第37話 幻の仮ナンバー
と、そんなことを学に語って聞かせたのは、あの日と同じく、高速道路を走る車の上にいたからだ。
時はお盆休み。高速道路を使ってはいるものの、そんなに遠出するわけではない。ただ、ちょっとした近道が高速道路というわけだ。
「あはは、大変だったねぇ」
「夏高は大丈夫なのか?」
「暇なくらい」
「うらめしや」
「純也!?」
「間違えた、羨ましい」
危ない危ない、お化けになるところだった。
「純也疲れてるんだね……」
なんだろう、学の憐れみの視線が痛い。
というわけで気を紛らすためにふと窓の外に目を向けると、なんか変わったものを見た。
普通車のナンバープレートに赤い斜め線が入っているのが追い越してった。ありゃなんだ?
「なぁ、学。斜め前の車なんだが」
「へ? どうかした? ……あ」
学も気づいたらしい。
「変わったナンバーだね、父さん知ってる?」
学が運転している自分の父に訊ねるが反応はいまいちだった。それを見るなり、学はケータイのカメラモードを起動し、ぱしゃる。
「ねぇ、純也、今写真送るから、ナンプレ部の人に聞いてみたら?」
「ああ、確かにあの人たちなら知ってるかも」
写メールを受け取り、写真をそのまま適当に部長辺りに送ってみる。
「まあ、すぐ返ってくるとh」
プルルルルル!
ぎゃあっ、何故か電話が! ……音無部長から?
「はい、桜坂です」
「おい、桜坂同志っ! あの写真は一体」
「あ、やっぱり、先輩もわかんなかったですか?」
「どこで撮った!?」
「すみません、会話成立させてください!」
ええっと、何故か部長がものすごく興奮気味なんですが、どうしたんでしょう。っていうかレスポンス早い。
「まず、あのナンバープレートが何かわかるなら教えてください」
「なっ、桜坂同志、知らないのか? 幻の仮ナンバーを!」
「ま、幻の仮ナンバー?」
思わず訊き返すと、学の父親が、ああ、と呟く。
「仮ナンバーなら聞いたことあるよ」
「仮ナンバーとは車検切れの車が走るために手続きを取って期間限定で走るためのものだ」
部長が追いかけて説明してくれる。
「どこで見かけたんだ!?」
「高速道路ですよ。でももう……」
「わかった。よし、探しに行くぞ!」
人の話を聞けーっ!!
後々知ったことだが、お盆休みなのに、ナンプレ部は集まっていたらしい。暇な集団だな。
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