺めていると、ふと、前の車が気になった。

 何かがおかしい。じっと見ていると、後部座席がバスの中みたいな向かい合った席になっていて、両側それぞれに何人かずつ乗っている。……って、車の構造じゃなくて。

「あ、自衛隊車両だ」

 学が何の気なしに言う。

「じえいた、え?」

「ほら、前の車」

 確かに見ると、中の人はそれっぽい格好をしている。迷彩のうちの一色っぽいこの車の色も作用しているのかもしれない。

 しかし、よく知っていたな、学。

「え? 年に何回か遭遇してたけど、気づかなかった?」

「全く」

 首を横に振ると、学が人差し指を立て、解説を講じてくれる。

「自衛隊車両はね、中の構造もそうだけど、ナンバープレートもちょっと特殊なんだよ。ほら」

 どれどれ、と見てみると、確かに普通車とは違った。

 具体的にどう違うかというと、自衛隊車両のナンバープレートは全部数字で構成されている。複数車線道路だと比較がしやすくていい。おそらく僕の抱いた違和感の正体はこれだろう。

「学、調べたの?」

「うん、前々からナンバープレートが数字ばっかりで変って思ってたからね」

 フットワークの軽いやつだ。

 というか。

「ナンバープレートってそんなに気になるもん?」

「やっぱり長距離移動のときはね。子どもの好奇心ってやつ? なんでこれは他と違うんだろうとかさ、気がつくと気になるもんじゃない?」

 それは否定できないな。ただ、即刻で調べる辺りは学の勤勉さが出ていると思う。

 学が自分で言った台詞に苦笑いする。

「好奇心、か……僕もまだまだ子どもだなぁ」

「何を言うか。俺たちからしたらお前らなんていつまでも子どもさ」

「そういう意味じゃないって、父さん」

 星宮親子がほのぼの会話を繰り広げるのが、なんとなく微笑ましかった。

 好奇心、か。

 学じゃないけど少し物思いに耽る。

 僕も好奇心からナンバープレースを解き始め、紆余曲折あり、ナンバープレートに取り憑かれた変人たちの集い・ナンプレ部に入ることとなった。

 ナンプレ部の先輩方を、変人と称することは多いけれど、ナンバーコレクトにしたって、トラックナンバーにしたって、ご当地ナンバーにしたって、どれも、最初は小さな好奇心から始まったものではないか?

 変人だけれど、それは一概に悪いことではないのだ。

 なんだか悟りを拓いたような心地になり、僕は自衛隊車両のナンバーを撮って、夏休みの手土産にすることにした。

 まあ、たまにはこういうのもありだろう。


 後日、ナンプレ部一同で、これどこで撮ったんだ騒ぎが再発したのは言うまでもない。


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