第27話 教師駐車場に物申す
高文祭は大変だった。
だがまあ、なあなあにできたし、何も悪いということはない。
ただ、問題があった。
「何突然、止まってるんですか」
片付けのためにパネルを運んでいる最中、一緒に運んでいた翔太先輩が突然立ち止まり、自然と僕も立ち止まることになる。パネルが地味に重いのできついのだが。
そんな僕の感情はさておき、翔太先輩は若干ぷんすかしていた。
「……先生たちの車の並び、納得いかないんだよね」
と、お怒りの様子。
いや、先生たちの車の並びなんてどうでもいいじゃないですか、と思っていると、翔太先輩は駐車場に並ぶ車を指差す。そのせいで少し僕にかかる負荷が大きくなった。
「そこ、ひ、み、ふって並んでいるじゃありませんか!」
「そうですね?」
何に怒っているのかわからなかったが、まあ、言われてみればその通りだ。先生方の車、三台並んでいるもののナンバープレートのひらがなは向かって左から「ひみふ」と読める。これの何がいけないというのだろうか。
「もしかして、ふがつだったら"ひみつ"になるのにとか?」
「それはそうだけど、ひらがながつの車を持っている先生がいないのはしょうがないこと。ボクはそんなことを言っているんじゃありません」
「じゃあどういうことですか?」
「桜坂センパイ、まさかわからないんですか!?」
……悲鳴を上げられるほどの問題が?
少々疑わしく思いながら、もう一度ナンバープレートを見る。……なんだか最近ナンバープレートを見るのが自然な習慣になってきている気がする。毒されてはいけないと思うのだが、今はパネルを運ぶのが優先だ。問題を解決せねば……
ひみふ、ひみふ……
「み、とふ、を入れ替えると?」
絶句しました。
「ひふみ……」
「そう、それです! せっかく端っこから順番に並んでいるんですから、一二三って並んでいてほしいじゃないですか!」
なるほど。
「そんなことより、パネル運びましょう」
「そんなこととはなんですかセンパイ。ナンプレオタクとして許せなくないんですか?」
そもそも僕はナンプレオタクではない。少なくとも、ナンバープレートオタクではない。
そして教師駐車場の車の配置より、パネルがいい加減重いのでこちらの方が大事だ。
「職員室に抗議しに行きましょう、センパイ」
「それより、パネル」
「パネルなんてどうでもいいんです!!」
よくない。学校の備品だ。
結局、これを説得するのに手間取って、片付けが終わったのは一時間後だった。
まぁでも、
「そしたら毎朝登校してきたときに少し笑えるネタになるでしょ!」
という翔太先輩の意見も頷けなくはなかったが。
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